マジック

この春の諸々

春眠暁を覚えず…夜更かしした翌朝は、ついつい二度寝をしてしまいがちな
この頃です。

遅ればせながら先日のTBSジョブチューンのご視聴ありがとうございました。
マジシャン数珠繋ぎという演出上、画面に登場するまで名前が伏せられている
ために、SNS等で告知することができませんでした。(とは言うものの、私が
発信できるのは当お知らせのみですが…)

今回はバードアクトをタイトにまとめてスピーディーに演じてみました。
鳥の調教に関して…一部の方から、鳥にとって都合のいい照明もなく賑やかな
スタジオの環境でよく戻って来ますねというお褒めの言葉を頂戴しましたが、
実は、私も鳥達も劇場やホテル等での長期公演(数ヶ月〜数年)の経験がない
ことが強みだと感じています。
マジシャンにとってはラスベガスに代表されるように、特定の劇場で長期公演
することが理想なのでしょうが、今の日本では、客席が浴衣だらけの田舎温泉
のステージくらいしかありません。
いわゆるホームを持たず、常にアウェーで演じ続けたこと自体が調教となって、
あらゆる環境に対応し、精度の高いパフォーマンスが可能になったのかもしれ
ません。(もちろん100%は有り得ません)
うちのオオバタンなんて、スケッチブックからひょっこり顔を出したら、そこは
常に初めて見る景色なのですから…。

オンエア後、弟子入り希望の若者からのメールも頂戴しましたが、現在の私は
弟子をとっておりませんので、この場を使ってお知らせしておきます。
東京や大阪から若手のプロが相談や勉強しに来ることはよくありますが、
これもフェードアウトが近いロートルとしては、無責任なアドバイスはでき
ないなあと悩んでいるのも事実です。
特にコンプライアンスが厳しい現在、鳥に限らず動物や火を使うマジックに
手を出すことはオススメしません。
今後は特定のマジックバーのステージでしか演じられなくなるかもしれませ
んね。

しかし「趣味」ではなく「仕事」としてプロの立場で演じたいという心境の変遷
はどのようなものなのでしょうか。
もちろん稼ぎたいというのも第一義でしょうが、以前にも書いた次のような
ものではないでしょうか。(少なくとも私はこうでした)

「趣味」の世界には心を震わせ、精神をエクスパンドするような失望も歓喜も
興奮もない。真の達成感や充実感は、多大なコストとリスクと危機感を伴った
作業の中にあり、常に失意や絶望と隣り合わせに存在している。つまりそれは
我々の「仕事」の中にしかない。

さて、ここで話題を変えて…

コレクションしている機械式腕時計のデイト表示を、2月28日から3月1日へと
三日分飛ばすのがまあ面倒。
パーペチャルカレンダー機能があればそんな面倒もないのでしょうが、この
機能が付いているモデルは超絶高いので、仕方なく手動で…。

近年続々とフューチャーフォームを発表しているフランク・ミュラーですが、
スペインの陶磁器ブランドのリアドロとコラボして、なんとシャンデリアを
発売しました。(受注製作で、¥1,728,000)
自宅リビングの天井から下げた光景をずっと想像して、ちょっとだけ食指が
動きましたが、うちの鳥達が飛翔して激突する場面を想像したら、あっさりと
諦めがつきましたとさ…。

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スペシャリスト? ジェネラリスト?

マジシャンとしてどうなりたいのか、どうありたいのか、どうあるべきなのか、
どう生きるのか、そしてスペシャリストを目指すのか、ジェネラリストとして
安寧を得るのか…真面目にマジシャン人生と向き合う人であれば、必ず立ち
はだかる壁ではないでしょうか。

マジック業界での評価はともかく、世間に認知されて、テレビにも出まくって
稼ぎたい…逆に、収入じゃない、とにかくコンテストで受賞して同業者に一目
置かれたい…この辺りの人生観は人それぞれなので、そこに断定的な答えは
ないのでしょうね。

でもね、実は両方とも欲しいのですよ…マジック業界には、本当は稼ぎたい
のに「お金は追わない、食えるだけあればいい、夢を見せるんだ!」なんて聖人
君子みたいな人を散見しますが、平然とこれが言える人は、市場に受け入れ
られて有名になることからも稼ぐというレースからもドロップアウトしている
ことを、実は自覚しているのでは…。
「マジシャンの夢=不思議を見せて感動させる、笑顔にする、皆様に感謝感謝
です」というケチのつけようがない安全地帯に逃避しているような気がするの
ですよ。
まあ、本心を糊塗しながら、結構お金に貪欲な人を散見してきましたけどね。

マジシャンよりも遥かに夢を見せてくれる(稼ぐという意味でね)プロ野球
選手達は、オフシーズンには、プロに憧れている無垢な野球少年の視線など
一切気にせずに、えげつないほど必死で年俸闘争しているではありませんか。
さらにどれだけ年俸がアップダウンしたのかを堂々と記者会見で発表したり、
新聞に書き立てられるのもお構いなしで「稼ぎ」という部分で闘うほど正直
なのです。
それも草野球ではなく野球のスペシャリストとしての矜持があればこそ。

私世代の感覚で回顧すれば、マジック界にはキラ星のごとくスペシャリストが
存在しています。
例えば…超魔術、イリュージョン、コメディー、マニピュレーション、鳩出し等
すぐに頭の中に顔が出て来るこれらの分野を代表する大御所マジシャン達の
歴史を、今の若いマジシャン達がどれほど理解しているのかは知りませんが、
この方々、その得意分野で世に知られるようになったとしても、実はベースと
なるマジックをほとんど網羅していて、現在はそれを演じていなくても、絶妙
なバランス感覚があるからこそ認められているはずなのです。
もっと分かりやすく例えれば、学校の全科目を悠々と平均点を上回った状態で
さらに得意科目を持っているということ…つまり、ジェネラリストとしての
分厚い基盤の上に、ある分野のスペシャリストとして君臨しているのです。

医師の世界もよく似ていて、大学医学部の卒業試験や国家試験において全科目
をクリアした後、医師ライセンス取得と同時に、プロフェッショナルの立場で
最も得意な科のスペシャリストとして標榜することがほとんどです。
時が経過し、専門科以外の知識が薄れていくことを鑑みれば、知識という点に
おいては、卒業直後がジェネラリストとしてのピークなのかもしれません。

コンテスト出場経験があるマジシャンならば、食べていくための営業出演の
現場では、コンテストアクトがなかなか通用しづらいというのは十分に理解
そして体感されていることでしょう。

私自身、若かりし頃(1980年代)に、一応は「鳩出し」のスペシャリストとして
(自称ですが)、国内外のコンテストで優勝できたものの、その芸一本で食える
わけがないことを厭というほど体感したが故に、稼ぐために究極のジェネラリ
ストを目指して遮二無二レパートリーを増やし続け、レパートリーの全てを
ギャラを頂戴するのに失礼のないレベルにまで昇華させて、その上でバード
マジックのスペシャリストという居場所をようやく見つけたのです。
(最近は、ほぼほぼコメディーマジシャンになっておりますが…)

海外のコンテスト出場のために、渡航費用等をクラウドファンディング的手法
で集めようとする動きもあるやと耳にしたこともありますが、所詮は自分が
好きで始めたマジックであるのなら、自分のケツは自分で拭いて完結するくら
いの矜持があって然るべしだと思うのですが…その方が、結果はどうであれ、
間違いなく達成感はあると思うのですよ。

また、若いマジシャンがコンテスト受賞だけを目的に、ある分野だけを研究し
練習を積むことを否定はしませんが、受賞後にプロフェッショナルとして稼ぐ
ことを目標とするのであれば、老婆心ながらの考えを…「チャンピオンになった
のに食えないマジック界っておかしい」という愚痴を耳にしたことがあります
が、実は業界のせいではなく、チャンピオンになったのに食えないその人の
戦略と戦術がおかしいんです。

「宮大工を目指したら、もはや普通の家は建てられない」ことくらい自覚しま
しょうよ。

では、あえて普通にローカルマジシャンとして食べていくのなら、ボーリング球
出して、ペットボトルにカードを入れて、テーブルを浮かすという軽佻浮薄な
ジェネラリストでもなんとか生きていけるのかもしれません。
でも少しでも脚光を浴びたければ、その上で何かのスペシャリストを目指す
しかないのです。

記憶に残る幕の内弁当なんてありませんから…。

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Mr.マリック&Rintaro TV出演情報

福岡の情報番組「めんたいワイド」において、過去4回Rintaroのマジック特集
が組まれましたが、5回目の今回、なんとMr.マリック氏が登場します。
初の生放送での共演、はたしてどうなることやら…
放送エリアの方はぜひご覧下さい。

12月26日(水) FBS福岡放送「めんたいワイド」 15:48〜

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お知らせ色々

・ ふじいあきら レクチャー in 福岡

  日時 : 2018年11月10日 16:30開場 17:00開始
  場所 : マジックファニー
  詳細は…コチラ

・ 西日本奇術大会 ゲスト出演 : Dr.ZUMA & ふじいあきら

  日時 : 2018年11月11日 12:15開場 13:00開演
  場所 : 福岡市立南区市民センターホール (入場無料)
  主催 : 西日本奇術クラブ

・ マジックバーオープン

  現在、福岡市はマジックバーが15店以上も密集する超激戦区…
  まさに群雄割拠、玉石混淆のカオス状態。
  そしてこの冬、西中洲に新たなマジックバーがオープンします。
  手品家博多店…オーナーマジシャンは、飛ぶ鳥落とす勢いの
  若手バードマジシャン、チェリー。(ホントに鳥落としちゃダメよ。
  あ、インコも逃しちゃダメよ)

  手品家博多店 : 福岡市中央区西中洲5-17  AER西中洲6F
               TEL 092-753-7986
  プレオープン:11月15日 グランドオープン:12月3日

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続 ・ 消えゆくもの

前回からの続きです…マジック用ワレットといえば、ヒンバー、ル・ポール、
マリカ、ベンディックスボムシェル…数々の名作がありますが、私は無類の
ワレットコレクターで、若い頃から欧米のコンベンションに行く度に世界中の
マジックワレットを蒐集していました。
現在では処分したり後輩に譲ったりして少なくはなりましたが、それでも引き
出しいっぱいワレットだらけです。
当時はおそらく日本屈指の数を保有していたと思います。(プライベートでも
コレクターなので、TPOに合わせて様々なワレットを使い分けています)

昔のヨーロッパ(EU統合以前)のコンベンションのディーラーブースでは、各国
の紙幣のサイズが違っていたために、様々なサイズのワレットが販売されて
いました。
どこの国の製品だったかは忘れましたが、スーツの内ポケットに入らないほど
デカいル・ポールワレットも持っていました。
ユーロ紙幣が出回り始めてからは、ワレットのサイズにも統一感が出てきた
記憶があります。
今でも気に入って使っているイタリア製のワレット(torn & restore 専用)は、
古くなったし日本人から見たら不自然なサイズなので、知り合いの皮革職人
にオリジナルデザインで作り直してもらう予定です。

さて、現物の通貨のマジックが消えゆくのかどうかはともかく、すでに時代の
趨勢やコンプライアンスの問題で、シガレットマジック、ファイヤーマジック、
動物を使ったマジックは、かつてほどは演じられなくなっています。
その昔(ヘビースモーカーだった頃)、私も好んで演じていた名作「スモーク
グラス」も嫌煙社会の現在ではめっきり見かけなくなったし、数十年後には、
コインにタバコが貫通する現象は見れないかもしれませんよ…なぜならどちら
も一般客に馴染のない品物になっている可能性もあるし、ひょっとしてこの世
に存在していない可能性もゼロではありませんから。

動物に関しては(ちょっと前の記事ですが)、世界41か国でサーカスでの動物
出演が禁止となっています…記事はコチラ
また本年9月9日、新江ノ島水族館で開催されたセーリングワールドカップの
アトラクションでのイルカショーが、海外選手やメディアから厳しい批判を
浴びたニュースも記憶に新しいところです…記事はコチラ
こうなると伝統芸能である猿回しもアウトになるのでは…。

私が最も好んで演じてきた…紙幣のマジック、ワレットマジック、ファイヤー
マジック、動物マジックは近い将来に本当に消えゆくのでしょうか。

近年のコンプライアンスにがんじがらめになっている状況を鑑みれば、まだ
緩やかな時代から、大好きな分野のマジックを演じて満足できる報酬を得て
いる自分は、ホント幸せなのだろうと懐古しています。
レアであるのなら、あえての戦略的昭和回帰という手もあるのでしょうが、
いずれ今以上に演れない時が来る…その時にどうギアチェンジしていくのか。
これから世に出ようとする若手マジシャンには、これまで以上に社会の空気
を読む能力が求められていくことでしょう。

まあ私も一人のロートル&ローカルマジシャン…いずれ「消えゆく者」なの
ですから、大好きな「消えゆくもの」と一緒に、少しでも余韻を残しながら
フェードアウトできれば本望だし、マジシャン冥利に尽きますね。

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消えゆくもの

先日、某ブランドショップの財布売り場での話ですが…世界の一流ブランド
が、これだけの種類の財布を製作して輸出しているのは日本だけになりつつ
あるとか。
なぜなのか…それは世界でも日本人が断トツの現金主義だから。(そういえば
どのブランドの財布も日本の紙幣にピッタリサイズで作られていますからね)

北欧を中心に世界で進むキャッシュレス…なんとデンマークでは2016年末
をもって、中央銀行がコインと紙幣を作るのをやめたそうです。
スウェーデンでは現金を出すと、一発で観光客だとバレるのだとか…。

韓国を筆頭にアジアにもその波は及んでおり、電子マネーが急速に普及して
いる中国人にとっては、日本の観光地で電子マネーを使える店が少ないのが
不満になっているようです。
裏を返せば、ニセ札が横行して自国通貨を信用していない中国人が電子マネー
に流れるのは自明の理であるし、自国通貨を信頼する日本人はタンス預金に
勤しむ…実に対照的ですね。
それと現金には匿名性がある一方、電子決済だと誰かにトレースされてしまう
リスクがあるわけで、タンス預金が好きな日本人の気質としては、その辺り
にも電子マネーに対する抵抗感があるのでしょうね。
いずれにせよ、現金を必要としないグローバル社会がそこまで来ているのは
論を俟ちません。
現金主義の日本も、この流れには抗えないでしょう。

そこで私が危惧しているのが、近未来、キャッシュレスの世の中になったら、
コインや紙幣のマジック、ワレットを使ったマジック等が消えゆくのではない
かということ。
もしもこの世から現物の通貨がなくなれば、紙幣のtorn&restoreや紙幣プロ
ダクション、マイザーズドリーム、さらには数々の名作コインマジックやワレッ
トのマジックが消えゆくわけで、マジシャンにとっては相当な痛手でしょうが、
これらの現象が見れなくなる観客にとっても不幸なこと。
まあ心配性な私の杞憂で終わるでしょうが…。

そういえば1996年でしたか、オーストラリアのメルボルンのコンベンション
に参加した際、現地の紙幣がプラスチック製であることを知って、これは
torn&restoreが演じづらいだろうなと思った記憶があります。(破れないので
ハサミで切るしかありませんからね)
今でもプラスチック製なのかなあ。

次回に続く…。

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複業のススメ 3

多様化する働き方を反映するように、一部の企業や地方自治体の公務員にも
副業や兼業を認める時代になった一方で、「芸人たるもの安定を求めるべき
ではない!」とか「他に収入源があるならプロではない!」等の考え方に拘泥
して論難を仕掛ける「自称プロ」がいるのは承知していますが…そもそも資格
が必須の職業でもない上に、このご時世に浪花節じゃあるまいし、「末路哀れ
は覚悟の前」とばかりに芸人の美学に置き換えて強がったところで、価値観が
違う相手を鎧袖一触することなど不可能でしょう。
自身も老後の不安に苛まれながら、余白が増えていくスケジュール表を見れば
いくら斜に構えていても気が滅入るでしょうに。

まあ、この類のプロ論に頑なに拘泥する人は、他に何かをやるスキルも勇気
も無く、今さら人生のやり直しも棚卸しもできないために、痩せ我慢をして
でも自分の生き方こそが正解だったのだと己自身にも外にも叫び続けないと
精神の安定を得られないのです。
「諦めるのはまだ早い!」というよりも、もはや「諦めるにはもう遅い」段階の
人もいますし…。(ご自愛下さい)

極端な例ですが、タレントとしてのビートたけし、映画監督としての北野武
という大きな記号を持つ場合には、「どちらが本業なんですか?」と野暮な
問いかけをする人など皆無でしょうし、さらに土曜日の夜のTBS「ニュース
キャスター」ではフリージャーナリストという肩書きで出演する一方、画家
や小説家としても活躍しています。
このようなマルチな働き方に対して、「他に収入源があるなら、彼はお笑い
芸人としてはプロではない!」と喝破する論拠があるわけではないでしょう。
また、多くの芸能人やスポーツ選手が飲食店やジム経営などをしていますが、
それによってアマチュアのレッテルを貼られることなど、まずあり得ません。

昨年の番組でしたか、アスリートの引退後について特集していました。
大リーグでは、現役時代に大金を手にしたために引退後も贅沢な暮らしが
やめられずに破産する選手がいる一方、引退後を見据えて現役時代から勉強
をして、弁護士や会計士の資格を取得している選手も多いのだとか…翻って
日本の野球界の場合、幼少期から野球のみに傾注して社会性を養えなかった
選手が多く、引退後は潰しも効かずに再就職に苦労しているようです。
(平均引退年齢は、なんと29歳ですよ)

マジシャンの場合は野球選手と違って、戦力外通告で引退に追いやられる
ことはありませんが、若手イケメンであることが唯一のウリだったのが老い
たり、体力勝負のイリュージョニストが衰えたり、芸そのものが飽きられ
たり、ブランディング構築に失敗して差別化ができなかった結果、台頭する
ギャラの安い若手に駆逐されるなりして市場からの需要がなくなれば、否応
なく引退せざる得ない時がやってきます。
また身近でも散見してきましたが、景気や時代の趨勢による主戦場(温泉場
のステージやキャバレー)の閉鎖などの不可抗力の外部要因もあることで
しょう。

せっかく日本という職業選択の自由が保証され、世界に冠たる資本主義の
国家に暮らしているのなら、たった一度きりの人生…自身のポテンシャル
(資格、語学力、文才、歌やダンスや絵の素養、ITの知識等)を駆使して、
多種多様な働き方をすることによって、経済のダイナミズムを体感し、その
恩恵を享受しないと勿体無いと思います。
そして世の中を複層的な視点から見れるようになれば、マジシャンとしても
その演技に必ず良い影響が波及するはずです。

マジシャンであれば誰しも、大好きなマジックを本業として食べていきたい
と思ってプロになるのでしょうが、あてにしていた仮がバラされる度に凹ん
だりしないように、また仕事を得るために嫌な人間に頭を下げたり、いい歳
になっても深夜に酒席でこき使われたり、ネットで種明かしをして小銭を稼
ぐような卑屈な生き方をしなくて済むように、あるいは終電を逃しても余裕
でタクシーで帰れる程度の暮らしをするために、そして何よりも愛するマジ
ックを安定してやり続けられるように、あえて「副業」ではなく「複業」として
考察してみました。
今回のエントリー、将来に何の不安もない余裕綽々のマジシャン方には余計
なお世話だったかもしれませんが…。

最終的には、「えっ、俺の職業? … 俺!」が理想かなあ。

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複業のススメ 2

アルバイトが厳格に禁止されている企業の社員や公務員は別にして、複数の
収入源を持つ人間が、「仕事は複数やっています」と真面目に説明している
のにもかかわらず、しつこいほどに「で、どれが本業なんですか?」などと、
とにかく一つだけの職業枠にはめ込もうとする傾向は、今でも(特に日本では)
強いと思います。
このような事象は、個人を職業とセットで認識・記憶したり、評価・値踏み
する際の記号として便利なのでしょう。

一般的には「本業と副業」という、あくまでも「主と従」の枠に当てはめがち
なのは、複数の仕事をしている場合、最も収入が多い仕事を本業、その他を
副業やアルバイトとして世間は理解する傾向があるからです。
しかし、本業と副業の区別は収入の比率で決めるものではなく、まして世間
の判断に委ねるものでもなく、実は本人の認識と矜恃の問題なのです。
アルバイトのみで食いつないでいる売れないお笑い芸人でも、職業を問われ
れば躊躇なく「お笑い芸人やってます」と答えるわけですからね。

私事を吐露すれば、プロ転向のために大学病院を退職した20代末から体力的
に自信があった40代半ばまでは、銀座でのテーブルホッピングはもちろん、
複数の大型鳥やイリュージョンを携えて、全国規模でハードな仕事をこなす
ことができましたが、齢50を境に、体力の衰えや仕事の漸減のリスク対策と
老後に備えるために、マジック以外にも資格を活かした医業、法人の理事や
社長業、さらには投資関連等、現在は複数の収入源を確保しています。
これはマジシャンとしてプロ活動をスタートする前から描いていたビジネス
プランで、幸いなことに人生のタイムスケジュール通りに推移しているわけ
ですが、イメージとしては、加齢とともにブルーカラーからホワイトカラー
へと緩やかに移行している感じでしょうか。

そうした生き方を実践してみた感想ですが、まずマジックの仕事に関しては
スキミング戦略を基に、現在の自分に無理のない範囲でやりがいを感じる
オファーだけを受ければ済むようになったし、日々の生活がマンネリ化せず
にメリハリが出て、各々の仕事に対する集中力は確実に増しますね。
(これが前回書いた、時間意識の高まりによる労働生産性の向上です)
それでも将来における漠然とした不安が払拭されることはありませんよ。
(根っからの心配性ですからね)
マジック以外の収入源を確保している後輩も数人知っていますが、色んな
意味で相対的な余裕を感じるのもまた事実。

以前、あるドキュメント番組で紹介されているのを観たのですが、春〜夏に
かけては農業に従事し、雪が積もって農業ができない冬の間は、特技を活か
したスキーのインストラクターとしてペンションで働く男性の、その充実感
に溢れた人生を謳歌している姿に感動した記憶があります。
この男性は、どちらの仕事にも本業としての矜恃があるし、何よりも素敵な
二毛作だと思いましたね。

数種類の名刺を使い分けることも常識となった現代社会、自らの強い意志で
取り組み、矜恃ある仕事として収入を得ているものは全て本業であると認識
して、堂々と複業宣言すればいいだけなのですよ。

マジシャンも普段の営業出演以外に、マジックバーやショップを経営したり、
講習会を主催したり、複数のマジックバーでレギュラー出演したり、他者の
裏方やコンサルタントをすることでリスク分散しているように、もっと俯瞰
で見れば、マジック関連以外の収入源を確保することも、混沌としたこの
世の中を生き抜くためには必然になるのかもしれませんが、切羽詰ってから
動くのではなく、余裕のあるうちに準備を始めるべきであることは論を俟ち
ません。

次回「複業のススメ 3」で完結です。

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複業のススメ 1

働き方が多様化する現代社会、アメリカでは労働力人口の30%超の4千万人
以上が本業と別の収入源を持っているとか。

本来、副業・兼業は「特殊な技能」を売って高い報酬を得るものです。

例えばイタリアの男性には仕事を二つ持っている人が多いのですが、二つ目
の仕事は「ムーンライト」、つまり夕食後に月の光を浴びながら二つ目の職場
に出勤して深夜まで働く場合がほとんど。
ただし、彼等の大半は昼と夜で別の仕事をするのではなく、ほぼ同じ仕事
(例えばファッションブランド関連等)をしています。
つまり、本業のスキルがそのまま副業に活かされているという働き方なんで
すね。(マジシャンならば、営業出演しながらマジックショップやマジック教室
で働いているような感じでしょうか)

だからと言って特殊技能を持たない日本の普通のサラリーマンが、いきなり
副業・兼業を始めたところで、ビルのガードマンや清掃員、コンビニの店員、
高速道路や駐車場の料金徴収員等の「時給いくら」のアルバイトしかできない
でしょうし、近い将来、その役目もAIに取って代わられるでしょうね。

近年の日本においては、ロート製薬が週末や終業後に他社やNPOで働くこと
を社員に認めると発表して話題になりましたし、2012年に社外での労働を
解禁したソフトウェア会社・サイボウズの社長は「本業・副業という考え方自体
が時代遅れだ」と述べています。
そして本年4月にはユニチャームが、また新生銀行が大手銀行で初めて就業
時間外に異業種の仕事に就くことを解禁しました。(英語の得意な人が翻訳
の仕事をすることなどを想定し、競合の金融機関や情報漏洩のリスクが生じ
る仕事は除く)
企業は事業の短命化によって、従業員に生涯安定雇用を約束しづらくなって
いるという背景から、一方の個人も終身雇用にすがらずに「雇われる力」を
高めようとしているのでしょう。

そして最近「複業(パラレルワーク)」という働き方が広がりつつあります。
(私は随分以前からそうあるべきだと思っていました)
つまり、単に本業の収入を補うために時間を切り売りする「副業」とは違う
「複数の本業を持つ」という新しい働き方です。

あくまでも私見ですが、複業は個人にも企業にも果実をもたらすと思います。
例えば、新しい人脈の獲得、イノベーションの創出、リーダーシップの向上、
時間意識の高まりによる労働生産性の向上(私はこれが一番大きな果実だと
思います)…それに企業イメージとして、複業社員の存在は他の優秀な人材
を引き寄せる可能性もありますからね。
何より複数の仕事先で揉まれ、複層的な視点を持てば、すべての仕事に共通
する部分で、間違いなく良い影響が出るはずですから。

マジシャンにも当てはまることですが、「個人の法人化」が重要だということ
ですね。
複業を通じて法人化した個人が、本業以外の場所でも活躍することが当たり
に前になれば、安定した人生設計に寄与することはもちろん、多様化する社会
を支える一つの装置にもなり得るのでは…。

次回「複業のススメ 2」では、私事を含めてもっと具体的に考察します。

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イベントのご案内

「ふじいあきら&庄司敬仁&小梅 ライヴショー」

熊本:2018年3月30&31日
   お問い合わせは…PARANOIA MAGIC (TEL 096-352-5415)

福岡:2018年4月1日
   お問い合わせは…Magic&Bar tonari (TEL 070-2410-0696)
   フライヤーは…コチラ

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