ターゲットを定める 2
前回からの続きです。
ある飲食店経営者の著書の中に次のような一節がありました…
どんな店づくりをしたいのか、どんなお客様を集めたいのか、何を特徴にした
いのか…まず何をやりたいのかという思いをメニューに込めることが大事です。
そのメニューをもとに必要な厨房設備や食器のテイスト、備品数など全てが決
まっていきます。もしそれがなければ、方向が定まらない中途半端な店づくり
になってしまうということです。いい店には、「この店のコレを食べたい」「この
季節になったらあの店のアレだ!」というメニューが必ずあります。
どうでしょう…マジシャンに置き換えても全く同じことが言えるのではないで
しょうか。
どんなマジシャンになりたいのか、どんな演目を十八番にしてどんな観客を
ターゲットにしたいのか。
それを基に己の芸を磨くことはもちろん、衣裳や道具はどの程度のクオリティ
や規模のものを揃えなければならないのか…それらを真剣に考えることによって
自身のイメージするマジシャン像というものが定まっていくのだと思います。
その結果として、アレが観たいからあのマジシャンを呼ぼう、この演目はみんな
やってるけどあのマジシャンでなきゃダメなんだ、今度のパーティーにはあの
マジシャンこそ相応しい…とブランディング構築がなされていくのでしょう。
ところで、名店と呼ばれる一流の鮨屋には自然と富裕層が集まるようになり、
その客層を満足させるために「おまかせ」と呼ばれるコースが生まれたと云わ
れています。
お客様に「何が食べたいですか?」と聞いた後に指定されたものを出すのではなく、
とにかくその時期に一番美味いもの、大将がいいと判断したものを出すわけです。
名店は接待で使われることが多いことから、自分で食べたいものを選ぶよりも
大将を信頼して任せるというわけですね。(富裕層はおまかせの価格を聞くような
野暮なことはしません)
マジシャンも「おまかせ」されるようになればしめたもので、オファーがあった際
に、私はパーティーの主旨や客層をリサーチした上で、全て任せて頂いて最も相
応しい演目を構成して臨むように心がけていますし、近年は報酬に関しても値切
られた記憶はありません。
その代わり、おまかせのマジックはそのマジシャンのベストなのですから、ウケ
なかったとしても、その評価は甘んじて受け入れなければなりません。
昔は仕事欲しさから迎合して、クライアントの要望にできるだけ応えていました
が、その結果はどうなったかというと、動物NGの会場なのに「鳥を飛ばしてほしい」
とか、直前になって「うちの社長をマジックで出現させてほしい」「誕生日ケーキを
出してほしい」などとクライアントのワガママや無茶振りを増長させがちでした。
それらを乗り越えたところで、付け焼き刃なマジックなどで高い評価を得ることは
ありません。
またそのようなクライアントに限って値切って来る傾向があります。
最悪なのは「素人の思いつき」を要求されることです。
ある立食パーティーで「乾杯と同時にショーをスタートしてほしい」というタイム
スケジュールを提案されたことがありました…立食パーティーでは、乾杯が終わ
れば空腹な客が料理に群がってショーなんて見るわけがないことすら素人の幹事
は考えが及ばないのです。
この時は幹事を強く説得して乾杯後30分経ってからのスタートに変更して事なき
を得ましたが…まあ、過去には色々とありました。
ところで「すし」の漢字表記には「寿司」と「鮨」の二種類が使用されるのが一般的
です。
「寿司」の方は、例えば冠婚葬祭や祝宴のように、他の料理も色々出されるような場で
食べる「すし」のこと。
一方で「鮨」は、鮨だけの専門店で食べられる「すし」です。
マジシャンとしてスキミング戦略をベースとする私は、迷わず「鮨」を標榜する道を
選択しました…それによって自ずとターゲット(理想とする客層と現場)が定まった
のは言わずもがなでした。
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