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2026年1月

ターゲットを定める 2

前回からの続きです。

ある飲食店経営者の著書の中に次のような一節がありました…

どんな店づくりをしたいのか、どんなお客様を集めたいのか、何を特徴にした
いのか…まず何をやりたいのかという思いをメニューに込めることが大事です。
そのメニューをもとに必要な厨房設備や食器のテイスト、備品数など全てが決
まっていきます。もしそれがなければ、方向が定まらない中途半端な店づくり
になってしまうということです。いい店には、「この店のコレを食べたい」「この
季節になったらあの店のアレだ!」というメニューが必ずあります。


どうでしょう…マジシャンに置き換えても全く同じことが言えるのではないで
しょうか。
どんなマジシャンになりたいのか、どんな演目を十八番にしてどんな観客を
ターゲットにしたいのか。
それを基に己の芸を磨くことはもちろん、衣裳や道具はどの程度のクオリティ
や規模のものを揃えなければならないのか…それらを真剣に考えることによって
自身のイメージするマジシャン像というものが定まっていくのだと思います。
その結果として、アレが観たいからあのマジシャンを呼ぼう、この演目はみんな
やってるけどあのマジシャンでなきゃダメなんだ、今度のパーティーにはあの
マジシャンこそ相応しい…とブランディング構築がなされていくのでしょう。

ところで、名店と呼ばれる一流の鮨屋には自然と富裕層が集まるようになり、
その客層を満足させるために「おまかせ」と呼ばれるコースが生まれたと云わ
れています。
お客様に「何が食べたいですか?」と聞いた後に指定されたものを出すのではなく、
とにかくその時期に一番美味いもの、大将がいいと判断したものを出すわけです。
名店は接待で使われることが多いことから、自分で食べたいものを選ぶよりも
大将を信頼して任せるというわけですね。(富裕層はおまかせの価格を聞くような
野暮なことはしません)

マジシャンも「おまかせ」されるようになればしめたもので、オファーがあった際
に、私はパーティーの主旨や客層をリサーチした上で、全て任せて頂いて最も相
応しい演目を構成して臨むように心がけていますし、近年は報酬に関しても値切
られた記憶はありません。
その代わり、おまかせのマジックはそのマジシャンのベストなのですから、ウケ
なかったとしても、その評価は甘んじて受け入れなければなりません。

昔は仕事欲しさから迎合して、クライアントの要望にできるだけ応えていました
が、その結果はどうなったかというと、動物NGの会場なのに「鳥を飛ばしてほしい」
とか、直前になって「うちの社長をマジックで出現させてほしい」「誕生日ケーキを
出してほしい」などとクライアントのワガママや無茶振りを増長させがちでした。
それらを乗り越えたところで、付け焼き刃なマジックなどで高い評価を得ることは
ありません。
またそのようなクライアントに限って値切って来る傾向があります。

最悪なのは「素人の思いつき」を要求されることです。
ある立食パーティーで「乾杯と同時にショーをスタートしてほしい」というタイム
スケジュールを提案されたことがありました…立食パーティーでは、乾杯が終わ
れば空腹な客が料理に群がってショーなんて見るわけがないことすら素人の幹事
は考えが及ばないのです。
この時は幹事を強く説得して乾杯後30分経ってからのスタートに変更して事なき
を得ましたが…まあ、過去には色々とありました。

ところで「すし」の漢字表記には「寿司」と「鮨」の二種類が使用されるのが一般的
です。
「寿司」の方は、例えば冠婚葬祭や祝宴のように、他の料理も色々出されるような場で
食べる「すし」のこと。
一方で「鮨」は、鮨だけの専門店で食べられる「すし」です。

マジシャンとしてスキミング戦略をベースとする私は、迷わず「鮨」を標榜する道を
選択しました…それによって自ずとターゲット(理想とする客層と現場)が定まった
のは言わずもがなでした。

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ターゲットを定める 1

2024年11月16日に「相応しい現場を選ぶ」というタイトルのコラムを書きました…
あるマジックがウケるためには、それに相応しい現場で演じることが肝要である
という内容でした。
このコラムはアクセス数も多く、現役でプロ活動をしているマジシャンからも
一定の賛同を得たようです。
もちろん例外もあります…パフォーマーがメジャーであれば、現場がホテルで
あろうが、ホールであろうが、ショッピングモールであろうが、その知名度と
求心力でどんな演目でも観客の集中力や理解力を増幅させてウケることは可能
だということです。(言うなれば力業もできるということですね)

今回は「ターゲットを定める」として自身が最も見せたい演目で評価を得たければ、
それに相応しいターゲットを選ぶことが重要だとする考察です。
一定の経験値があるマジシャンならば、「この客にはこの演目」「今夜のパーティーなら
この演出」という具合に本能的にそれを理解し実行しているはずです。

まず理解しておかなければならないのは、先に述べたように、メジャーならその
知名度で集客できるので、最大公約数的な演目でどんな場所や客層でも通用する
のですが、そうでなければ、ある程度は自分がどんなタイプでどんなターゲット
に相応しいマジシャンであるかを自覚する必要があるのです。

夜職で酒席にどっぷりと浸かったマジシャンの中には、素面の客に酔客と同様の
馴れ馴れしい接客をしたり、場違いな下ネタでドン引きさせたり、嫌がる女性客の
心情を度外視して薄汚れたスポンジボールを握らせたり、昭和の駄洒落を連発
して客が苦笑いするしかない場面等を多く目撃して来ました。(もちろん私も数多の
失敗をやらかしています)
現在ではコンプライアンスでアウトなものも多いのですが、それぞれの演目が
ダメなわけではなく(不潔は論外です)、これらの事象はその武器がターゲットに
刺さらなかった…と言うよりも、そもそも定めたターゲットが間違っていたと
いうことです。

またテレビ番組においては、どんなに寒いマジシャンでもそのターゲットである
ゲストタレントが気を遣って大げさに盛り上げてくれる傾向があることから(それが
タレントの仕事ですからね)、テレビ慣れしていないマジシャンは本気でウケている
と勘違いすることもあるでしょう。

まずは生活していくことが最優先で、どんな客層でもどんな現場でも引き受け
ざる得ないという現実もあるとは思いますが、一度立ち止まって、自分という
マジシャンはどんな主戦場に相応しいマジシャンなのか、どんな客層や現場を
ターゲットとするべきなのかを見つめ直す時間は必要だと思います。
自己分析の後、所謂正統派スタイルのマジシャンには向いていないことを自覚
したのか、潔く燕尾服を脱いで、園児をターゲットにしたパフォーマーに鞍替え
して成功した人も知っています。

自分にとって生きやすい生態系…魚に例えるなら、せめて自分が海水魚なのか
淡水魚なのかくらいは自己診断しておいた方がよろしいかと…

次回2へ続く…

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雑感 その47

・ 今年のフランクミュラー卓上カレンダー…存在感があるし実用的
・ フランク×ダナーの新色ブーツを購入…色々とセットアップが楽しみ
・ 早起きして出かけると感じる…早朝から動いている人は想像以上に多い
・ 歯科医院はコンビニよりも多いが、美容室は信号の数よりも多いらしい
・ 今年は本格的に断捨離をやろうと決意…果てしない作業になりそう
・ モノの断捨離、ヒトの断捨離…いずれにしても先見の明のセンスが必要
・ 若いうちに一通り付き合ってみれば、自然と断捨離の慧眼が養われる
・ オーバーツーリズムもやや落ち着いたせいかホテルの予約がしやすい
・ 問題外国人がいるから外国人問題が派生するのだろう
・ エンタメは局地的人気は出ても国民的スターは生まれない時代だなあ
・ 久しぶりにプロレスを観たが、やはり虚実ない交ぜの歌舞伎だなあ
・ 高尚であるより動機が不純である方が絶対に結果を出しやすいと思う
・ とんでもない逆境を経験していると、大抵のことには動じなくなる
・ 逆境を経験している人の話は、圧倒的な臨場感と説得力を伴う
・ 様々な経験の積み重ねが、脳内に優れた「検索エンジン」を構築する
・ 安直に頼み事をする人の運気は確実に下がっていく
・ 自ら運気を上げることができる成功者は面倒見が良く見返りを求めない
・ 金の正しい使い方は、自分が楽しむか、人に喜ばれるかの二択のみだろ
・ 早く金持ちになりたければ早く金持ちになろうとしないことらしい
・ 金で買えないものの価値は金で買える大抵のものを手にしてこそ分かる
・ 成功とはわらしべ長者のようなもの…二乗作用で倍々ゲームとなる 
・ スピリチュアル…人はなぜ見えないものを信じたがるのだろう
・ スピリチュアル…したり顔で語るマジシャン自身が一番信じていない
・ たかが手品にスピリチュアルを加えるのは、タチの悪いトッピング
・ 大して親しくもない人物をすぐに紹介しようとする者は信用できない
・ 知らないのに知っていると思い込むのは、知らないことより怖い
・ マジックの話題しかできない人は、金魚掬いの紙より薄っぺらい
・ あそこでミスったからと弁解するマジシャンはノーミスでもウケない
・ 世界一のマジシャンですら下ネタスキャンダルに塗れるこの業界て…
・ 完璧な準備をしても、本番では想定外のトラブルが起こるのがマジック

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2026年 始動

2026年 明けましておめでとうございます。

昨年は大晦日まで仕事をして、正月はJALのマイレージポイント交換で取り寄せ
たおせち料理を食べながら、箱根駅伝を楽しんでおりました。
その箱根駅伝…大会新記録が出るなど、今年も青山学院の圧勝でしたね。
(並走する美しいブルーカラーのセンチュリーSUVにも目を奪われておりました)
学生時代という人間形成を左右する時期に、ここまで全身全霊を傾ける事がある
のは素晴らしいと思います。
実力を出せた人も出せなかった人も、卒業後に競技を続ける続けないに関わらず、
若い時期に命懸けで頑張った経験は、今後の人生の糧になることは間違いないで
しょう。

私自身も学生時代に凄まじいエネルギーでマジックに傾注して(もちろん留年しな
いように勉学にも励みましたが)、その結果で現在の生活が成り立っていることを
回想しながら、自身の学生時代と重ね合わせることで、ある意味感慨深く二日間
のレースを楽しみました。

もうこの歳になれば、改めて優等生的な新年の目標を掲げたり、大言壮語な宣言
をする気はさらさら無いのですが(密かな企みは幾つかあります)、昨年の10月に
「ゴールデンタイムとピーク」というコラムに書いたように、「若さ」というゴール
デンタイムはとっくに過ぎたので、人生後半のピークを謳歌しながら充実した
日々にしていこうと思ってます。

自身を飛行機に例えれば、「やりがい」を燃料に、ピークを維持しながらの安定飛行
ができるだけ長く続けば最高かなと。

機体の整備も完了したので、2026年そろそろ離陸します。
燃料切れと乱気流に留意しながら飛行しますので、今年も宜しくお願い致します。

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