« 疑問が解けた一冊 | トップページ | 雑感 その46 »

技術の普遍的価値

現在の米国では、音響装置の修理技師や配管工、空調整備技士などの所謂技術者
の収入が爆上がりして「ブルーカラーミリオネア」と呼ばれているようです。
必ずしも10億ドル単位の収入があるわけではないにしても、ごく一般的なホワイ
トカラーがAIに仕事を奪われて稼ぐ機会が減少する一方、ブルーカラーの労働者
が金持ちになるチャンスが膨らんでいる状況を指しています。

具体的な例としても枚挙に暇がありません…マンハッタンに住む弁護士の自宅に
音響機器の修理工がポルシェに乗って現れ、数千ドルの修理代を稼いだり、アパ
ートの水漏れ修理では2時間の作業で800ドル(約12万円)を稼いだ…等々。
この金額は妥当なのか…知識のない消費者はただ言われるままに支払うだけに
なるのでしょう。
配管工に至っては今や医者よりも収入が高いようです。

まあ、空調設備の仕事などは、真夏の酷暑の中でも屋根裏で作業したり、カビ
臭い床下に潜り込んだりと過酷な上に、細かな手作業を伴いますよね。
AIがそんな仕事を肩代わりできるとはとても思えません。
我が家でも数ヶ月に及んだ駐車場の外構工事において、職人の技術や仕事の過酷
さを間近で見せてもらいました。

アマゾンを解雇された男性はかつて「肉体労働はいずれロボットに奪われるだろう」
と、リスキリング制度でプログラミングを習得しました…「それなのに今は知的労働
や創作活動をAIが担い、人間は配管工への再リスキリングが必要になっている」と
ため息をついているという記事もありました。
 AIにはできない技術を持つ「エッセンシャルワーカー」の需要は今後益々増えること
でしょう。

高額な授業料を支払ってやっと卒業したエリート大学生が職にあぶれ、高卒ブル
ーカラーは引っ張りだこ…米国はすでにそんな状況にあるのです。
米労働省の統計では、ブルーカラーの仕事で賃金が最も高いのはエレベーターや
エスカレーターの設備・修理工で、年間所得は中間値で10万6580ドル(日本円で
1600万円)に上るそうです。

米国で大金持ちになるのは知識階級の人間というこれまでの常識が崩れつつあり
ますが、米国で起こった事象は日本でも起こることが多いので、日本でも技術者
を目指して手に職を付けるために高専の志望者が増えているのも頷けます。
(NHK「高専ロボコン大会」や「魔改造の夜」は欠かさず観ています)

ではマジシャンという技術者はどうかというと、ギャラが爆上がりという兆候は
見られません。
それは生活していく上で必要とされているものではないから…。

真夏にエアコンの効いた部屋でマジック番組を楽しんでいる最中に、エアコンが
故障したら…もうマジックなんてどうでもよくないですか?

この歳までマジックをやってきて感じるのは、マジシャンのギャラを上げるのに
必要なのは技術の優劣ではなく、「実生活には無用な贅沢品であるマジック」を売る
ためのブランディングの巧さなのだと確信しています。
結局、何をやるかよりも誰がやるかで価格は変動するということです。

 



|

« 疑問が解けた一冊 | トップページ | 雑感 その46 »

マジック」カテゴリの記事