ゴールデンタイムとピーク
以前、私は当コラムの中で、マジシャンのゴールデンタイムは35~45歳では
ないかと書きました。
もちろん個人差はあるし、クロースアップマジシャンとイリュージョニスト
では同じマジシャンといえども職種として比べようがないほどの相違もあるで
しょう。(特にフィジカル面では)
それを踏まえた上で、観客をコントロールしたり、場を支配する経験値、営業
を何本もこなせる体力面を総合してのゴールデンタイムという意味です。
ではゴールデンタイムは人生のピークなのでしょうか?…私はそうは思いません。
もちろんそれらが一致している人もいるでしょうが、あくまでも私の理解では、
充実感とは関係なく自他ともに認める「最も活躍していた時期」(最も露出して稼いだ
期間)がゴールデンタイムで、稼ぎなど関係なく「充実していると自分が思える瞬間」
がピークなのだと思います。
私自身、若い頃のようにバードアクトやイリュージョンを主軸としなくなった
ことには一抹の寂しさを感じていますが、それに代わって、コンパクトなパッ
ケージショーが好評を得ていることに、これまでの経験が結実した証左として
大きな充実感を得ています。
アスリート(例えば野球選手)であれば、現役で注目を浴びて稼いでいる時こそが
まさしくゴールデンタイムと言えるのでしょうが、現役時代は特筆するほどの
成績を残していなくても、その後指導者となって後進を育てて名監督として評価
されたならば、その人にとってはそこが人生のピークであるとも言えるでしょう。
一般人の立場でも高収入のエリートサラリーマンがやりたいことを諦めきれずに、
一念発起して独立や起業した場合に、サラリーマン時代よりも収入が少なくても
日々のやりがいを感じることができれば、そこがピークだと言えるでしょう。
若い時期のアドバンテージである体力に任せて汗水垂らして稼いだ年収一千万円
の達成感も理解できますが、地道に働き続けて70代で350万円を得る達成感が
それに劣るはずはないのです。
人生を歩む過程では、報酬の額と充実感が比例しなくなる時が遅かれ早かれ訪れ
るのですから、収入面のみを人生のピークの指標とする必要はありません。
つまり人生のピークとは、決して単純な数字面での優劣で比較できるものではなく、
晩年まで達成感や充実感を得られることだと思います。
「あの頃がピークだったなあ…」と黄昏れる人生はあまり充実しているとは思えません。
人生はフルマラソン…スタート直後から無理に先頭集団に加わってすぐに脱落する
よりも、ピークを先に延ばし、充実感を右肩上がりにして、自分が納得したタイム
でゴールテープを切るのが一番幸せなのかなあと思うのです。
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