シン 「プロ・アマ論」
現在の私自身が二刀流、時には三刀流で働いていることもあって、改めてプロ
マジシャンとアマチュアの違いとは何なのかと考えることが増えました。
そこで14年も前に当コラムで3回に渡って書いた「プロ・アマ論」を読み返した
ところ、まあ当時は若い分、かなり尖った書き方をしているものの、基本的な
考え方は現在とほとんど変わっていませんでした。
興味のある方はバックナンバーからどうぞ。
「プロ・アマ論」 (2011年5月6日)
「プロ・アマ論 2」 (2011年10月15日)
「プロ・アマ論 3」 (2012年7月10日)
遠い昔、私が大学病院を辞してプロマジシャンとして活動を始めた矢先に感じ
たのは、マジシャンという職業が市井においては、まともな仕事として認知
されていないということでした。
プロ活動のために大学病院を辞めたと告げると「わあ、勿体ない」と言う人が
ほとんどでしたが、大学病院の勤務医の収入など知れたもので、マジシャンに
転職した方が遥かに稼げるという自信と確信を持っていたし、実際にその通り
になりました。
活躍の幅が広がるにつれて、口さがない一部のマジシャンは「どうせ医者で稼い
でいるに違いない」と陰口を叩いていましたが…。
また「マジックをやってます」と言うと「良い趣味をお持ちですねえ」…「いや、
収入源がマジックなのです」と言うと「え、マジックで食えるんですか?!」等
のやりとりは日常茶飯事でした。
それもこれも資格不要の職業であることに起因しているという結論に落ち着き
がちなのですが、お笑い芸人も歌手も資格不要であることに鑑みれば、やはり
マジックというのは、芸能の中でもマイナーで、れっきとした職業としてすん
なりと認知させるのは難しい方だと言えるでしょう。
アマチュアの場合は履歴書の「趣味欄」にマジックと書き、プロならば「職業欄」
にマジシャンと書くはずです。
ところが、クレジットカードやパスポートの申請や重要書類の職業欄に堂々と
「マジシャン」とか「奇術師」と書くプロはほとんどいません。
いざとなると何か引け目でもあるのか、手続きを万事支障無く運ぶためなのか、
多くは「自営業」とか「飲食店経営」などと書いてお茶を濁しているのが現実です。
そのくせ、古い考えに拘泥している「自称プロマジシャン」の中には、マジック
関連以外の収入がある人を断固として「純粋なプロ」として認めたがらず、あえて
差別化して「セミプロ」とか「パートタイムプロ」と呼ぶ人もいます。
若手お笑い芸人の多くは芸能では食えないために、収入のほとんどはお笑い
とは関係のないバイト頼みのはずですが、それでは彼らのこともプロではない
と言い切っていいのでしょうか。
著名な画家、フィンセント・ファン・ゴッホの場合はどうだったのか…ゴッホは
死ぬまで絵を描き続けたのですが、その生涯で売れた絵はたったの1点だけ
でした。
自らの作品ではまともに稼げなかったわけで、それをあえて職業と言っていい
のかどうか?
では絵を描くことは、彼にとっては好きでやっているだけの趣味だったのか?
「我こそが本物のプロだ!」と自認する方々に問うてみたいものです。
結局、世間がマジシャンを見る目の多くは「趣味以上、職業未満の仕事」ということ
でしょう。
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