« EVの現在地って? | トップページ | 今年上半期の読書 2 »

今年上半期の読書 1

・ マツダがBMWを超える日  山﨑明 著  (講談社)

ブランドに深く関わってきた筆者の業務経験と個人的体験から日本ブランド
が欧州プレミアムブランドに対抗できない理由が明確に書かれています。
その理由の一つが日本の自動車メーカーの多くが行っている「クリニック調査」
…これは発売前の新型車を一般の人に見せてその評価を聞くというもので、
結果次第でデザイナーの意思に反してデザインが修正されたりして、最終的
には最大公約数的な車が完成してしまうという事象。

造る側の「市場の多くの意見を取り入れて、万人に愛されるクルマを造ろう」、
買う側の「悪目立ちしない無難なクルマに乗りたい」という控えめな日本人の
メンタリティがミックスされて具現化した典型的な事象でしょう。
それは決して品の良いアンダーステイトメントと言えるものではなく、単なる
横並びで「安心したい」か「失敗したくない」だけの冒険心が欠如した証左なの
です。(下取りの査定も考慮して色もまた無難に白、黒、シルバーを選びがち)

これでは「たとえ高額でも他人と被りたくない」「差別化を図って自分の個性を
表現したい」という拘りの強い顧客からは選ばれることはないし、日本の大手の
メーカーがかつての「光岡オロチ」のような個性の塊のようなクルマを造ること
など想像もできません。(レクサスLCが限界なのでしょうか)

欧州のプレミアムブランドは市場調査などほとんどすることはなく「これを気に
入った人だけが買えばいい」という考えが根底にあるからこそ尖ったクルマ造り
ができるのです。
世論に迎合せず98%を捨てた「2%戦略」を実践する度胸とプライドがあるのです。
もうね、日本のメーカーの考え方と根本的に違うのは「お客さまは神様」ではなく
「造った人こそが神」なのですよ。

クルマは言うに及ばず、腕時計やバッグにしても、日本製品が高品質なことは
伝わってはいても、独自性がなくてステータス感を伴わないため、一定以上の
金額の高級品になると欧州ブランドに勝つことができないのです。
「メイドインジャパン」には「品質が高い」というイメージがありますが、問題は
「安くて」「値段の割に」というフレーズがつきまとうことにあるのです。

例えば同価格のロレックスとオメガとセイコーがあるとしたら、セイコーを選ぶ
人はごく僅かでしょう。
まずあえてセイコーを選ぶ理由を説明できないのです…根っからのセイコーファン
ならともかく、せいぜい「目立って周囲からの反感を買いたくないから」程度の
ことです。

初版は2018年の本ですが、内容はマジシャンとしての私がスキミング戦略を
基に実践してきたことと重なる部分が多いこともあって、頷きながら何度も読み
返しました。
私にとってはある意味バイブルみたいな一冊かもしれません。

|

« EVの現在地って? | トップページ | 今年上半期の読書 2 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事