収益効率 2 [規模]
前回からの続きです…
「クロースアップからイリュージョンまで」…幅広いレパートリーを売りにする
マジシャンのプロフィールでよく見かけるフレーズです。
それはさておき、クロースアップよりもステージやイリュージョンのギャラを
高く設定しているマジシャンが多いようですが…何故なのでしょう?
そのマジシャンにとってはクロースアップの価値は低いのでしょうか?
あるいは得意ではないからでしょうか?
規模が大きなショーほどアシスタントの人件費や運搬費等の必要経費が発生
するので仕方がない側面もあるのですが、本音のところは「小」よりも「大」の
方が価値があるという根拠なき刷り込みと、ギャラを要求しやすいという考え
に起因しているものと思われます。(クオリティが同じなら牛丼の並盛りより
大盛りの方が高いのと同じ理由です)
現代のマジックビジネスにおいて、「大道具を持ち込めば、有り難みや価値が
あるように見えるからギャラを要求しやすい」などという「規模」に収益効率を
見出す前時代的な考えは捨て去るべきです。
高めの報酬を受け取る不安を払拭するために、物量作戦で持ち込んだ余分な
道具のセットや撤収に時間がかかって、主催者や会場に迷惑をかけることも
あるのです。
迷惑と言えば、あれだけNGと伝えていたのに、動物や火気を使うマジックを
ゲリラ的にやらかしまくった挙句にやり逃げをする確信犯的なマジシャンも…。
コンプライアンスを無視してまでやってしまう理由は、それ無しでは客が納得
しないかもしれないという不安感や、ギャラを頂戴しづらいという自信の無さ
に起因している場合が殆どですが、元からコンプライアンスという概念が欠如
しているマジシャンも散見します。
閑話休題…量り売りじゃあるまいし、そもそも質より量で勝負しようという
価値観自体があまりにも貧相で短絡的です。
「無名ローカルマジシャンのイリュージョン」と「超有名マジシャンのスプーン
曲げ」…道具の規模にギャラが比例していないのは明白でしょう。
「特売の肉塊」と「スプーン一杯のキャビア」を比べたり、「コンビニ弁当」と
「銀座の有名鮨屋の大トロ一貫」を比べるのは無意味なのです。
大きさが全く違う点では、目覚まし時計と高級腕時計を比べるようなものです。
さらにイリュージョンがコピーであれば比較対象ですらありません。
ただし、自称スライハンドマジシャンが「イリュージョンなんてビックリ箱の
ようなものだから誰でもできる」などとイリュージョニストを見下す発言を
することを、多くのイリュージョンを演じてきた私としては看過できません。
まず正規のイリュージョンを買える立場になって、それらをやり尽くしてから
言えって話です。
あるいは、スライハンドのみでイリュージョニストの収入を凌駕して収益効率
の高さを誇示してから言えって話ですよ。
閑話休題…思いのほか高いギャラを提示された時、己の戦略に自信がない人
ほど「演技時間を長くする」ことや「道具の規模を大きくする」という戦略で
解決しようと試みますが、結果は期待するほどの高評価は望めないでしょう。
やり方(希少性とプレゼンテーション)次第では、短時間で小規模のショーの
方がはるかに収益効率を高めることができるのです。
次回3へ続く…
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