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収益効率 4 [パクリ 前半]

前回からの続きです…

スポットライトに照らされて喝采を浴びているメンターに対して抱く羨望と
嫉妬…そこに無駄な苦労はしたくない、損はしたくない、ハズしたくもない
…つまり、面倒臭いことは簡単にスキップして同等の立場になりたいという
冒険心が皆無の欲望が混入して、どす黒い化学反応が起きた時にパクリたく
なるという衝動に駆られるのです。
パクリは前頭葉を使わないマジシャンが収益効率を高めるには最も手っ取り
早い方法でしょう。

しかしながら巷間云われるように、そもそも芸事の多くは憧れのメンターの
真似から始まるものです。
私の高校時代はステージマジック、特に鳩出し、ファイヤー、カードが好きで
島田晴夫、酒匂正文の完コピをすることに明け暮れました。(レベルの高い
マジシャンに憧れることによって、それなりの技術が身に付いたのは紛れも
ない事実です)

コピーして営業出演で儲けようという下心などあるはずもなく、悪意の無い
高校生のコスプレまでパクリと言ってしまえばそれまでですが、そこまで
厳密に糾弾されるのであれば、脛に傷の無いマジシャンは皆無のはずです。
ここではあくまでも「収益効率」がテーマなので、マジックで生計を立ててい
ないアマチュアや学生がプロの模倣をすることは、テーマの範疇には入れて
おりません。
アマチュアや学生が憧れのプロの真似をすることは、カラオケで憧れの歌手
になりきって歌うのと同義だし、つまりヒットの証なので目くじらを立てる
ような事象ではないと思います。

私自身、アマチュア時代はスポットライトを浴びることが嬉しくて、収益
など考えることもなかったので、多くのプロの演技を参考に様々なマジック
を演じてきましたが、そんな時期を卒業した(卒業しなければならない)プロ
転向後は、冷静に「稼げるビジネス」としての戦略を考えて、独りよがりの
マジックの押し売りを控えて、収益効率を高めることを最優先に、自分の
キャラに合った出し物を厳選しながら演技を組み立てていきました。

ちょっと手前味噌になりますが、それが後に九州における「稼げる営業プロ」の
雛形となって、自分で工夫することを放棄した地元のプロや師匠ホッピング
を繰り返すマジシャンから、演目、演出、BGM、ギャグまで散々模倣された
のですが、それが彼らにとっては前頭葉を使わずとも手っ取り早く収益効率
を上げる方法だったのだし、何よりも雛形が正しかったことの証左でした。
今となっては、自らのキャラを見失ったままの彼らの人生に憐憫の情を覚え
ると同時に、気持ちの中では「人助けをしたんだな」と咀嚼することによって、
負の感情はすでに消化されています。

前頭葉を使い続けることは大切です…せっかく多くの可能性を秘めてこの世
に生を受けたのに、パクリばかり演じ続けた挙句に人生に終止符が訪れた時、
代わりになるマジシャンは山ほどいて誰も困らないなんて、あまりにも寂し
過ぎます。

売れているマジシャンの得意芸ばかりを寄せ集めて、盛り付けも汚くて見る
からに胃がもたれそうな幕の内弁当を提供するマジシャンもいるわけですが、
そもそも「記憶に残る幕の内弁当」は存在しません。

次回、後半に続く…

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