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2023年11月

収益効率 7 [日用品と嗜好品]

最終回です…

スーパーカーも高級腕時計も宝飾品も一流ブランドの服も、言ってしまえば
生きていくためにはこの世に無くても困らない不要不急の嗜好品です。
だからこそWTP(支払い意思額)の考え方に沿って付加価値を高めて収益効率
を上げることが当然のビジネスモデルとして確立されています。

たとえスーパーカーを購入する層であっても、例えばトイレットペーパーの
1巻が1万円だとしたらバカ高いと感じるように、日用品であれば常識的な
価格設定があらゆる層に認識されていますが、嗜好品の価格はそれが欲しい
人次第では青天井なのです。
興味がない人から、「あんなものに金を使うなんて考えられない」と思われても
本人の「支払い意思額」は強固です。(マジック道具に金をつぎ込む人達の多くは
家族の理解すら得られておらず、本人が亡くなった後はゴミ扱いです)

嗜好品を買う時はワクワクするのに日用品を買う時はワクワクしません。
不要不急の嗜好品には「ワクワク感という付加価値」があり、そこに重きを置く人
はそれに対しての出費は厭わないものです。
つまりワクワク感はプライスレスとも言えるでしょう。

では、見る人をワクワクさせるマジックショーも不要不急のもの(嗜好品)である
以上、WTPの考え方が当てはまるはずですから、マジシャンの側からわざわざ
「マジックを身近で気軽に楽しめる世の中にしたい」などと大義名分を掲げて
大衆化路線(日用品)に向かうことには私は大反対です。
投げ銭目的の路上パフォーマーならともかく、本音では安売りをしてでも生活
費を稼ぎたいだけであって、それではカッコがつかないから何かと大義名分を
を掲げようとするのです。(本音をパームしてもフラッシュしています)

マジックを始めようと思った時点で、少なからず「目立ちたくてええかっこしい」
という部分を内包しているのですから、それを糊塗して「お客様の笑顔のために」
とか「社会貢献」などと臆面もなく口にする人間を簡単に信用するべきではあり
ません。
安直なパクリ屋、虚言癖のある者、経歴詐称をする者、情けない罪状による
前科者など、魑魅魍魎が何事もなかったかのように平然と跳梁跋扈している
のがマジック村なのです。

マジックを好き過ぎる人は、その濃厚な曇りガラスに視力と洞察力を阻まれ、
大げさに言えば「マジックが好きな人に悪人はいない、皆友達」という具合に
「お人好しなクルクルパー」になってしまい、「マジック大好き」とか「あなたを
尊敬しています」と押印されたパスポートを提示されただけで、心の税関を
開放して入国させて、その挙句に簡単に秘密を搾取されたり裏切られたり
するのです。(かくいう私も人を見る目がなかったのか、過去幾人かを入国さ
せて後悔している一人です)

つい愚痴ってしまいましたが、閑話休題…マジシャンの社会的地位を向上
させようという意識さえあれば、「このマジシャンならここまでのギャラを
払っても構わない」というWTPを成立させることをビジネスモデルの一つと
して頭の片隅に置いておくべきであるし、せっかくマジックを生で観るので
あれば、それなりの場所でそれなりの対価を払う「特別な体験」であるべき
だと思います。

そもそもマジックが日用品ではなく嗜好品であることは、収益効率を上げる
ための大きなアドバンテージであるし、マジシャンはそれを誇りに思うべき
なのです。

収益効率…終わり

真摯なご意見、ご質問がある方はこちらまで…drzuma@mac.com

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収益効率 6 [ブランディング]

前回からの続きです…

収益効率を世界の自動車メーカーの「株式時価総額」の順位づけから考察して
みましょう。

テスラの1位とトヨタの2位は不動なのですが、面白いのは7位と8位を行きつ
戻りつしているのがホンダで、競い合いの相手はなんとフェラーリなのです。
年間販売台数が1万台強しかなく、しかもトレンドであるEVを売っていない
のにフェラーリの評判が高いのは何故なのでしょう?

2022年度のデータでは、出荷台数はトヨタの800分の1なのに、1台あたりの
利益率は53倍もあるのですから、もの凄い収益効率です。(マジックで例えたら
トランプ1組でトラック1台分のイリュージョンショーに匹敵するイメージです)
世界的なEV化の流れは今後も変わることはないので、フェラーリも数年後に
はEVを造る方向のようですが、内燃機関つまり新車として出回るエンジン車
は減少に向かう一方で、伝統的スポーツカーの希少価値は益々高まるのでは
ないでしょうか。

また近年は、入手困難な旧車の人気が沸騰していますが、私のマジックにおい
ても(特にクロースアップ)30年以上前に銀座のクラブで演じてきた演目ほど今の
観客にとっては新鮮味があるようで、最新のマジックよりも遥かに反応が良い
ことを体感していますし、当時のマジックを若手マジシャン達に演じてみると、
初めて見る現象なのか、全く追いついてこれないことも多々あります。

私はマジックビジネスに紐づけられることは貪欲に勉強する方なのですが、
最近気になっている分野があります。
それはWTP(willingness to pay)…「支払い意思額」という考え方。
これは製品やサービスに対して、消費者が喜んで支払う価格のことを表します。
つまり「いくらまでなら消費者はお金を出していいと思うか」を示す金額のこと
なのですが、フェラーリはそれがズバ抜けて高いのですよ。
圧倒的な支持者のみを対象にクルマ造りに専念しているのであって、「クルマは
走れば十分、バカ高いクルマなんて見栄っ張りが欲しがるだけで興味はない」と
いう価値観の違うルサンチマンこそ、フェラーリ側からすれば顧客として扱う
意味も価値もない存在なのです。(高級腕時計の世界も同じですね)

フェラーリのビジネス哲学を何かの本で読んだことがあります…それは枯渇感
を煽って価値を高めるために「欲しがる人の数を想定して、それよりも1台少な
く製造する」ということ。
分厚い利益の源泉は「ブランド力」という無形資産であって、こればかりは日本
の自動車メーカーに決定的に欠けてきた部分でしょうね。
日本のクルマはステータスやラグジュアリーよりも適正価格で故障が少ない
ことを売りにしてきたために、ブランディング構築がおろそかになっていた
のです。(可能性があるとしたらレクサスくらいでしょうか)
要はコスト削減で利益を追う企業と、巧みなブランディングをして高収益を
獲得する企業に分かれているのです。

翻ってマジック業界…「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」ではありませんが、複数
のイベント業者に籍を置かせてもらって、どの業者のホームページにも同じ
宣材写真が出てくるマジシャンは、その戦略の先に何か大きな展望があるの
でしょうか?(カーセンサーの中古車一覧にしか見えません)
まあ、それで収益効率が上がっているのであれば何も言うことはありません
…物言えば唇寒し秋の風。

「このマジシャンならいくらまでなら出せるか」というWTPを念頭に、マジシャン
も他業種のブランディングを学ぶべきなのです。

次回7へ続く…

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収益効率 5 [パクリ 後半]

前回からの続きです…

アマチュア時代には憧れのプロの演技を模倣することは誰もが通る道であり、
それをパクリと非難するのなら、脛に傷の無いマジシャンは皆無ではないのか
と述べました。

問題はプロの場合です…プロ転向以降にも他人の模倣をしていると、少しでも
プライドがある人ならば「他人のふんどしで相撲を取る」こと自体に羞恥心を感
じて、独自の路線を歩み始めるものなのですが、羞恥心を感じる受容体が先天
的に欠如しているのか、成長とは無縁で単に憧れの人と同じことがやりたくて
プロ活動を始める人もいれば、周囲からどう思われようが、収益効率どころか
食べていくために、なりふり構わずにパクリまくる事例もあります。
客席にパクリ元となったマジシャンを見つけて焦るくらいなら可愛げもありま
すが、開き直ってまるで動じないメンタルの持ち主もいるほどです。

この事象は平成初期のマリックブームの頃は特に顕著で、一度は廃業したも
同然のようなマジシャンですら超魔術師を装うことで息を吹き返す「ゾンビ現象」
まで起こりました。(袖口を捲くってサングラスをかけるだけで、なんちゃって
マリックが出来上がるのですから、収益効率は高かったはずです)
しかし当時から「カニカマは本物のカニになれっこないのになあ」と感じていま
したが、現在に至るまでやはりカニカマのままです。
またアンチマリックを旗印に、ブームに紛れて暴露によって仕事を得る輩も
跳梁跋扈していましたが、どんな大義名分を掲げようが、成功者を貶めて毀損
するのも彼らにとっては収益効率を上げる一つの方法だったということです。

ところで昨今、医学界ではジェネリック医薬品の製造不正問題が話題になって
います。
2021年2月以降、中堅メーカーの小林化工、ついで日医工までもが業務停止
命令を受けました。
そして最大手の沢井製薬が胃炎・胃潰瘍向け医薬品の品質試験で不正があった
と発表しました。
国は医療費削減のために医療機関に対してジェネリック医薬品の処方を推奨
していたのに、一連の不祥事で薬不足に陥るとは皮肉なものです。

実は以前から臨床医の多くはジェネリック医薬品の効能に懐疑的でした。
降圧剤をジェネリックに変更した途端、血圧が安定しなくなったり、テトラ
サイクリン系の抗生剤のジェネリックでは傷の治りが遅かったりと、これら
の事例には枚挙に暇がありませんでした。
後発薬であるジェネリック医薬品は、先発薬と成分が同じでも添加物や製造
過程が異なるために十分な効果が得られなかったり、予期せぬ副作用が現れ
ることがあるのです。

この類のニュースを見る度に、ついマジック界の歴史と照らし合わせてしまい、
カーディニー、チャニングポロック、フレッドカプス…多くの先発マジシャンの
偉大さを思い知るわけです。
先発に影響を受けた後発(もちろん私もその一人です)は、いつまで経っても
ある意味ジェネリックマジシャンなのです。

先発ほどの十分な効果を得られないまでも、せめて副作用で迷惑をかけない
ように留意しなければなりませんね。

次回6へ続く…

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収益効率 4 [パクリ 前半]

前回からの続きです…

スポットライトに照らされて喝采を浴びているメンターに対して抱く羨望と
嫉妬…そこに無駄な苦労はしたくない、損はしたくない、ハズしたくもない
…つまり、面倒臭いことは簡単にスキップして同等の立場になりたいという
冒険心が皆無の欲望が混入して、どす黒い化学反応が起きた時にパクリたく
なるという衝動に駆られるのです。
パクリは前頭葉を使わないマジシャンが収益効率を高めるには最も手っ取り
早い方法でしょう。

しかしながら巷間云われるように、そもそも芸事の多くは憧れのメンターの
真似から始まるものです。
私の高校時代はステージマジック、特に鳩出し、ファイヤー、カードが好きで
島田晴夫、酒匂正文の完コピをすることに明け暮れました。(レベルの高い
マジシャンに憧れることによって、それなりの技術が身に付いたのは紛れも
ない事実です)

コピーして営業出演で儲けようという下心などあるはずもなく、悪意の無い
高校生のコスプレまでパクリと言ってしまえばそれまでですが、そこまで
厳密に糾弾されるのであれば、脛に傷の無いマジシャンは皆無のはずです。
ここではあくまでも「収益効率」がテーマなので、マジックで生計を立ててい
ないアマチュアや学生がプロの模倣をすることは、テーマの範疇には入れて
おりません。
アマチュアや学生が憧れのプロの真似をすることは、カラオケで憧れの歌手
になりきって歌うのと同義だし、つまりヒットの証なので目くじらを立てる
ような事象ではないと思います。

私自身、アマチュア時代はスポットライトを浴びることが嬉しくて、収益
など考えることもなかったので、多くのプロの演技を参考に様々なマジック
を演じてきましたが、そんな時期を卒業した(卒業しなければならない)プロ
転向後は、冷静に「稼げるビジネス」としての戦略を考えて、独りよがりの
マジックの押し売りを控えて、収益効率を高めることを最優先に、自分の
キャラに合った出し物を厳選しながら演技を組み立てていきました。

ちょっと手前味噌になりますが、それが後に九州における「稼げる営業プロ」の
雛形となって、自分で工夫することを放棄した地元のプロや師匠ホッピング
を繰り返すマジシャンから、演目、演出、BGM、ギャグまで散々模倣された
のですが、それが彼らにとっては前頭葉を使わずとも手っ取り早く収益効率
を上げる方法だったのだし、何よりも雛形が正しかったことの証左でした。
今となっては、自らのキャラを見失ったままの彼らの人生に憐憫の情を覚え
ると同時に、気持ちの中では「人助けをしたんだな」と咀嚼することによって、
負の感情はすでに消化されています。

前頭葉を使い続けることは大切です…せっかく多くの可能性を秘めてこの世
に生を受けたのに、パクリばかり演じ続けた挙句に人生に終止符が訪れた時、
代わりになるマジシャンは山ほどいて誰も困らないなんて、あまりにも寂し
過ぎます。

売れているマジシャンの得意芸ばかりを寄せ集めて、盛り付けも汚くて見る
からに胃がもたれそうな幕の内弁当を提供するマジシャンもいるわけですが、
そもそも「記憶に残る幕の内弁当」は存在しません。

次回、後半に続く…

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収益効率 3 [マニピュレーション]

前回からの続きです…

ステージマジックの分野では花形とも言える、指先のテクニックを駆使して
演じるマニピュレーション芸…いわゆるスライハンドマジックを得意とする
マニピュレーターの収益効率はどうなのでしょう。

この分野は業界においてはコンテスト向きで、一般人の理解度を超えて同業
者に認められたいハイスペックを目指す人が多く、収益効率など度外視して
高みを目指すための稽古に励む覚悟がないマジシャンは、それを看板にする
ことはないでしょう。

ただ同業者をも唸らせるテクニックも一般客に理解されなければ、もはや
ハイスペックどころかオーバースペック…つまり自己満足に過ぎなくなり、
そこに大きな収益は期待できません。
法定速度内で走るクルマでも十分に速いと感じる一般人には、最高速度が
250kmと300kmのクルマの差は理解できないのです。
実際の営業現場はサーキット(マジックコンベンション)ではありませんから。

長い歴史の中で海外の一流マニピュレーターがどの程度のレベルの暮らしを
していたのかは知る由はありませんが、同業者ウケなど眼中になく、一般人
の目線に合わせることで成功したマジシャンは多く存在しているはずです。
ただ私が知る限り、コンテストで受賞した海外のマニピュレーターも、実際
の営業現場においてはコンテストアクトでは持ち時間を満たすことができず、
凡庸なイリュージョンやトークマジックの営業手順でお茶を濁しているのが
現実です。
海外のマジシャン達のプロモーションビデオを見てもそれを確認できますし、
実際にコンベンションで多くのマジシャン達に会った時に、通常の営業出演
ではどんなマジックを演じているのかを確認したこともあります。

国内においては、経済的に誰もが憧れるほどの成功を収めたマニピュレーター
は寡聞にして聞いたことがありません。
受賞歴をアピールしたとて社会的地位が上がった試しはないし、生活レベル
にほとんど影響が及んでいないことが受賞が機能していない証左です。
人生の流れとしては、コンテスト受賞→コンベンション巡り→レクチャーや
道具販売で糊口をしのぐ…というのがよくあるパターンです。
普段の営業出演で披露して収益を上げようにも、角度に弱かったり、特殊な
照明が必要だったり、ステージを散らかすなどの理由でなかなか買い手が見
つからずに燻ってしまい、そのストレスがコンベンションへと向かわせると
いう側面もあります。

オーバースペック気味のマニピュレーターにありがちな自己肯定感を満たす
ナルチシズムの香りに包まれる多幸感と長年演じてもなかなか収入に直結し
ない虚しさのコントラスト…完成までにかけてきた時間と見返りを天秤にか
けると、最も収益効率が低い分野かもしれません。
それでもスライハンドマジックをノーミスで巧く演じきった時の達成感は、
お金には代え難いものがあるからこそ、マニピュレーション沼に入っていく
のです。

もっと報われて評価されるべき分野なのですが、自ら収益効率の低い「宮大工」
を目指したのであれば、一般住宅の受注がなくて稼げないことを嘆くのは
矛盾しています。

次回4へ続く…

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収益効率 2 [規模]

前回からの続きです…

「クロースアップからイリュージョンまで」…幅広いレパートリーを売りにする
マジシャンのプロフィールでよく見かけるフレーズです。
それはさておき、クロースアップよりもステージやイリュージョンのギャラを
高く設定しているマジシャンが多いようですが…何故なのでしょう?
そのマジシャンにとってはクロースアップの価値は低いのでしょうか?
あるいは得意ではないからでしょうか?

規模が大きなショーほどアシスタントの人件費や運搬費等の必要経費が発生
するので仕方がない側面もあるのですが、本音のところは「小」よりも「大」の
方が価値があるという根拠なき刷り込みと、ギャラを要求しやすいという考え
に起因しているものと思われます。(クオリティが同じなら牛丼の並盛りより
大盛りの方が高いのと同じ理由です)

現代のマジックビジネスにおいて、「大道具を持ち込めば、有り難みや価値が
あるように見えるからギャラを要求しやすい」などという「規模」に収益効率を
見出す前時代的な考えは捨て去るべきです。
高めの報酬を受け取る不安を払拭するために、物量作戦で持ち込んだ余分な
道具のセットや撤収に時間がかかって、主催者や会場に迷惑をかけることも
あるのです。

迷惑と言えば、あれだけNGと伝えていたのに、動物や火気を使うマジックを
ゲリラ的にやらかしまくった挙句にやり逃げをする確信犯的なマジシャンも…。
コンプライアンスを無視してまでやってしまう理由は、それ無しでは客が納得
しないかもしれないという不安感や、ギャラを頂戴しづらいという自信の無さ
に起因している場合が殆どですが、元からコンプライアンスという概念が欠如
しているマジシャンも散見します。

閑話休題…量り売りじゃあるまいし、そもそも質より量で勝負しようという
価値観自体があまりにも貧相で短絡的です。
「無名ローカルマジシャンのイリュージョン」と「超有名マジシャンのスプーン
曲げ」…道具の規模にギャラが比例していないのは明白でしょう。
「特売の肉塊」と「スプーン一杯のキャビア」を比べたり、「コンビニ弁当」と
「銀座の有名鮨屋の大トロ一貫」を比べるのは無意味なのです。
大きさが全く違う点では、目覚まし時計と高級腕時計を比べるようなものです。
さらにイリュージョンがコピーであれば比較対象ですらありません。

ただし、自称スライハンドマジシャンが「イリュージョンなんてビックリ箱の
ようなものだから誰でもできる」などとイリュージョニストを見下す発言を
することを、多くのイリュージョンを演じてきた私としては看過できません。
まず正規のイリュージョンを買える立場になって、それらをやり尽くしてから
言えって話です。
あるいは、スライハンドのみでイリュージョニストの収入を凌駕して収益効率
の高さを誇示してから言えって話ですよ。

閑話休題…思いのほか高いギャラを提示された時、己の戦略に自信がない人
ほど「演技時間を長くする」ことや「道具の規模を大きくする」という戦略で
解決しようと試みますが、結果は期待するほどの高評価は望めないでしょう。
やり方(希少性とプレゼンテーション)次第では、短時間で小規模のショーの
方がはるかに収益効率を高めることができるのです。

次回3へ続く…

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収益効率 1 [オファー]

今回から数回に渡って収益効率をテーマに書く予定ですが、内容は営業プロ
としてのスタンスなので詳述することを逡巡しました。
また「収益効率なんて考えずに芸を極めることがマジシャンの本分だ」とする
昭和の浪花節的な考え方の人もいるでしょうが、プロであれば稼ぎは多いに
越したことはありません。

ある経済学の本に「貧乏暇無し」などと言うのは、謙遜してお金に興味がない
ことをアピールしているようで、実は仕事の効率の悪さや無能さを糊塗して
いるだけなので、ビジネスパートナーとしての対象からは除外すべきである…
とありましたが、大いに同意するところです。

ここに書くことは一般社会の経済活動にも相通じる点もありますし、何より
マジシャンの社会的地位の向上を願いつつ書き記します。
では、まずオファーについて。

この秋以降、出演オファーも徐々に増えていますが、私はオファーを受けた
時点で「仮押さえ」の期限を設けさせていただいています。
理由としては、仮押さえをされている期間はその当日や前後に仕事を入れる
ことができない「機会喪失」が甚だしいからです。(多忙な方は同意できるはず)

最近でこそなくなりましたが、過去の例だと、オファーをした側は仮が消えた
時点ですぐに連絡すべきところを失念した場合、放置していた失態を糊塗
するために「急にイベント自体がなくなっちゃいまして…」など、その場しのぎ
の言い訳をする業者もいましたが、回想すれば当時の自分が舐められていた
だけなのでしょうね。

立場の弱いマジシャンほど「随分前に問い合わせがあった仮の仕事はあれから
どうなったのかなあ、こちらから連絡してみようかなあ」と思いつつも、自分
からせっついたことが原因で「他の案件が入ったのであれば、そちらを優先
して結構ですよ」などと返答されて仮バラシとなることを恐れて連絡できず、
相変わらず放置されて「舐められループ」が続くことになるのです。(マジシャン
あるあるではないでしょうか?)

世の中の慣習としては、商品の取り置きにしても仮予約には期限があるのが
常識なので、オファーがあった時点で仮押さえの期限を決めるべきであるし、
同じ日程で他のクライアントから別件のオファーがあった場合は、決定優先
とするか否かもはっきりと決めておくべきです。

また現在の私は、ステージショーのオファーは地元の福岡以外は極力お断り
して、代わりに信頼のおけるマジシャンを紹介しています。
遠方でのステージショーは、場合によっては前乗りしての準備やリハーサル
が必要だったり、夜の出演だとその日も泊まることになって、たった一回の
ステージのために二泊三日を費やす上に、機材の発送や受け取りに立ち会う
場合は、さらに丸一日が潰れることもあるのです。

人生も終盤に突入し、収益効率を第一義とするマルチワーカーの立場としては、
本番の日の前後や機材の発送や受け取りで他の仕事ができなくなることを考慮
すると引き受けづらい状況なので、遠方の現場はフットワークよく動けて収益
効率が高いクロースアップのみを引き受けています。(プライベートな空間で、
少人数を相手にひっそりとやっております)

今回書いた方針は、あくまでも現在の私の年齢や生き方をベースとした最小
公倍数的な方針なので、最大公約数的に誰にでも推奨できるものではありま
せんが、ここで言いたかったのは、いずれにしても収益効率を上げるためには、
現在の自分自身を俯瞰して価値観に合うオファーの受け方を模索するのが
肝要だということです。

次回2へ続く…

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