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2023年10月

レザークラフト

私はショーで使うレザーアイテム(ワレット類)の多くは、自分でデザインや
素材やカラーを決めた上で、信頼する革職人にオーダーメイドで製作して
もらっています。

既製品はあくまでも現象に主眼を置いた「マジック道具」として作られており、
マジシャンは現象を起こすアイテムとして何の疑問もなく使っている場合が
多いのです。
しかしそれらは客の側から見れば「マジシャンの私物」という認識です。
客はマジシャンが思っている以上に一つの私物からそのセンスや生活感や
バックボーンを嗅ぎ取り、値踏みをしています。
ビシッとキメたスーツの懐からくたびれたワレットや100円ショップで
売っていそうなボールペンが出てきたり、カジュアルな出で立ちの若手の
マジシャンがオッサン臭い長財布を使ったり…たとえ爪や靴や腕時計が
ピカピカでも雰囲気は台無しなのです。(ビニール製のパケット入れなど
論外です)

私自身の経験を吐露すれば、30代後半の頃でしたか、ある銀座のクラブの
テーブルホッピングでルポールワレットを演じている時に、一人の客から
突っ込まれました…「ねえマジシャンさあ、マジックは不思議なんだけど
財布は買い換えたら?」
7〜8年前でしたか、少人数のVIPの眼前に予言のメッセージを入れた革の
ケース(数日前にデパートで購入した定期券入れ)を置いたところ、客同士
の小声の会話が耳に入ってきました…「へえ、このマジシャン、しょっちゅう
バスや電車に乗ってるんだなあ」
それなりの現場だったのでそれなりのギャラを頂戴していたし、気合の入った
スーツと腕時計を着けて臨んだだけに、小物一つが生活感を炙り出してプロ
ファイリングされることもあるのだと知った瞬間でした。

マジック道具に対するお金のかけ方としては、余裕のない時代はできるだけ
レパートリーを増やすことに費やしたいのが現実で、すでに演じている物を
買い換えたり作り変えることには抵抗があるものですが、既述したような
過去の経験から「私物に見えるマジック道具」には予算に糸目をつけない
時期もありました。
ちょっとしたギャグで使うだけなのに25万円のクロコダイル製のGUCCIの
ワレットを改造したり、ダブルXで使うペンは高級万年筆で製作しました。
結果これらは現在も稼働中で、どこに出しても恥ずかしくないし、とっくに
元は取れています。

コロナ禍も明けてクロースアップショーの依頼も増えている昨今、道具の
チェックをしている過程で新たなデザインでワレットや小物を作り直すこと
にしました。
私も還暦を過ぎ、それなりの現場や服装に合わせて使い分けようと思った
次第です。
たしなみとして服や靴はもちろん、メガネや腕時計もTPOに合わせて使い
分けをするように、ワレットや小物もそれに準ずるべきだと思います。

実はお世話になっている革職人が、工房を構えていた近隣から車で一時間
はかかる遠方に工房ごと引っ越してしまったので、なかなか相談できなく
なっていました。
しかし年齢的にも先送りをしている時間はありませんので、今週末に打ち
合わせに出かけることにしました。
エニーカードインワレット、予言のケース、サッカートリックワレット、
ヒンバーワレット…もうこれが最後になるかもしれないので、最前線で
活躍しているレパートリーをまとめてリニューアルする予定です。
信頼できる後輩の一人から「ぜひ自分の分も作ってもらいたいので、連れ
て行って下さい!」と懇願されたので同行することになりました。

最近はシグネットを運転するのが楽しくて、気がついたらDBXはしばらく
乗っていなかったせいかバッテリー警告灯が点灯…今回はDBXをかっ飛ば
して行ってきます!

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問題作を鑑賞

映画「月」を鑑賞。

これは、2016年に相模原市の重度障害者施設「津久井やまゆり園」で発生した
大量殺傷事件をモチーフにした辺見庸の小説を映画化したものです。

この映画は苛烈ではあっても実直な表現で、見て見ぬふりをしてきたもの、
知っているのに知らないふりをしてきたもの、そして本音を糊塗して綺麗事
だけを口にしがちな私たちに、逃げることができない現実を突きつけます。
上映中、犯人の自説の展開に何を勝手なことを言っているのだと思いながら、
自分の中にも同様のどす黒い考え方が宿っていることを否応なく突きつけて
来るのです。
この映画の一つの見所は、主演の宮沢りえが犯人と口論をしながらも、いつ
の間にかもう一人の自分に喝破されていく場面にあると思います。

上映後は、ほとんどの観客が身動きもできないまま、本音と建前や理想と現実
のギャップに蹂躙されているかのような空気でした。
まさに誰もが目を逸らしてはならない世に問うべき問題作です。
勇気ある制作者と俳優陣を心からリスペクトします。

公式ホームページは…コチラ

実は最近忙しくて映画館で映画を観る機会がなく、やっと時間ができたので
面白そうな映画はあるかなと調べようとした矢先に、偶然にも後輩からこの
映画を推奨するメールが届いた次第…「制作者の覚悟キマってて、体重の乗った
パンチでした」と綴られていれば観に行かない選択肢はありません。

福岡市内の上映館を調べると、博多駅Tジョイと中洲大洋の2館のみ。
今回は迷わず中洲大洋を選びました…実は老朽化に伴い2024年3月末をもって
閉館し、取り壊しが決定していたからです。
この映画館は1946年に開館し、4スクリーンに計581席が備わり、市内の独立
映画館では最古の歴史を誇ります。

私は大学に入学した1983年から福岡に住み始めましたが、当時から幾度となく
通いました。
中洲で飲んだ後にオールナイト上映に行って寝落ちしたこともありましたね。
近年はキャナルシティや博多駅Tジョイ、あるいは東京や名古屋で映画を観る
機会が多かったのですが、十数年ぶりの中洲大洋でノスタルジーに浸りました。

今後も「ゴジラ−1.0」や「エクソシスト 信じる者」など、世代的にノスタルジー
を感じさせる映画が上映予定なので楽しみです。

そうそう、チケット窓口で免許証を提示するとシニア割(1200円)になりました。
ノスタルジーを感じるはずだ…。

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ASTON MARTIN ARCADIA

アストンマーティン創立110周年に合わせてアストンマーティンオーナーが一堂
に会する特別なイベントが11月17日〜19日の3日間に渡って日本で開催
されます。

17日は東京の金龍山浅草寺にて、自動車ブランドとしては世界初の試みとして
アストンマーティン110台が集結するコンクールデレガンスを開催。
授賞式後には、東京近郊でオーナーズパレードが予定されています。

18日はアストンマーティンオーナー向けガラショーとチャリティオークションを
富士スピードウェイホテルで開催。

19日は最大規模となるアストンマーティンオーナーが集うエキサイティングな
トラックデーを富士スピードウェイにて開催。

詳細は…コチラ

先日案内が届きましたが、自身の愛車を持ち込みたい場合は、東京や富士スピード
ウェイまでの運搬もお手伝いして頂けるとのこと…滅多にないチャンスなので参加
したいところなのですが、残念ながらこの3日間は福岡での仕事が入っているため
断念。
16日までは東京にいるのに…タイミングが合わない時ってこんなものですねえ。

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ダイジェスト映像

先日の「マジック セピアライン」40周年ディナー&マジックショーのダイジェスト
映像が公開されました。

1時間のショーを3分間にギュッと凝縮した映像です…コチラ

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ディナーショー終了

10月1日、Rintaroの店「マジック セピアライン」40周年記念のディナー
ショーが開催されました。
記憶が鮮明なうちに書き記そうとは思ったものの、翌2日から三泊四日で
福岡→名古屋→東京→名古屋→福岡と慌ただしく動いていたために、遅れて
しまいました。

当日は14時過ぎに会場入りして道具の搬入をしたものの、宴会場は某高校
の同窓会で使用中であり、会場の設営のリセットに時間を要したために、
リハーサルの時間はほとんどありませんでした。
ロビーにはお祝いの豪華なフラワースタンドが届き始め、ネームプレートには
Mr.マリック、ふじいあきらの名前も…。

18時開会の頃には22の円卓が170名超の観客で埋まりました。
Rintaroによるオープニングマジックと挨拶の後、ディナースタート。
数人のマジシャンによるテーブルホッピングに続いて19時30分にステージ
ショースタート。
出演はRintaro、マルコ、LUNA、私の4名で約1時間の構成…なにしろ自分の
準備もあって、他のマジシャンの演技を正面から観ることはできなかったの
で詳細なレポートは書けませんが、客席からの大きな歓声は聞こえました。
(Rintaroを始め、LUNAやバックステージを手伝ってくれたYOHEYがSNSに
記事や写真をアップしているのでご参照ください)

Rintaroとマルコがそれぞれイリュージョンを演じたので、私はスライハンド
とトークマジックのみで30分の構成(一部Rintaroとコラボ)としました。
最近の厳しいコンプライアンスの御多分に洩れず、この会場も火気や動物の
使用はNGとのことでしたが、事前交渉の結果、特例でOKとなりました。
宴会担当の責任者が以前勤めていたホテルで私の演技を見たことがあるとの
ことで、ZUMAさんならばと許可されたそうです…ありがたや。
昨今のマジックコンベンションでも、会場の規則で火やスモークや鳩はNG
のようで、なんでもありの時代を生き抜いた自分としては寂しい限りです。
火の点いていないキャンドルを出したところで間抜けなだけでしょうに…。

現在の私のショーはクローズドのみで、一般の方々に観て頂く機会はほぼ
ないので、今回は多くの知人に声をかけました。
アストンマーティンのスタッフの方々は招待させて頂きましたが、幾つかの
円卓は中洲の高級クラブがそのまま移転してきたかのような状況に…まあ、
客席に華があって良いことだと思います。
そういえば十数年前、九州大学マジックサークル発足のお祝いとしてゲスト
出演した時も客席の一部が高級クラブ状態になり、甘美な香水も相まって
学生の発表会とは思えない雰囲気が漂っておりました。

今回はRintaroの両親を始め親族も勢揃いしたようですが、彼の成功を目の
当たりにして、安心したと同時に誇らしく感じたことでしょう。
私もコロナ禍を挟んで久しぶりの本格的なステージショーで良い汗をかき
ましたし、何十年も演じてきましたが、広い会場を優雅に飛翔する大型鳥
の姿には改めて惚れ惚れしました。

ご来場の皆様、ありがとうございました。

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