レザークラフト
私はショーで使うレザーアイテム(ワレット類)の多くは、自分でデザインや
素材やカラーを決めた上で、信頼する革職人にオーダーメイドで製作して
もらっています。
既製品はあくまでも現象に主眼を置いた「マジック道具」として作られており、
マジシャンは現象を起こすアイテムとして何の疑問もなく使っている場合が
多いのです。
しかしそれらは客の側から見れば「マジシャンの私物」という認識です。
客はマジシャンが思っている以上に一つの私物からそのセンスや生活感や
バックボーンを嗅ぎ取り、値踏みをしています。
ビシッとキメたスーツの懐からくたびれたワレットや100円ショップで
売っていそうなボールペンが出てきたり、カジュアルな出で立ちの若手の
マジシャンがオッサン臭い長財布を使ったり…たとえ爪や靴や腕時計が
ピカピカでも雰囲気は台無しなのです。(ビニール製のパケット入れなど
論外です)
私自身の経験を吐露すれば、30代後半の頃でしたか、ある銀座のクラブの
テーブルホッピングでルポールワレットを演じている時に、一人の客から
突っ込まれました…「ねえマジシャンさあ、マジックは不思議なんだけど
財布は買い換えたら?」
7〜8年前でしたか、少人数のVIPの眼前に予言のメッセージを入れた革の
ケース(数日前にデパートで購入した定期券入れ)を置いたところ、客同士
の小声の会話が耳に入ってきました…「へえ、このマジシャン、しょっちゅう
バスや電車に乗ってるんだなあ」
それなりの現場だったのでそれなりのギャラを頂戴していたし、気合の入った
スーツと腕時計を着けて臨んだだけに、小物一つが生活感を炙り出してプロ
ファイリングされることもあるのだと知った瞬間でした。
マジック道具に対するお金のかけ方としては、余裕のない時代はできるだけ
レパートリーを増やすことに費やしたいのが現実で、すでに演じている物を
買い換えたり作り変えることには抵抗があるものですが、既述したような
過去の経験から「私物に見えるマジック道具」には予算に糸目をつけない
時期もありました。
ちょっとしたギャグで使うだけなのに25万円のクロコダイル製のGUCCIの
ワレットを改造したり、ダブルXで使うペンは高級万年筆で製作しました。
結果これらは現在も稼働中で、どこに出しても恥ずかしくないし、とっくに
元は取れています。
コロナ禍も明けてクロースアップショーの依頼も増えている昨今、道具の
チェックをしている過程で新たなデザインでワレットや小物を作り直すこと
にしました。
私も還暦を過ぎ、それなりの現場や服装に合わせて使い分けようと思った
次第です。
たしなみとして服や靴はもちろん、メガネや腕時計もTPOに合わせて使い
分けをするように、ワレットや小物もそれに準ずるべきだと思います。
実はお世話になっている革職人が、工房を構えていた近隣から車で一時間
はかかる遠方に工房ごと引っ越してしまったので、なかなか相談できなく
なっていました。
しかし年齢的にも先送りをしている時間はありませんので、今週末に打ち
合わせに出かけることにしました。
エニーカードインワレット、予言のケース、サッカートリックワレット、
ヒンバーワレット…もうこれが最後になるかもしれないので、最前線で
活躍しているレパートリーをまとめてリニューアルする予定です。
信頼できる後輩の一人から「ぜひ自分の分も作ってもらいたいので、連れ
て行って下さい!」と懇願されたので同行することになりました。
最近はシグネットを運転するのが楽しくて、気がついたらDBXはしばらく
乗っていなかったせいかバッテリー警告灯が点灯…今回はDBXをかっ飛ば
して行ってきます!
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