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えっ、それ訊く? マジシャン編

一般客にマジックを見せると…「なんで?どうやったの?」と訊かれることは
マジシャンであれば日常茶飯事。
「他のマジシャンがやっているマジックのタネは解るの?」などと少々答え辛い
質問もされますが、これもマジシャンあるあるでしょう。
またマジシャン同士で朝まで見せ合い質問し合うことは珍しいことではあり
ません。
私も経験してきたので、切磋琢磨することで成長することは理解できます。

私がちょっとモヤっとするのは、最近でこそ滅多にありませんが、仕事で演
じているマジックに関して、初対面やそれに近い同業者が、「それどうやって
やるんですか?」「あれ売ってるんですか?」「その演出やってもいいっすか?」
「あのBGMのタイトルは何ですか?」などとシレッと訊いてきた時。
その調子の良さに「まず距離感ってものがあるだろう…他人のテリトリーに
土足で踏み込めるパスポートでも持っているのか?」と、つい思ってしまう
わけで…一応、心の防空識別圏が設定されているので、そこを侵犯されると
2機程度のスクランブル発進が発動されます。

「俺マジシャンだから」という妙な特権意識でもあるのか、「見てしまった
マジックや耳にしたギャグは自動的に自分のレパートリーにして構わない」と
いう考えの人が少なからず存在していて(特に夜のお店)、お手軽にパクった
マジックやギャグを嬉々として披露する刹那的な日々を送っているのです…
ホント「お気を確かに!」と言いたくなります。

前回の記事「盛夏の諸々 6題」の中のコーナータイトル[歴史の無知]で書いた
問題…未読の方のために簡潔に説明すると、元々は私が所有していたマジック
道具を1996年にあるマジシャン(故人)に譲渡したところ、そのマジックが
故人のオリジナルだと信じた隣国の若手が、故人の配偶者に演技権料を支払い、
すでに故人からその道具を買い取っている私の後輩に、「金を払ったのだから
仕掛けを教えろ」と理不尽なメールを送りつけてきたので、ド正論で返信した
ところ「納得した」とのことで一件落着となりました。

ところが解決したと思った矢先に、その隣国のマジシャンが再び後輩に論理
が破綻した自分勝手なメールを送ってきたのです。
「私もお金を払いました。多くは望まないので、あなたの道具の仕掛けを撮影
して送ってくれるだけでいいのです。それを演じていた他界した人の遺志を
継ぎたいのです。あなたもマジシャンでしょう?他の多くのマジシャン達に
大いに役立つことになります。お願いします」…ですと。

「遺志を継ぎたい」という大義名分を利用して、なんとかコピーしたいという
我欲が見え見えです。
ド正論で論破されたらこのように切り口を変えて「情に訴える」面倒くさい
論難を仕掛けてくるのです。
日本人は大人しいから、強気で押し通せば折れると思って舐めてるんですよ。
まずは金を受け取る権利など1ミリもない故人の配偶者に返金を求めるのが
筋というものでしょう。
なんで面識もないマジシャンに大切な仕掛けを撮影までして教えなければな
らないのか…後輩と相談して再びド正論の文面を送りました。
あとは徹底して無視を決め込むしかありませんね。

と、この記事を書いている最中に「理解しました、他の方法を考えます」との
返信が来たようですが、油断は禁物です。
政治における隣国との外交交渉では、都合よくゴールポストを動かすことが
悪名高いわけですが、この図々しいメンタリティーというか国民性というのは
マジシャンでもおそらく同じでしょうから。

 

 

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