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名刺 2

前回からの続きです…

プロ転向のために大学病院を退職してから3年後、本名から芸名に変わると
いう大きな転機が訪れ、新たな名刺を製作することになりました。
1994年、マリックさんからDr.ZUMAと命名された時、誰も見たことがなく
「只者ではない」イメージの名刺にしようと思い、デザイナーと相談しながら
まずZUMAの字体を稲妻を連想させるデザインにして2種類の名刺を製作しま
した。

一つは、厚手の台紙の表面に漆黒のベルベット生地を張り、名前をシルバー
の型押しとしました。
手渡された瞬間、驚くほど触り心地の良いゴージャスな名刺が完成しました
が、それもそのはず…かかった経費は当時で一枚400円!
通常なら名刺は製作枚数が増えるほど一枚あたりの単価は安くなるものです
が、ベルベット生地の価格は注文の多寡とは関係なく、さらに紙用の裁断機
が使えずに職人が手作業で裁断していたため、何枚発注しようが安くなるこ
とはありませんでした。

何枚製作したかは失念しましたが、当時は頻繁に銀座のクラブに出演してい
たので、ゴージャスな雰囲気もマッチして評判も良く、団体客の代表のみに
手渡すと連れの客も欲しがって、あっという間になくなりました。(当たり前
ですが、5名の団体客全員に配ると2千円が飛んでいきます)
潤沢なギャラとチップを頂戴していたものの、さすがに経費がかかり過ぎた
ので、以降は製作しませんでした。

もう一つはご存知の方もいると思いますが、二つ折りのミラー名刺です。
これもミラー部分が職人の手作業なので、当時で一枚200円の経費がかかり
ました。
このミラー名刺はインパクトがあって好評なので現在に至るまで使用してい
ますが、在庫が少なくなる度に発注して文字の色や表示情報をアップデート
してきました。
初期のものには固定電話やFAX番号が印字されていたのが、時代の変遷で
メールアドレスや携帯番号に変更していきました。

近年は名刺交換の機会も漸減して、補充するペースも落ちていたのですが、
ふと在庫を確認すると30枚程度しか残っていなかったので追加発注しようと
したら、なんと製作会社がなくなっていたのです。
慌てて名刺製作会社を何社か検索して相談したところ、こんなに凝った名刺
はうちでは作れませんと全て門前払い。
途方に暮れていたそんな時に頼りになるのが、後輩マジシャンのRYOTA…
困った時に魔法のランプをこすると、あのキメポーズで出て来てくれるまさに
リアルマジシャンなのです。

彼も凝った名刺(白紙の状態から徐々に名前が浮かび上がる)を使っていたこと
を思い出したので相談してみたところ、渡した見本の名刺を手にあちこちに
奔走し、ついに製作してくれる会社を見つけてくれました。
製作過程ではプロトタイプのミラーの光沢や色味を彼が何度もチェックをし、
その都度に私の確認を取るという丁寧な仕事をしてくれたおかげで、これまで
で最も美しい名刺が完成しました。(今回は300枚、総額で15万かかりました
が、納得の出来栄えです)
RYOTAにはお礼を兼ねて銀座で一席設けました。

「顔が名刺」というほどの超有名人であれば名刺など必要ないのでしょうが、
私程度ではそういうわけにもいかないし、何よりもこの名刺を手にした時の
相手の反応が楽しいので、もうしばらくは配ることになりそうです。

名刺ホルダーには40年以上前からの日本中のマジシャン、あるいは海外の
コンベンションなどで知り合った外国人マジシャンの名刺が多数保管されて
います。
今回のエントリーを書くにあたり久しぶりにホルダーを見返すと、実に多彩
な名刺の数々が…今見てもスタイリッシュなもの、気絶するほどダサいもの、
海外の名刺はサイズもバラバラで、木製の円板状のものまでありました。

これらの中で最もインパクトを感じたのは誰の名刺だと思いますか?…
それはMr.マリック!
まだブレイクする前、若かりし頃のマリックさんが旧一万円札(聖徳太子です)
を宙に浮かせている写真の上に、強烈なキャッチコピーが…
「こんな不思議な男 みたことない!!」
ええ、こんな名刺見たことないです。

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