夏の読書レビュー 2
・ 「禁城」 ムロン・シュエツン 著 (飛鳥新社)
約3年に渡って我々の社会生活を混乱させた新型コロナウイルス…この間に
仕事を失った人、生き方そのものを深く考えざる得なかった人、人生に影響
を受けなかった人は皆無と言っても過言ではないでしょう。
私自身も還暦を迎えてマルチワーカーとして複数の仕事の配分の緻密な計画
を立てている最中にコロナ禍となってしまい、計画を3年前倒しで実行する
ことになりましたが、結果的には早めに動いたことが吉と出てホッとしてい
ます。
本書は中国の著名な作家である著者が、2020年春、ロックダウンされた湖北
省武漢市に赴き、市民へのインタビューを通してコロナ禍の実像に迫ろうと
したノンフィクションです。
登場人物は10人足らずですが、拘束された反体制派のジャーナリスト、共産党
支持の富豪、白タクの運転手等、顔ぶれは多彩で、例えば医師の間では「政府
のデータを信じる者は一人もいなかった」という証言もあるなど、中国社会の
歪な側面が浮かび上がります。
巷間云われるように、共産党政権による政府見解や政策決定の経緯は不透明
極まりない上に、中国ならではの治安機関の動きは凄まじいものがあります
が、武漢のロックダウンについて深く考える手がかりとしても、本書の意義
は小さくないと感じました。
ちなみに著者は本書出版にあたり国外に脱出し、現在は亡命作家となってい
ます。
天安門事件を始め、真実の追求は犯罪行為とされることが多い中国では当然
の帰結なのでしょう。
本書を読み終えた率直な感想は…本当にかの国で産まれなくて良かったと感
じるし、多少の不平不満はあるものの、私たちは日本に産まれただけでも
勝ち組なんですよ。
その他、最近読了した書籍の中で面白かったものです。(レビューを書く時間
がありませんので、タイトルのみ紹介します)
・ 「夢と金」 西野亮廣 著 (幻冬舎) …マジシャン必読です。
・ 「残酷すぎる人間法則」 エリック・パーカー 著 (飛鳥新社)
・ 「残酷すぎる成功法則」 エリック・パーカー 著 (飛鳥新社)
・ 「勝負師の条件」 守谷 淳 著 (日本経済新聞出版)
・ 「あなたの隣の億万長者」 小林義崇 著 (ダイヤモンド社)
・ 「東京医大 不正入試事件」 田中周紀 著 (講談社)
・ 「バカの上手なかわし方」 マクシム・ロヴェール 著 (文響社)
・ 「なぜヒトだけが老いるのか」 小林武彦 著 (講談社現代新書)
・ 「客観性の落とし穴」 村上靖彦 著 (ちくまプリマー新書)
・ 「警視庁公安部外事課」 勝丸円覚 著 (光文社)
・ 「特捜検察の正体」 弘中惇一郎 著 (講談社現代新書)
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