ギャラ交渉は苦手?
あらゆるものが値上げされる中、6月からは電気料金がさらに上がるようで
すが(幸い九州電力は今回の値上げはないようです)、それに呼応するかの
ように企業の給与もアップしている昨今(一流商社の初任給は軒並み5万円
のアップ)、マジシャンもギャラアップの交渉をしているのでしょうか。
「お金じゃない、夢だ笑顔だ感動だ」と宣う人は、物価の動向とは関係なく
生きていくことを是としているわけですから、特にこだわりはないでしょう。
マジックができて最低限度の生活費さえあれば十分幸せなのかもしれないし、
他に潤沢な収入源があって、マジックのギャラなんて眼中にないのかもしれ
ません。
マジックバーや飲食店で雇われている立場の人は、ギャラアップは言い出し
にくいのではないでしょうか…なにしろ主戦場であった飲食店もこの3年間
のコロナ禍で青色吐息だったはずですから。
都会の一部のマジックバーでは、できるだけ多くシフトに入れてもらいたい
マジシャンのレギュラー枠の奪い合いもあるようですからね。
マジックバーの一晩の報酬は、30年前からたいして変わっていないとも耳に
しますが、若手ならともかくいい歳になったマジシャンはどうなのでしょう。
生活のためではなく、自分のマジックを客前で試す機会として利用している
だけだ…という理由もあるようですが、それも一つの生き方でしょう。
また先輩マジシャンが安いギャラで出演した現場では、それ以上は要求しに
くいものです。
私も若い頃に何度も経験しました…「去年の〇〇さんはこのギャラでやって
くれましたよ」とか「うちは誰がゲストでもこのギャラなので」…等々。
こういうのはもう取りつく島もありません。
私の場合、どんなに努力してもギャラに反映されないこのような風習の現場
やイベント業者には早々に見切りをつけ、独自のスキミング戦略で開拓をし
てきたので、現在のマジックの市場には詳しくありませんが、俯瞰した時に
ステージもクロースアップもギャグまでもが似たり寄ったりの状況であれば、
誰にオファーをかけても変わり映えするはずもなく、ギャラが上がらない
のも頷けるし、仕事がより安いマジシャンに流れていくのは当然の帰結です。
他人を出し抜くことよりも劣って見られたくないがために、無難に同じような
演目に収れんしていくのです。(順位をつけない小学生の徒競走のようです)
昔から日本の文化として「お金は汚らわしい、お金の話をするのははしたない
こと」という風潮があったせいか、家庭でも学校でも学ぶ機会がなく、金融
リテラシーを欠いたまま社会人になる人がほとんどです。
プロを名乗って活動を始めたものの、消費税や源泉税もお構いなしで領収書
の書き方すら知らないどんぶり勘定のマジシャンもいますからね。
日本人は免疫のない状態で社会人になって初めて税金や金融の仕組みを知る
場合が多いので、投資詐欺に遭ったりひいては闇バイトに手を染めることに
も繋がるのではないでしょうか。
良い意味で「日本人はお金の話が苦手で、奥ゆかしい国民性」とされてきまし
たが、ビジネスライクに考えれば奥歯にモノが挟まったような交渉しかでき
ないことは、決して良いことではありません。
だからと言ってお金の話をするとすぐに「あいつは金儲けしか考えていない」
と清貧は美学とでも言いたげなルサンチマンから貶されることになります
が、妬み嫉みが染み付いた人種の遠吠えは無視するに限ります。
マジックのレパートリーを増やしてテクニックを磨いて待っていれば、誰か
が認めてくれて評価もギャラも上がっていくものだ(他力本願)と信じている
なら大間違いです。
他人のマジックを横目で見ながら横並びで合わせていく暇があるなら、金融
リテラシーとマジシャンとしての実力を向上させて、言うべきことは言わな
いと(自力本願)、ギャラは手付かずの永久凍土のままです。
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