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2023年5月

資格ビジネス?

「本年6月からはマジックショーで動物を使う場合は家庭動物管理士の資格が
必要になる」という情報が入って来ました。
動物を使うマジシャンにとっては死活問題になりかねないことですが、率直
な感想は、「はぁ? なんじゃそりゃ?」

まずその資格自体を知らなかったので調べてみると、全国ペット協会が認定
している制度で、ペットのプロの育成を目的として、資格取得者は全国の
ペットショップやペット関連事業所で活躍しているとのこと。
管理士3級を受験して資格を取得するのに4万円が必要で、2年毎の更新らし
いです。

将来ペット関連事業を始めることが目的ならいざ知らず、これはマジシャン
にとって「必須の資格」なのでしょうか?
ファイヤーマジックを演じる際に火薬類取り扱い保安責任者の資格が必要と
いうのならまだ理解できますが…早い話が単なる資格ビジネスではないのか
なと思います。

マジシャンがわざわざこの資格を取得するとしたら、その本心は営業依頼を
受けやすくするための「信用」として利用することが第一義で、いかにも権威
ある国家資格の雰囲気を醸し出して「しっかりしている感」をアピールしてい
るだけのような気がします。
何の影響力もない互助会的な組織の「正会員」みたいなもので、特にドヤ顔
するほどのことでもないでしょう。

まあ、このような資格ビジネスがまかり通る一因としては、動物に芸を教え
込むこと自体が「虐待」ではないのかという動物愛護の観点もあるのかもしれ
ませんが、それならば動物をショーで用いるマジックショーの他、サーカス、
猿回し、イルカやアシカの曲芸ショーなど、あらゆる動物系エンタメが包括
されてしまいます。

しかし、全国のマジシャンの演技をいったい誰が監視をして、誰が違反だと
判断するのでしょうか?
もし違反をしたらプロマジシャンの資格を剥奪するというのなら興味深いで
すね…なにしろプロマジシャンになるには何の資格も必要ないのですから、
何を剥奪するのかなと。

ある意味、マジシャンは失うものが何もない「無敵の人」なのです。

今後マジシャンになるために、あれこれと資格が必要な時代になるとすれば、
いっそのことそれらの資格を活かしてマジシャン以外の道で食べていく方が
安定しそうな気がしますが…。

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ギャラ交渉は苦手?

あらゆるものが値上げされる中、6月からは電気料金がさらに上がるようで
すが(幸い九州電力は今回の値上げはないようです)、それに呼応するかの
ように企業の給与もアップしている昨今(一流商社の初任給は軒並み5万円
のアップ)、マジシャンもギャラアップの交渉をしているのでしょうか。

「お金じゃない、夢だ笑顔だ感動だ」と宣う人は、物価の動向とは関係なく
生きていくことを是としているわけですから、特にこだわりはないでしょう。
マジックができて最低限度の生活費さえあれば十分幸せなのかもしれないし、
他に潤沢な収入源があって、マジックのギャラなんて眼中にないのかもしれ
ません。

マジックバーや飲食店で雇われている立場の人は、ギャラアップは言い出し
にくいのではないでしょうか…なにしろ主戦場であった飲食店もこの3年間
のコロナ禍で青色吐息だったはずですから。
都会の一部のマジックバーでは、できるだけ多くシフトに入れてもらいたい
マジシャンのレギュラー枠の奪い合いもあるようですからね。
マジックバーの一晩の報酬は、30年前からたいして変わっていないとも耳に
しますが、若手ならともかくいい歳になったマジシャンはどうなのでしょう。
生活のためではなく、自分のマジックを客前で試す機会として利用している
だけだ…という理由もあるようですが、それも一つの生き方でしょう。

また先輩マジシャンが安いギャラで出演した現場では、それ以上は要求しに
くいものです。
私も若い頃に何度も経験しました…「去年の〇〇さんはこのギャラでやって
くれましたよ」とか「うちは誰がゲストでもこのギャラなので」…等々。
こういうのはもう取りつく島もありません。

私の場合、どんなに努力してもギャラに反映されないこのような風習の現場
やイベント業者には早々に見切りをつけ、独自のスキミング戦略で開拓をし
てきたので、現在のマジックの市場には詳しくありませんが、俯瞰した時に
ステージもクロースアップもギャグまでもが似たり寄ったりの状況であれば、
誰にオファーをかけても変わり映えするはずもなく、ギャラが上がらない
のも頷けるし、仕事がより安いマジシャンに流れていくのは当然の帰結です。
他人を出し抜くことよりも劣って見られたくないがために、無難に同じような
演目に収れんしていくのです。(順位をつけない小学生の徒競走のようです)

昔から日本の文化として「お金は汚らわしい、お金の話をするのははしたない
こと」という風潮があったせいか、家庭でも学校でも学ぶ機会がなく、金融
リテラシーを欠いたまま社会人になる人がほとんどです。
プロを名乗って活動を始めたものの、消費税や源泉税もお構いなしで領収書
の書き方すら知らないどんぶり勘定のマジシャンもいますからね。
日本人は免疫のない状態で社会人になって初めて税金や金融の仕組みを知る
場合が多いので、投資詐欺に遭ったりひいては闇バイトに手を染めることに
も繋がるのではないでしょうか。

良い意味で「日本人はお金の話が苦手で、奥ゆかしい国民性」とされてきまし
たが、ビジネスライクに考えれば奥歯にモノが挟まったような交渉しかでき
ないことは、決して良いことではありません。
だからと言ってお金の話をするとすぐに「あいつは金儲けしか考えていない」
と清貧は美学とでも言いたげなルサンチマンから貶されることになります
が、妬み嫉みが染み付いた人種の遠吠えは無視するに限ります。

マジックのレパートリーを増やしてテクニックを磨いて待っていれば、誰か
が認めてくれて評価もギャラも上がっていくものだ(他力本願)と信じている
なら大間違いです。

他人のマジックを横目で見ながら横並びで合わせていく暇があるなら、金融
リテラシーとマジシャンとしての実力を向上させて、言うべきことは言わな
いと(自力本願)、ギャラは手付かずの永久凍土のままです。

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久しぶりの高速運転

3年ぶりに故郷の宮崎に帰省してきました。

福岡〜宮崎は空路では30分程度だし、マイルもエグいほど貯まっているため
当初は飛行機で帰省しようと思いましたが、今年はまだ一度も愛車DBXで
高速道路を走っていなかったので、混み合うGWを避けてツーリング気分で
弾丸日帰り帰省を決行しました。
先月末にメンテナンスに預けて、整備も万全にしておきました。

晴天に恵まれた5月10日早朝に出発して、市街地から福岡都市高速〜九州自
動車道へ…そして宮崎自動車道に入ってからは、前後に一台も見当たらない
貸切状態が続いたので、早速モードを「GT」→「SPORT」→「SPORT+」に
切り替えると、車高が下がってハンドルと足回りが硬くなり、パドルシフト
でメリハリのあるギアチェンジをしながらアクセルを踏み込むと、野獣の
ような咆哮と背中全体にかかる異次元のGに感動。
ステアリングは指先の動きがそのまま前輪を通して路面に伝えられているか
のようにダイレクトで、一瞬の遅れも感じないまさに「人馬一体」、パノラマ
ルーフの開放感とエアサスペンションがもたらす雲上の乗り心地でストレス
フリー…往復7時間(走行距離650km)のドライブを終えて帰宅しても疲れは
全く残っておらず、そのまま晩酌しながらの夜更かし。

DBXが納車されてすぐにアストンマーティンオーナーツーリングに参加して
初めて高速道路を走った時は、12台の隊列で走る緊張感もあったせいか、
そのポテンシャルを細部まで感じ取る余裕はなかったものの、今回の帰省
ではしっかりと体感できました。(しかしまあ燃費の凄いこと…こればかりは
目をつむるしかありません)

実はGW前にバッテリー警告灯が点灯したのでディーラーに問い合わせたら、
乗る機会が少ないことで容量が減っているのではないかとの回答が…。
思い返すと最近は街乗りばかりで一年半の走行距離は4000kmそこそこだし、
雨の日や狭い裏道を通る予定がある時はセカンドカーを使っていたし、福岡
不在の期間は全く運転しなかったからでしょうね。
今回の帰省でかなり充電できたはずだし、今後は警告灯が点かない程度には
乗るつもりですが、近年は帰省はもちろん、ちょっとした行動予定も告知を
しないことにしています。

その方針として、今年に入ってブログのメインタイトルを「Dr.ZUMAのお知
らせ」→「Dr.ZUMAのコラム」にひっそりと変更しております。
「お知らせ」というのは今後の行動予定やイベントの告知・集客を目的とする
時に使用するものですが、現在は告知や集客を必要としない完全クローズド
の出演に特化しているし、ブログの内容もマジックにおける考察や時事ネタ、
森羅万象を書いているので「コラム」とした方が相応しいのかなと思った次第
です。

さらに物騒な昨今、プライベートな行動予定を告知して、自宅を不在にする
ことや行き先を公言することはやめた方がよいと云われるようになった証左
として、「明日から海外旅行に出かけまーす!」とSNSで告知したばかりに、
空き巣被害に遭ったというケースも枚挙に暇がありません。
さらには一般人には関係ありませんが、政治家も選挙演説等で行動予定を
公表しているからこそテロリストに狙われやすくなるわけですしね。

閑話休題…

オーナーツーリングは隊列で走るのが醍醐味ですが、単独のツーリングは
自分のペースで走れる気楽さがいいですね。(特にトイレタイム)
あ、そうそう、帰省時のメインイベント…宮崎交通センター(宮交シティ)内
の「味のガンジス」にも立ち寄り、中高生の頃からのソウルフードである鉄板
ナポリタン(メニュー上の名称はイタリアンスパゲティ)も3年ぶりに食して
大満足でした。

ドライブを楽しんだ余韻に水を差すのが、5月に届く自動車税の納付書…
毎年のことだけど、油断しているところに届くと凹みますなあ。

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FIRE

FIREとはFinancial Independence Retire Earlyの略で、「経済的自立と
早期退職」という意味です。
巷にはFIRE関連本が溢れ(2年間で8倍増)、先日のNHK「クロースアップ
現代+」でも「私たちはなぜ働くのか 投資&倹約で生きるFIRE生活」
というタイトルで特集番組が放送されました。
FIREを達成した数人が取材に応じていましたが、皆さん不動産投資や株式
投資で数千万〜1億程度の資産を形成して勤め先を辞めて、家賃収入や配当
という不労所得での生活を実現しています。

そう聞くと、「きっと贅沢な暮らしをしながら遊んでばかりいるのだろう」と
羨ましく感じるかもしれませんが、富豪になったわけではありませんから、
利子を生む元手を取り崩さない倹約生活をしている人が多いようです。
例えば5千万を貯めて投資をしたとして年利4%では200万円、1億投資した
としても400万円ですから、利子だけでの生活は年収200〜400万円レベル
の暮らしということです。

各々のFIREを目指した理由としては、パワハラを受けたり、一定額以上の
昇給は見込めなかったり、やりたいことをやる時間と余裕がなかったり、
このまま働き続けることに疑問を抱いたり…等々ですが、共通しているのは
贅沢がしたかったわけではなく、「働くことに疲れた、絶望した」というどち
らかというとネガティブな理由が多いように感じました。
裏を返せば、そこそこの収入があって将来性とやりがいのある仕事に恵ま
れていたなら、辞めることはなかった人が多いのではないでしょうか。

番組の中ではFIREを達成した後の生活も紹介されていましたが、まさに人
それぞれでした。
平日からレジャーや旅行を楽しむなど、家族と過ごせる時間が増えて実に
生き生きとしている人もいれば、上司のパワハラから逃れたい一心で念願
のFIREを達成していながら、いざ働かなくなると、テレビや読書の日々を
送るうちに他人と関わることもなくなり、奥さんから「いつまでリビング
にいるの!」と邪険に扱われ、成長しない自分にも嫌気がさして、再び働き
始める人もいました。
やはり社会との繋がりを持って、ある程度は承認欲求を満たさないと生き
がいを感じられないものなのでしょう。

生活レベルとは関係なく楽しそうにしているマジシャンは(そう見えている
だけかもしれませんが)、やはり好きなことを仕事にしているという事実
が幸福度の高さの要因となっているのは間違いないでしょう。
「大好きなマジックで生活できるだけで幸せです」と公言する人、決して
珍しくありませんから。

しかしFIREを達成して働かずに生きることは意外とお金がかかるはずです。
テレビや読書やゲームをずっと続けるわけにはいかないので、刺激を求め
て外出すれば何かと出費をするし、時間があるだけにお金がかかる趣味
(例えばギャンブル)を持つと湯水のように浪費をしかねません。

番組を観終わって自分に置き換えて考えてみましたが、私は私自身をよく
理解しているつもりなので、もしFIREをやったとしたら暇を持て余して
夜な夜な中洲のクラブに繰り出しそうだし、物欲を満たし続けてあっと
いう間に元手の資産まで失う恐れがあるので、生涯に渡って可能な限り
働き続けるつもりです。(退職金もないし年金もあてになりませんしね)

お正月に今年の運勢を占う番組を観たのですが、それは星座と血液型と
の組み合わせで運勢を占うもので、自分の「牡羊座のA型」が発表される
まで待っていました。
そしていよいよ発表の時が…「次は牡羊座のA型です。やり残したことが
あるならば、今年再トライすればきっと上手くいくでしょう!」

しばらく考えました…今後読みたい本や尽きる事のない物欲はありますが、
正直言ってこれまでの人生で「やり残したこと」は一つもないのです。
ではやはりFIRE?…いや、やり残したことではないし、仕事が充実して
いればやる意味を見い出せないし、今のところはFIRE達成した人たちが
憧れの対象でないことは確かですね。


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緊急アナウンス

GW真っ只中ですが、久しぶりに行動制限なしのGWですから各地混雑して
いるようですね。

「急病の方がいます。お客様の中で医師の方がいたらお知らせください」…
飛行機内で、このような緊急アナウンスが流れるドラマのような場面に実際
に遭遇したことはありますか?
私は過去3回遭遇しています。(国際線と国内線で各1回、新幹線で1回)

JALによると機内で急病人が発生して「ドクターコール」が発生する事案は年間
約250件程度あり、このうち緊急を要するため航空機を引き返す事案も30件
前後あるようです。
症状としては失神や失神寸前の状態が37%、呼吸器の異常が12%、悪心や
嘔吐が10%などとなっているようですが、旅行で気分が高揚して多量に飲酒
をしたことが原因である場合も多いのではないかと思います。
実際に海外のマジックコンベンションからの帰路、後輩マジシャンが泥酔して
機内の通路に寝転がって顰蹙を買っているのを目撃したことがありました。

緊急事態に備えて、乗客として搭乗する医師に事前に登録してもらう制度を
大手の航空会社が始めたとの新聞記事を読んだことがありました…かなり前
の記事でしたが、あれってどうなったんでしょうね?
医師が登録すればカードに記録されて乗務員に伝わり、機内から専門医に
問い合わせができる体制を整えた他、医療行為を巡って患者側と事後の訴訟
になった場合に備えて保険にも加入することを条件にしても、医師は登録に
消極的である…という内容の記事でした。

そりゃそうでしょう…登録してしまうと、せっかくのプライベートな旅行で
あっても重責を感じて飲酒どころかリラックスすらできないでしょうからね。
一旦関わると人道的な圧もあって、空港で待機している救急車に同乗して、
搬送先の病院の医師に引き継ぎをしなければならない場合もあって、そうな
ると自分の旅行の日程も台無しになり、それに伴う諸費用も手出しをしなけ
ればならなくなったらどうしてくれるんだよって話ですよ。
おまけに医療行為の報酬に関しての明示もなかったと思いますが、この辺り
は医師個人の性善説に頼るということでしょうかね。

医師の側からしたら、学生時代から医師国家試験に備えて「全ての科」を勉強
して合格はしたものの、いざ医師になれば特定の専門科に従事して専門外の
疾患を診る機会はほとんどないので、機内で呼ばれた際に「専門外だから」と
いう理由で断りにくい上に「自分の知識で対応できるかどうか分からない」、
「法的責任を問われる恐れがある」との理由で尻込みして事前登録に消極的に
なるのは当然のことだと思いますよ。
僻地が医師募集をしてもなかなか赴任者が現れないのも似たような理由なの
でしょう。

一般人は「医師」という大きな括りでイメージしているので、どんな疾患でも
診てもらえると思いがちですが、必ずしもそうではありません。
マジシャンに例えるのも変ですが、カードやコインしか演じないクロース
アップマジシャンが「マジシャンなら鳩出してよ」とか「美女浮かしてよ」と
いきなりリクエストされるようなものです。
これも一般客からしたら「マジシャン」という大きな括りでイメージしている
以上、「当然できるだろう」と思っても仕方がないことなのです。

アメリカなどでは、機内での処置に故意や重大な過失がない限り、医師の
法的責任は問わないと明文化されていますが、厚生労働省は「民法に同じ
趣旨の規定があり、新たな法律は必要ない」(医事課)との見解を出しているに
過ぎないので、はっきりとした免責の法整備が整って明文化されない限り、
救命救急医療に従事した経験がある医師以外は、積極的に手を挙げる医師
は少ないでしょうね。

いくらアナウンスをしても誰も手を挙げない時は、引っ掛けで「お医者様の
中でお客様はいませんか?」とやれば、誰かがつい挙げてしまうかも。

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