緊急アナウンス
GW真っ只中ですが、久しぶりに行動制限なしのGWですから各地混雑して
いるようですね。
「急病の方がいます。お客様の中で医師の方がいたらお知らせください」…
飛行機内で、このような緊急アナウンスが流れるドラマのような場面に実際
に遭遇したことはありますか?
私は過去3回遭遇しています。(国際線と国内線で各1回、新幹線で1回)
JALによると機内で急病人が発生して「ドクターコール」が発生する事案は年間
約250件程度あり、このうち緊急を要するため航空機を引き返す事案も30件
前後あるようです。
症状としては失神や失神寸前の状態が37%、呼吸器の異常が12%、悪心や
嘔吐が10%などとなっているようですが、旅行で気分が高揚して多量に飲酒
をしたことが原因である場合も多いのではないかと思います。
実際に海外のマジックコンベンションからの帰路、後輩マジシャンが泥酔して
機内の通路に寝転がって顰蹙を買っているのを目撃したことがありました。
緊急事態に備えて、乗客として搭乗する医師に事前に登録してもらう制度を
大手の航空会社が始めたとの新聞記事を読んだことがありました…かなり前
の記事でしたが、あれってどうなったんでしょうね?
医師が登録すればカードに記録されて乗務員に伝わり、機内から専門医に
問い合わせができる体制を整えた他、医療行為を巡って患者側と事後の訴訟
になった場合に備えて保険にも加入することを条件にしても、医師は登録に
消極的である…という内容の記事でした。
そりゃそうでしょう…登録してしまうと、せっかくのプライベートな旅行で
あっても重責を感じて飲酒どころかリラックスすらできないでしょうからね。
一旦関わると人道的な圧もあって、空港で待機している救急車に同乗して、
搬送先の病院の医師に引き継ぎをしなければならない場合もあって、そうな
ると自分の旅行の日程も台無しになり、それに伴う諸費用も手出しをしなけ
ればならなくなったらどうしてくれるんだよって話ですよ。
おまけに医療行為の報酬に関しての明示もなかったと思いますが、この辺り
は医師個人の性善説に頼るということでしょうかね。
医師の側からしたら、学生時代から医師国家試験に備えて「全ての科」を勉強
して合格はしたものの、いざ医師になれば特定の専門科に従事して専門外の
疾患を診る機会はほとんどないので、機内で呼ばれた際に「専門外だから」と
いう理由で断りにくい上に「自分の知識で対応できるかどうか分からない」、
「法的責任を問われる恐れがある」との理由で尻込みして事前登録に消極的に
なるのは当然のことだと思いますよ。
僻地が医師募集をしてもなかなか赴任者が現れないのも似たような理由なの
でしょう。
一般人は「医師」という大きな括りでイメージしているので、どんな疾患でも
診てもらえると思いがちですが、必ずしもそうではありません。
マジシャンに例えるのも変ですが、カードやコインしか演じないクロース
アップマジシャンが「マジシャンなら鳩出してよ」とか「美女浮かしてよ」と
いきなりリクエストされるようなものです。
これも一般客からしたら「マジシャン」という大きな括りでイメージしている
以上、「当然できるだろう」と思っても仕方がないことなのです。
アメリカなどでは、機内での処置に故意や重大な過失がない限り、医師の
法的責任は問わないと明文化されていますが、厚生労働省は「民法に同じ
趣旨の規定があり、新たな法律は必要ない」(医事課)との見解を出しているに
過ぎないので、はっきりとした免責の法整備が整って明文化されない限り、
救命救急医療に従事した経験がある医師以外は、積極的に手を挙げる医師
は少ないでしょうね。
いくらアナウンスをしても誰も手を挙げない時は、引っ掛けで「お医者様の
中でお客様はいませんか?」とやれば、誰かがつい挙げてしまうかも。
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