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2023年3月

シン・二刀流

映画「シン・仮面ライダー」を観てきました。
せっかくなので4DXで観ましたよ。(いやあ、座席が揺れた揺れた)
世代的にドンピシャで、幼少時代に集めた仮面ライダーカードを今でも保管
している私には十分楽しめました。

楽しんだと言えば、ここしばらく世間はWBC一色でしたが、それほど野球
に興味がない私でも今回のWBCは楽しめました。
侍JAPANの皆さん、優勝おめでとうございました。
サッカーやラグビーのワールドカップもそうですが、にわかファンとしても
ナショナリズムを掻き立てられますね。
初めてナショナリズムを体感したのは、若かりし頃、海外のコンベンション
のコンテストに挑戦した時でした。
特に交流したこともない日本人マジシャンがコンテストに登場した時、いつ
の間にか応援している自分に気が付きましたね。

大谷翔平の活躍ですっかりお馴染みとなった「二刀流」ですが、今回のWBCで
私が特に印象深かったのは、残念ながら予選リーグで敗退したものの、アマ
チュアリーグの選手が主体であったことが話題になったチェコ代表の活躍。
チェコでは野球はメジャースポーツではなく(野球人口はたったの7000人)、
野球専業で生活していくのは困難なため、代表選手のほぼ全員が他にも仕事
を持つ社会人か学生なのです。

選手の仕事をちょっと調べただけでも、金融アナリスト、高校の地理教師、
消防士、セールスマン、不動産会社勤務、そして代表監督は神経科医…等々
まさに多種多様。
当コラムで過去何度も「複業」や「マルチワーカー」について書いてきた私と
しては、大いに親近感が湧くところです。
「シン・二刀流」…つまり真の意味での二刀流を語る対象としては、一分野の
中だけではなく、「全く関係のない複数の仕事」を同時に成立させているチェコ
代表のような立場こそ相応しいと思うのです。

例えば開業医がその看板に「内科・小児科」と標榜している場合に、わざわざ
二刀流とまでは言わないでしょう。
医師と弁護士のダブルライセンスを持ち(こんな化け物が国内に数十人存在し
ます)、診療もすれば法廷にも立つなどの仕事として稼働しているのであれば、
れっきとした二刀流と言えるでしょう。

そもそも「◯刀流」という曖昧模糊とした単語に厳格な定義付けなどできるとは
思いませんが、マジシャンの分類として、「専業プロ」だの「セミプロ」だの
「パートタイムプロ」だの「アマチュア」だのと、かつては極狭のマジック村の
中にヒエラルキーを持ち込んで、論難を仕掛けるマジシャンもいましたが、
コロナ禍以降はすっかり鳴りを潜めてしまった感があります。
特に資格も必要なく「自称」がまかり通る業界で、根拠もなく専業プロをヒエ
ラルキーの頂点だとする人達が、自由で多様な生き方をするマルチワーカー
を「あれはプロではない」と一方的に否定する事例もありました。

しかしながら、専業プロを自認する人からして、営業出演の収入のみで生活
するのが心もとないのか、指導や道具の販売、人目につかないアルバイト等、
何刀流もこなしながら生きているのがこの業界の実情なのです。

クロースアップとステージができれば二刀流?
営業出演しながらマジックバー経営は二刀流?
営業出演&バー経営&マジックショップ経営は三刀流?

…どうでもよくないですか?

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リユースの時代

春は引越しシーズンなので、家電や家具を処分する人が多く、買い取り業者
の大忙しの様子がニュースで流れていました。
処分するだけでも費用がかかる物を、たとえ安くても買い取ってもらえれば
有り難いことですし、誰かがリユースしてくれると思えば、手放す罪悪感も
薄れるというものです。

近年ではメーカー自体が自社商品の中古品販売に乗り出しています。
買い取った中古品を修理したり真贋(しんがん)保証をして再販売しています。
COACHは自社の中古品を回収し、修繕して「COACH Re Loved」という事業
を始めました。
顧客が持ち込む鞄を査定して引き取り、自社サイトで再販売したり、新品
を購入する際に査定金額分の割引を受けられるというシステムです。

セイコーグループも銀座の和光本店で中古時計の再販売を始めたようです。
プレミアが付いた自社製品をオーバーホールして証明書を付け、ブランドの
価値を損なわない価格水準で販売しています。

自社による中古時計の販売は以前からフランクミュラーが「正規認定中古時計」
(Premium Approved Watch)として実施しており、私も利用したことが
あります。
特に生産終了モデルやレアモデルを探しているなら、サイトを頻繁にチェック
していると掘り出し物を見つけることができます。

従来、メーカーやハイブランドは、新品の売れ行きを妨げかねないという
理由から、中古品の販売には積極的ではなかった印象がありますが、市場の
成長力は無視できない上に、放置すれば偽物が出回るリスクもありますから
リユース時代に合致したビジネスモデルではないでしょうか。

さらに売り切り型から脱却して、販売後も顧客との接点を維持できるという
利点もあると思います。
時計でもクルマでもハイブランドであればあるほど、顧客とその担当者との
密接な人間関係の構築こそが、その後のアフターサービスにおける信頼感を
醸成し、将来の売り上げを大きく左右することになるのだと思います。

何を買いたいかも重要ですが、あの人から買いたいと思われることの方が
さらに重要なのです。
マジシャンも、あの人のマジックが見たい、さらにあのマジシャンに会い
たいと思わせた方が勝機がありますからね。

ところで、近い将来に必ず訪れる私の膨大なマジック道具のリユース問題
だけは、どうしたものやらです。(クセの強い道具が多いが故に同業者でも
扱いづらい上に、一般人にとっては粗大ゴミ同然ですからね)

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巨人の肩の上に立つ

私達は日々他人や環境の影響を受けながら生活、そして成長しています。
最も身近で影響を受ける機会は、やはり「読書」ではないでしょうか。
読書は様々な知見を与えてくれるし、人間としての深みを醸成する上で欠
かせない栄養素だと思います。

本のまとめ買いを目的に大きな書店に出かけることもありますが、最近は
福岡空港や羽田空港内の書店に立ち寄ることが多く、フライトまでの短い
時間でも良き本に出会うために散策しています。
新聞広告で見た本をネットで注文することもありますが、類似本ばかりが
リコメンドされるより、書店で思いがけない本と出会う方が楽しいですね。

ところで最近、こんな記事を見かけました。
本を読まない学生が増えている…全国大学生活協同組合連合会が1万1千人
に実施した学生生活実態調査によると、50.5%の学生が1日の読書時間を
0分と答えたというのです。
驚くべきは読書をしない理由の一つが「誰かに影響を受けたくないから」…
本当にそう思っているのか、尖ってるだけなのかは分かりませんが、損を
しているなあと思わざる得ません。

マジシャンにも当てはまると思うのですが、1人に影響を受けたのならば
コピーかもしれませんが、10人から影響を受けたなら、それはもうその人
自身に昇華されているはずですから。

ニュートンが書いた手紙の一節で有名になった「巨人の肩の上に立つ」との
言葉があるように、新しい発見ができるのは先人が積み重ねた発見がある
からなのですよ。
貴重な時間をスキップして肩に立たせてもらうことで、その景色を見ること
ができるのです。

誰の影響を受けたのか、誰のお世話になって誰からそれを習ったのか…
それらの史実を語ることもなく、さらには、誰かに弟子入りしていた事実
すらひた隠しにするマジシャン達は、ネタ元となったマジシャンの存在が
次第に疎ましくなり、弟子や後輩がネタ元と知り合って己の虚構が晒され
ることを極度に恐れます。
残念ながら、そんな姑息なマジシャンが少なくないのが現実です。
私自身はそれらを反面教師として、自宅に訪ねてきた後輩達には自分が
知る限りの史実を、ある時は文献や映像で証明しながら克明に伝える
ようにしています。

先月になりますが、私がリスペクトする「レジェンドマジシャン四天王」の
うちのお二人…ジョニー広瀬さん、プロフェッサーサコーさんと私の3人
で食事会を催しました。(顔ぶれが濃過ぎましたね)
かつてお二人が頻繁に出演されていた番組「花王名人劇場」の裏話を中心に、
史実の確認や昔話に花が咲きましたが、事実は小説よりも奇なり…幾つか
の疑問が氷解して点と点が繋がりました。
そして今でも意欲的に道具作りに勤しむサコーさんの新作ネタも頂戴しま
した。
様々な思い出話を拝聴しましたが、移動の車中でジョニーさんがボソッと
「35年前、マリック主催のコンテストで初めてZUMAのステージを観た時に、
こんな学生がおったんか…と正直驚いた」と言われた時は、たとえそれが
社交辞令だったとしても素直に嬉しかったですね。

中高生の頃から憧れて、繰り返しビデオを観てきた大先輩方と、こうして
食事会ができることは感慨深いものがあるし、若き日にこの方々の大きな
肩に立たせてもらったからこそ今の自分があるのだなあと思うと、感謝の
言葉しかありません。

久しぶりに気づかれないようにそろりと立ってみましたが、お二人の肩の
安定感は健在でした。

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気になる腕時計

腕時計蒐集家の中には、本人はそれほど気に入ってなくても将来の値上がり
を期待しての投資目的で選ぶ人もいれば、リセール価格など気にせずに自分
のセンスの発露として選ぶ人に分かれると思いますが、私の場合は明らかに
後者です。

私にとっての腕時計の意味合いは、第一義としては「ファッションアイテム」
なので、その日の出かける場所と目的と装いに合わせる一本を選ぶ時が充実
した時間です。
あえて特定のブランドに決めているわけではありませんが、自分の琴線に
触れるデザインが多いのがフランクミュラーだったので、結果的に所有数が
多いわけです。

他にはピエールクンツ、ドゥラクール、グリソゴノ、ジラールペルゴ、グラフ、
オーデマピゲ、ロジェデュブイ、リシャールミル…ブランドに関係なく琴線に
触れたデザインの腕時計を選んできました。

ただ誰もが知るメジャーブランドであるにも関わらず、ロレックスとオメガ
は一度も所有したことがありません。
人気のブランドが故にリセール価格はいいのでしょうが、あえて王道を避け
たい天邪鬼な私は他人と被るのが嫌だし、ブランドイメージが武骨なので、
あまり魅力を感じなかったのが正直なところです。

ところが2月28日に発表されたオメガのこの一本にはそそられました…
シーマスターダイバー300Mのジェームス・ボンド60周年記念モデル

好みのネイビーに、裏側にはアイコニックな映画007のオープニングのデザ
インが施されているところがファンにはたまらないし、スペシャルモデルに
しては価格も良心的。(2千万超えのゴールドエディションは別ですが)
また専用ケースのカッコいいこと!
これを着けてトムフォードのスーツに身を包みアストンマーティンに乗り込
めば、ジェームス・ボンドの出来上がり…というおこがましい妄想が脳裏を
よぎります。(そもそもどこ行くんだよと一人ツッコミして終わり)

先日、実物を確認しようと福岡三越のオメガショップに立ち寄りましたが、
問い合わせは多いのに入荷日は未定で、限定品か否かも不明とのこと…
いずれにしても争奪戦は必至でしょうね。

もう一つのトピックス…香川漆芸×フランクミュラーのコラボレーション!

人間国宝の山下義人氏を含む香川漆芸の職人がフランクミュラーの文字盤
を製作しました。
6種類の腕時計それぞれが貴重な一点物で、フランクミュラーウォッチランド
東京において3月1日〜12日の期間限定で展示・販売されるようです。
この期間は私は東京にはいないので、実物を見れないのが残念です。
写真でもこれだけ鮮やかなので、実物はさぞかし美しいのでしょうねえ。

花粉で目がショボショボするこの時期、美しい腕時計で目の保養をする方が、
目薬よりも効きそうです。

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ウィンウィン

ウィンウィンとは経営学の用語で「取引をする双方に利益がある」という意味
で使われています。
英語では「win-win」と表記されることから、両者にメリットがある時に
使われるビジネス用語として頻繁に使われていますよね。

ちょっと思い出すと…私の知人がマンションを購入したばかりなのに転勤を
命じられて慌てている時、幸いにもそのエリアに住みたかった人がすぐに
見つかって、賃貸収入をローン返済に充てることができたという例もありま
したが、これもある意味ウィンウィンですよね。

私の身近なケースとしては、断捨離する予定の服を後輩が喜んで持って
帰ってくれたり、処分するだけでも費用がかかりそうなケージやキャリー
ケースを、必要としているマジシャンに引き取ってもらったりといった
ところでしょうか。

私に出演オファー(3月4日に関西某所で16時からの出演)があったのですが、
残念ながら、当日は夕方まで福岡での仕事が入っていたために断念。
クライアントにお断りのメールを送ったところ、代わりのマジシャンを紹介
してもらえませんかとのことだったので、この案件を誰にお願いしようかと
逡巡した結果、ふじいあきらにオファーをかけると快く引き受けてくれました。
当然のことながらクライアントにも喜んでもらえたし、彼も気持ち良くショー
やって稼げたし、私の面目も立ったし、まさにウィンウィンウィンの三方良し
の状態でした。
しかし、12人の観客でふじいあきらのショーかあ…贅沢だなあ。

その日の夜は私の予定も空いていたし、せっかく彼が関西まで来ていること
だし、出演終わりに新幹線で福岡まで足を伸ばしてもらって、中洲でクラブ
活動をすることに…。
そして3月4日はふじいあきらの誕生日だったので、クラブでも弟子のRintaro
の店「マジック セピアライン」でもちょっとした誕生日パーティーを開催。
店を使ってもらった弟子も…ウィン。
4軒はしごで朝までコース…お疲れ様でした。

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考え方は変わらない

最近のマジック業界の事象について、一言書こうと思いましたが、言いた
かったのは、ちょうど10年前に書いた記事の内容そのままでした。

「本当の動機は?」 (2013年2月)

「お客様を笑顔にしたい」、「お客様に夢を見せたい」などと宣うのは自由なの
ですが、まず「誰から見ても夢がありそうなマジシャンになってみせる」ことが
先決なのです。

他人を金儲けの駒のように扱いながら、己のどす黒い欲望を満たしたいだけ
なのに、人格者を気取って世間に溶け込むために、大上段に構えて「社会貢献」
などとほざく輩には虫酸が走ります。

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