今年一推しの本
どんな本に感銘を受けるのか…その時の読む側の置かれた立場や境遇や年齢
によって様々であろうし、書店を訪れた際も、共感したかったり悩みを解決
へ導いてくれそうなタイトルの本に手が伸びるのではないかと思います。
先日、「50代までにしておくべきこと」的な本を手にして、「あ、遅すぎた」と
気づいて棚に戻しました。(たぶん、やるべきことは済ませていると信じて
おります)
今年も多くの本を読了しましたが、現時点で今年一推しの本を紹介します。
・ 「限りある時間の使い方」 オリバー・バーグマン 著 (かんき出版)
私のブログを読んでくださっている方はお気づきのように、今年4月に還暦を
迎えた私は、残された時間を砂時計の砂に例えて、それがいかに貴重である
かを度々書いてきましたし、アストンマーティンDBXのPVにおいて、なぜ
このクルマを選んだのか…その理由の一つとしても語らせてもらいました。
この本のタイトルを見た時に、「おっ、タイムリーだな」とは思ったものの、
そんなこと他人に指南されなくてもとっくに理解しているし、自分なりに
ストイックな時間の使い方をしているという自負があったので、軽い気持ち
で読み進めていくと…「貴重な時間を無駄なく使っているのに、どこか満たさ
れていないのはなぜだろう」という、内に秘めた疑問が氷解しました。
まずこの本は「人生は4000週間しかない」というこれまでにはなかった単位
で、我々の寿命の短さをダイレクトに突きつけます。
また人間の意志の弱さ…例えば、毎月の収入から余った分だけ貯金しよう
とすることは困難で、一定額を先に貯金した残りで生活をしない限りお金
は貯まらないことを引き合いにして、これは時間に関しても同じで、先に
確保しないとどんどん他のことに時間を使ってしまうと指摘しています。
これはまさにその通りで、私自身、時間ができたらあのマジックの練習を
しようと思っている程度では重い腰は上がらないし、いつか観るつもりで
録画した映画の数々は、随分前からハードディスクに放置されています。
時間ができたら洗車しようと思っていたら、クルマは汚れたままです。
空いた時間にやるのではなく、まずはそれを最優先にしないと何も動かな
いし、達成できないのです。
昔はこの世に存在しなかった家電類…例えば洗濯機や掃除機は、それらが
なかった頃なら丸一日かかっていた面倒な家事を短時間で済ませてくれる
ので、その間はのんびりと過ごせるはずなのですが、現代人は休むどころ
か、それで得た新たな時間で何かを成し遂げようとして、結局は達成でき
ずにストレスを溜めています。
やりたいリストの項目が多ければ多いほど、「一日は24時間」という太古の
昔から変わらない原則の中では絶対に解決できません。
本書では、人生の時間は限られていること、さらにその中の限られた範囲
しかコントロールできないと論じると同時に、私たちそれぞれの人生観や
価値観とは何か…何に時間を費やすべきかを投げかけています。
今年は、私自身にも大きな影響を与えてくれた方々が鬼籍に入られたので、
特にその想いを強くしているところです。
最後に…157ページの、時間の使い方を改めて考えさせられた小話を…
メキシコの漁師が一日に2〜3時間しか働かず、太陽の下でワインを飲んだ
り友達と楽器を演奏したりして過ごしている。それを見て愕然としたアメリカ
のビジネスマンは漁師に勝手なアドバイスをする。「もっとたくさん働きなさい、
そうすれば利益で大きな漁船をたくさん買って、他人を雇って漁をさせ、
何百万ドルも稼いで、さっさと引退することができる」
それを聞いた漁師は「引退して何をするっていうんだ?」と尋ねる。
ビジネスマンは答えて言う。「太陽の下でワインを飲んだり、友達と楽器を
演奏したりできるじゃないか」
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