スキミング戦略 6
前回からの続きです…
現在の市場を俯瞰した時に、この停滞した社会においては、リーズナブルな
マジシャンほど忙しいのでしょうか?…生活必需品ではなく嗜好品に近いと
も言えるマジックショーの場合は必ずしも当てはまりません。
世の中も幾分落ち着きを取り戻し、いわゆる営業出演も漸増しているようで
すが、あらゆる価格帯のマジシャンの仕事量が、コロナ禍以前に戻ったとは
まだ言えない状況ですし、第8波流行の兆しもあって予断を許しません。
また現在の日本経済はインフレが進行し、収入は増えないのに物価が上がる
というスタグフレーションに陥り、さらに歴史的な円安が追い打ちをかけて
います。
しかしどんな時代でも、景気に左右されない岩盤のような富裕層は一定数い
るもので、それが証拠に高級車や高級腕時計、宝飾品、絵画が売れまくって
います。
最近の日本経済新聞に「百貨店外商、40代以下に的」の見出しで主要な百貨店
が若い富裕層を取り込むことに注力しているとの記事が載っていました。
もともと外商は武家屋敷を回って注文を聞いた江戸時代の呉服屋にルーツが
あり、専任販売員が顧客宅まで通って、要望に手厚く応じるシステムです。
私はスキミング戦略の一環として、外商の顧客を対象としたマジックショーを
幾度となくやってきました。
その客層は一つの百貨店で概ね年間に一千万円以上の買い物をする人達で
すが、確かに近年は若い層が増えている印象でした。
それを裏付けるように記事によると、特に消費意欲の伸びが著しいのが30代
から40代の比較的若い層で、伊勢丹新宿本店の外商顧客のうち、44歳以下
の合計購入額はコロナ前の19年度比で5.4倍に増えたそうです。
実は驚くべきことに、ロールスロイスの購入者も40代が最も多いのです。
そして夫婦揃って高所得のパワーカップルが、タワーマンションを購入してい
ます。
ニューリッチとでも言うのでしょうか、この比較的若い富裕層が日本の経済
を回しているのです。
巷間、「失われた30年」と云われるように、年収水準が30年に渡って横ばいの
の日本は、中間層の消費力がほとんど成長していないわけですが、富裕層に
目を転じると状況は違っていて、仏コンサルティング会社キャップジェミニに
よると、日本で資産を100万ドル(約1億5000万円)以上保有する富裕層は
365万人で、米国に次いで2位で、3位にも2倍以上の差をつけています。
実はそれだけの富裕層がこの日本には存在しているのですが、野村総合研究所
では、日本の富裕層向けにサービスを提供するシステムやサービス(エンタメを
含めて)がまだまだ足りておらず、需給バランスのズレが生じているという
ことです。
富裕層の属性も多様化して、従来型の商品を入手するだけでは需要を満たせ
なくなり、自分達だけで「特別なものを体験する」という富裕層向けのコト消費
が必要となると言われています。
こんな千載一遇のチャンスに、スキミング戦略を採って積極的に富裕層にアプ
ローチするマジシャンがほとんど見当たらないのは勿体無いことなのです。
次回7へ続く…
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