スキミング戦略 番外編
「スキミング戦略 4」においてクルーズショーについて書きましたが、その直後
にタイムリーかつ少しショックなニュースが飛び込んできました。
豪華客船「ぱしふぃっくびいなす」の事業終了、会社解散の報…
運航する日本クルーズ客船によると、今年12月27日〜2023年1月4日の
沖縄や奄美を巡るニューイヤークルーズが最終運航になるとのこと。
「ぱしふぃっくびいなす」は1998年の就航以来、多くのマジシャンが乗船し、
各々に様々な思い出があることだと思います。
数百人収容のメインホールや、天井の低いナイトクラブのこじんまりと
したステージで演じた思い出が走馬灯のように蘇るマジシャンも多いので
はないでしょうか。
私が頻繁に乗船していたのは2000年代で、国内クルーズはもちろん、上海
やウラジオストクに寄港した海外クルーズも懐かしく思い出されます。
特にナイトクラブでのバードアクトで、オオバタンやコンゴウインコが客席
全体を低空で旋回飛行する様は目に焼き付いています。
事業終了の原因としては、やはりコロナ禍において2年間の運休を余儀なく
されて売り上げが立たなかったダメージは大きく、今年3月の運航再開後も
需要回復は難しかったようです。
日本のクルーズ客船はシニア層の顧客の強い需要に支えられているのですが、
「コロナが完全に収束するまで我慢しよう」という慎重かつ真面目な日本人の
気質というのも需要回復の遅れの理由と言えるでしょう。
なにしろ政府からは「原則屋外ではマスク無しでもOK」との通達があるのに、
外国人観光客が驚くほどにマスクをしている日本人が多いという事象は、
やはり同調圧力に弱い国民性が垣間見えると言ってもいいでしょうね。
さらに他のクルーズでも言えることですが、乗船前のPCR検査の手間や、
検査のために前乗りした客の宿泊費も大きな負担となっていたであろうし、
万が一、航行中に船内でクラスターが発生した時に、寄港地を所管する
自治体から着岸を拒否されて洋上で漂流せざる得ない懸念があることも
要因だったようです。
やはりコロナ蔓延初期に「ダイヤモンドプリンセス号」が着岸してその対応
に右往左往した横浜市のネガティブイメージが払拭されていないのでは
ないでしょうか。
先日、「にっぽん丸」に乗船した後輩マジシャンのショーの映像を見せてもら
いましたが、ドルフィンホールのステージと客席の境界に大きなアクリル板
がずらりと並んでおり、まるで水槽の熱帯魚を鑑賞しているようでした。
照明の反射で客席から見づらくならないように考慮して、斜めに立てては
いるものの、そのせいで演者からは客席が全く見えない状況になっている
とか…。
さらに客をステージに上げる際には、ソーシャルディスタンスを徹底
するために、客をステージ上の決められたサークル内(野球のネクスト
バッターズサークルのような)に立たせて、一定の距離を保つのがルールと
なっているそうです。
つくづくやりづらい環境になりましたが、そんな手枷足枷の状態でも努力
をした結果、パフォーマンスの評判や船内での立ち振る舞いの高評価を得て、
それを誇示したところで、貴重な仕事場そのものが沈んでしまっては元も
子もありません。
これからコロナの第8波の流行も懸念される現在、我々エンタメは不沈艦
となるための戦略を立てることが肝要かと思います。
次回6へ続く…
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