スキミング戦略 7
前回からの続きです…
私自身、若手の頃は生活のために、あらゆる環境での仕事のオファー受けて
きましたが、ある考えからお祭りやショッピングセンター等の不特定多数の
観客が無料で観覧できる現場は極力避けるようになりました。
(その理由は2021年5月の「マジックと愛車遍歴番外編2」で詳しく書きました)
そしてスキミング戦略を基にした戦術を立て、自分なりにステータスを向上
させるために、かつ自己実現のために一瀉千里に駆け抜けてきたつもりです。
しかし、どこに到達すればゴールなのか…偉そうなことを書いておきながら、
現実には自己評価すら曖昧模糊としているので、方位磁石のないこの業界で、
自分が今現在どのポジションに立っているのかは定かではありません。
「ビジネスとしてのマジック」に主眼を置けば「本流」のつもりではいますが、
マジック界という特殊な村社会では「傍流」と見られているかもしれません。
そもそもスキミング戦略に否定的で、中にはルサンチマンの本領を発揮する
人も一定数存在します。
逆に興味のあるマジシャンも一定数おられるでしょうから、その方々のため
に自分の考えを一つ吐露すれば、マジックビジネスにおけるスキミング戦略
は一朝一夕で成就するものでもなければ「このマジックをこのスタイルでこの
シチュエーションで演じればそれでOK」という最大公約数的な模範解答も
ありません。
ただはっきりしているのは、人生を左右するあらゆる場面で当てはまること
ですが、「戦略のミスは戦術ではカバーできない」ということ。
身近な例として、マジシャンが陥穽にはまりがちな事象…とにかく仲間うち
(ニッチ市場)で認められたくて、主戦場をそこに設定してしまう(戦略)と、どれ
だけ凄いテクニックを誇示しよう(戦術)が、経済的にはなかなか機能しない
ために、大した対価は得られないということ。
通常、ニッチ市場を狙うのであれば、そこにはビジネスとしての大きな見返
りの確信があればこそなのですが、そもそもマジック界自体がニッチなのに、
さらに自己満足に等しいニッチな部分には、それを望むべくもありません。
ところで、マジシャン同士が見せ合うと、見せてくれた相手に同意を得る
ことも仁義を切ることもなく、「見せてくれた」あるいは「見破った」という事実
が即「教えてくれたのだ」とか「このまま演じていいのだ」(ギャグを含めて)
という勝手な解釈に脳内で都合良く変換されることは異常だと思います。
(お気を確かに!)
閑話休題…
スキミング戦略のスタートは、まず業界の相場観に流されずに「ギャラを払う
側から見た時に、自分のショーはいくらが適正価格なのか」を考えることと、
「他のマジシャンと差別化できる売りとしての付加価値はあるのか」を確認
することです。
人間としての深みが醸成されないまま、パクリのジョークと凡庸なマジック
ばかりを演じてブランディングもできていない状態では、ギャラ交渉の際の
説得力に欠けることは言うまでもありません。
また「有名マジシャンのアレと同じことができます!」と売り込むのは、「売り」
ではなく「安売り」というレッテルを自ら貼った病的なほど下品なセールス
トークです。
(おだいじに!)
高価格帯を狙うスキミング戦略、低価格帯を狙うペネトレイティング戦略…
どちらのビジネスモデルを採るのかで生き様が投影されるのですが、どちら
でもない道…例えば、業界の相場に合わせて「クロースアップマジックから
イリュージョンまでの幅広いレパートリーで、あらゆる世代に夢と感動を
お届けします」…という中庸が一番無難なのかもしれません。
それも一つの生き様ではありますが…「記憶に残る幕の内弁当」はありません
から。
次回8(最終回)へ続く…
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