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ファッションと自己表現 2

前回からの続きです…

ご存知の方もいるとは思いますが、40代半ばまでの私は、ヘアスタイルは
オールバックで、黒系のスーツを纏って強面のキャラクターで仕事をしてい
ました。(その筋の人にも見えるからか、NHKでふじいあきらと共演した際
には、彼から業界の「若頭」と紹介されたほどです)
長年銀座を主戦場にしていたせいか、酔客から絡まれないように、あるいは
舐められないように、そしてステージではイリュージョンやインパクトの強い
大型鳥達の存在感に負けないようにという戦闘モードが常にON(スーパー
サイヤ人状態)になっていたのだろうと回顧しています。

17年も働いた銀座からの撤退後に、見かけをソフトにキャラ変しようにも
最初はどこから手をつけていいのかも分からず、流行りの男性ファッション
誌等で随分勉強したものですが、やはり実際の売り場でトレンドの服を見て
触って、スタッフから様々なアドバイスをもらうのが一番の勉強になります。

ブティックのスタッフに服の用途を相談すれば、親身にコーディネートを
提案してくれるし、その上で自分が何者であるかを考え、その限界を理解
して理想と現実のギャップと向き合えば、被服費の無駄遣いはしなくて済む
はずです。(還暦を迎えた現在は、小綺麗なジジイであることを心掛けて
います)
さらに自分のキャラクターを理解してくれた上でアドバイスをくれるセンス
の良いスタッフが担当になれば心強いものです。(ハットを被るようになった
のも「似合うと思いますからハットデビューしましょうよ」というスタッフ
からのアドバイスによるものでした)

服はネットで買う人も増えていますが、その結果のリコメンドでは自分で
理解している嗜好の範疇を出ないので、視野が狭くなってしまいます。
本もそうですが、類似の本のリコメンドよりはリアルな書店で思いがけず
出会う本の方が、人生に彩りを添えることに貢献します。
特にハイブランドの服や腕時計ともなれば、造詣の深いスタッフとの雑談
も含めて五感で体感できるコミュニケーションもできることを考えると、
圧倒的にリアルに軍配が上がります。

自分の担当のスタッフと一緒に選んだ服や腕時計を、ブティックを出る際
にそのブランドの紙袋で手渡される…実はそれも大切な思い出のスタート
になると同時に、正規店で買ったという満足感と自信も得られるのです。
同じ物をネットで見つけて安く買えたとしても、その服や腕時計に何の
思い入れもない宅配便のおじさんに手渡された瞬間から始まる歴史には
高揚感もないし、全くの別物です。(正規店で購入しない人は、どこで
購入したのか、担当は誰なのかを尋ねられることがストレスになります)

リアル店舗で実物を確認してネットで最安値を探すのは、家電くらいに
しておきましょう。

やはり、リアル店舗を回遊して思いがけない出会いをする経験が大切だと
感じるのは、自己表現のために本当に大切なものは無駄だと思えるものの
中に隠れていることが多いからです。
すっかり「おうち時間」という言葉も馴染んでしまいましたが、あえて自己
表現をするために気分が上がる服を着て出かけて、街並みの彩度が上がる
感覚を味わうことは、最高の気分転換と最良のデトックスになるような
気がします。
そういう意味でも「無駄」は無駄にならないのです。

なんとなく着る服やなんとなく着ける腕時計には、なんとなく以上の価値
は見出せないはずです。

なんとなく演じているマジックは…言わずもがなです。

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