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プロ・アマの区別って?

毎年年末には「プロ野球戦力外通告」という番組が放送されて、そこでは
家族の人生をも巻き込んだ悲喜こもごものドラマが展開されます。

プロ野球選手のおよそ8割は主体的に引退を決めるのではなく、所属する
球団に解雇され、他に契約してくれるチームも見つからず、結果的に引退
を迫られています。
日本においてプロ野球選手を名乗るには、12球団のどこかと契約して所属
しなければなりません。
つまり「自称プロ野球選手」は存在しないわけです。
資格が必要な職業であれば、無資格で「自称◯◯」として対価を受け取って
業務を行えば、法に抵触する可能性があるし、悪質な場合には逮捕される
こともあります。

翻ってマジシャンの場合、どこかの事務所に所属する義務やライセンスも
必要ないからか、いつの間にかプロ活動を始めていつの間にか消えていく
人も多く(業界への参入と退出が容易)、かなりお手軽で他の業界のプロとは
覚悟と悲壮感が違う、つまりプロ意識のレベルが違い過ぎると言っても
過言ではないでしょう。

一般人の中には、プロマジシャンになるには幾多のハードルがあり、選ば
れし者だけが狭き門を通るに違いないと信じて疑わない人が少なくありま
せん。(いつでも誰でもなれるのに…ああ、心苦しい)
以下のような質問をされたマジシャンも多いことでしょう…
「やはり手が器用でないとプロにはなれないんでしょ?」
「誰かに弟子入りするんですか?」
「専門学校があるのですか?」
「免許が必要なんですか?」
「タネや仕掛けは自分で考えるのですか?」
「特許があるのですか?」
…プロを名乗るのにあたってそんなものが必要ないからこそ、飲食店界隈
や路上で自称プロが増え続けるのです。

若手の頃はそもそも的な質問や失礼な質問もありました…
「マジシャンて食えるの?」
「昨夜テレビでやってたマジックのタネわかる? あんたできる?」
…マジシャンあるあるではないでしょうか。

過去にもマジシャンが「プロ・アマ論」を語りながら、その時々の自分の
立ち位置に都合の良い定義をする傾向がありました。
「出演ギャラ以外にマジックと関係ない収入を得ていればセミプロだ!」と
断言しておきながら、仕事がなくなると節操もなくネタ販売やレクチャー
に奔走しても、「これはプロの仕事だからセーフ」…とかね。
アルバイトで食いつないでいるお笑い芸人が職業を問われた際に「お笑い
芸人やってます」という返答を違和感なく受け入れているのに、なぜに
マジシャンだけが「専業プロ」の定義に拘るのでしょうか?

マジックバーのマスターってどんな立場なのでしょうか?
プロとしての営業出演には興味がなく、最初から飲食店をやることが夢
だったという人もいるでしょう…とはいえ、オファーがあれば店を閉めて
までオイシイ営業出演を優先する人も多いようですが…。
営業プロとしての仕事だけで生活が成り立つほどの出演オファーがない
ことを見越して飲食店を始めた事例(おそらくこれが最多でしょう)と、
飲食店を始めた自称アマが店でマジックを見せる事例…これらのどこに
違いがあるのでしょうか?
役所から営業許可証を交付された上で、確定申告等の書類上の職業も
社会的な認識も「飲食店経営者」ではないでしょうか?
対外的に標榜するプロかアマかは、結局は自己申告に過ぎないのですよ。

近年の私はあえてマルチワーカーを標榜していることもあって、もはや
プロだのアマだの、ましてやセミプロだのパートタイムプロだのと区別
するのは無意味ではないかとさえ思うようになりました。
お気軽に演じて自身が楽しむのがアマで、職業として真摯に向き合って
対価を得るのがプロという理想的な区別も現状では意味をなさないと
思います。
純粋にマジックを愛してやまない真摯なアマもいれば、マジック業界の
ステータスを貶めるだけのプライドのかけらもないプロもいますからね。

紅白出場クラスの歌手が、高級クラブのVIPルームのカラオケで、完全な
プライベートで熱唱しているのを何度も見かけたこともありますし…
もっとフレキシブルに考えて、一人の「マジシャンを名乗る者」が「対価を
得て演じる時はプロ」、「趣味で演じている時はアマ」でいいのかもしれま
せんよ。

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