マジシャンのプライド 2
前回からの続きです…
一流ホテルや劇場で演じてこそ映えるアクトを持っているとして、決して
ステータスが高いとは言い難い屋外のお祭りの舞台で、そのアクト指定の
オファーがあったとしたら、プライドのあるマジシャンとして受諾すべき
でしょうか?
角度や広さ等の物理的な問題やギャラなどの条件はクリアできているもの
として…そのような場所でやるのかやらないのかだけの問題としてです。
(シャンデリアの下か、盆提灯の下か…)
プライドが赦さず、一流の場所でしかやりたくない人は断るでしょうし、
逆にどんな場所でもやることがプライドだという人もいるでしょう。
またプライドなんて関係なく、ギャラさえ貰えばいつでも何処でもOKと
という現実的な人もいるでしょう。
明確な正解はないかもしれないし、どちらも正解かもしれません。
ただ私個人としては、チャニング・ポロックやシルバンが盆提灯の下に
立っている姿など想像したくはありません。
若い頃、あるパーティーの二次会に顔だけでも出して欲しいと言われて
行ったところ、拍手で迎えられてマジックをやらざる得ない空気が作られ
ていたことがありました…罠です。
期待して拍手した人達には罪はないので、不愉快さを隠して少しだけ演じ
ましたが、若い頃だから耐えられたものの、ある程度の年齢やそれなりの
立場になって嵌められるとしたら、プライドの傷つき方も深くなります。
このようなシチュエーションでパフォーマンスをやるのもやらないのも、
「プライドが赦さないから」で通用するでしょう。
これも正解はないかもしれないし、どちらも正解かもしれません。
ところで、昔から私が「不正解」だと感じている事象があります。
一部のプロですが、プロとしてのプライドを放棄して、資金力のあるアマ
にべったりと甘えている(飼い慣らされている)事象。
そのアマを本心ではパフォーマーとしては少しもリスペクトしていないの
に、その財布目当てでちやほやしておだてるプロがいるからこそ、アマが
プロを束ねて主導権を握るような事象が起こるのです。
そのアマがお金持ちではなく資金提供しなくても付き合っているのか?…
金の切れ目が縁の切れ目のような付き合い方をするプロは昔から存在して
います。
「最近のアマはプロを舐めている」と愚痴をこぼすプロがいますが、自分達が
そのようなアマを作り上げてきたのです。
資産家のアマにネタを買ってもらったり、レクチャーに呼ばれて宴席で
接待されて有難がっていれば、舐められて当然です。
かつて地方の温泉場で開催されるコンベンションの宴会では、アマチュア
マジッククラブの会長連中がプロを呼び捨てにして、プロ達がペコペコ
しながらビールを注いで回る醜悪な光景が繰り広げられていたものです。
若い頃、このような光景を見た私は「こりゃダメだ、バカバカしい」と自室
に戻って部屋飲みをしていました。
大御所や先輩プロのそんな姿を見た若手が、アマに頭が上がらなくなる
のは当然の帰結でしょう。
全てはプロのプライドの無さが生み出す事象なのです。
次回3に続く…
| 固定リンク
「マジック」カテゴリの記事
- 収益効率 7 [日用品と嗜好品](2023.11.28)
- 収益効率 6 [ブランディング](2023.11.23)
- 収益効率 5 [パクリ 後半](2023.11.17)
- 収益効率 4 [パクリ 前半](2023.11.13)
- 収益効率 3 [マニピュレーション](2023.11.09)
最近のコメント