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節目の誕生日

4月3日、節目の誕生日を迎えました…還暦です。

かつての社会では定年とされてきた年齢なわけですが、マジックを含めた
複数の仕事をこなすマルチワーカーとして歩む現在、いずれの仕事も自由業
として定年がないことは認識しています。
それが有利なのか不利なのか、得なのか損なのか…公務員や退職金を貰える
立場の人が羨ましいと感じるし、逆に生涯に渡って働ける職業の方が理想的
だと思うこともあるでしょう…他人の庭の芝生は青く見えるものです。

ただ、定年のない仕事は続けようと思えばダラダラと続けられるからこそ、
自身の限界や引き際を冷静に分析することが肝要でしょうね。
自動車免許の自主返納問題と似ている気がします。
何事も自らの限界を知らない存在は傲慢になりがちで、それは時として人を
傷つけ、世間に迷惑をかけることになるのです。

コロナ禍での2年以上、仕事としてのマジックと距離を置かざる得なかった
ことで、マジックに対する自分の想いも再認識しましたね。
久しぶりに若い頃のステージアクトの映像を観ると、頑張れば今でもやれる
のではないかと、未練がましくも身体が疼きます。
処分した道具や衣装も多いし、身体的なキレやコンプライアンスの面からも
再現は無理なのは分かっているはずなのに…。

努力は夢中には勝てないことも、思い出と戦っても勝てないことも重々理解
はしています。
感傷的に「マジックは私の人生そのもの」と優等生的な答えを言うほど大袈裟
なのもではありませんが、私の中に深く根付いた欲望と情熱の対象である
ことだけは間違いないようです。

節目の誕生日を迎えて、このご時世でもオファーをくださるクライアントの
方々に感謝しながら、少なくともその欲望と情熱の「種火」が消えることが
ないように精進しようとは思いますが、年齢や体力的な面を考慮して本格的
なステージショーやイリュージョンショーはフェードアウトすることにしま
した。
子供の運動会で頑張り過ぎて、転倒したり肉離れになるお父さんみたいには
なりたくありませんしね。
自身の体力の衰えはもちろん、ショーの相棒でもある鳥達も私と一緒に歳を
取ったし、イケイケだったショーにはピリオドを打って、こじんまりとした
上質なショーを構築して、スキミング戦略に特化することにしたのです。
すでに随分前から実践していることですが、イメージとしては、ボリューム
満点の定食屋から予約制の懐石料理店に商売替えする感じですかね。

振り返ると、若い頃に構想を練った人生設計…還暦までに「実現しておくこと」
「維持しておくこと」「体験しておくこと」「持っておくべきもの」の全てを達成
できたことには満足しています。
その代償として「手放したもの」「失ったもの」「諦めたこと」も、残念ですが
それなりにありました。

様々な偶然や巡り合わせ、紆余曲折が複雑に絡んだ結果の現在があるわけで、
欲に駆られて何かをやり直したり別の選択をしていたら、「現在の状況」には
辿り着いていなかった公算が大ですね。
今更過去に戻ってやり直したいと思わないということは、概ね充実した人生
だったということでしょう。
今後は無理をせずに、人生の砂時計の残量を注視しながら、いかにして今の
状況を維持していくか、贅沢を言えば、いかにしてQOLを高めていくかに
集中しようと思います。

近々には弟子や後輩マジシャン達が集って、還暦の宴を催してくれるという
ことなので、楽しみにしています。

さて、還暦の記念に「真っ赤な何か」を買いに出かけて決めたのは…
JIMMY CHOOの真っ赤なスニーカーでした。

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