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人様が決めること 2

前回からの続きです…

「アピールしない人は強い」というエピソードとして、現役時代のイチロー氏
が新天地への移籍会見で「これからも応援宜しくお願いします…とは絶対に
言いません」と話したことがありました。
応援は自分から頼み込むものではなく、黙っていても人が応援したくなる
存在であらねばならない、との決意表明だったのです。

「人様が決めること」と割り切るのは案外難しく、我々は周囲にどう見られて
いるかを気にしながら生活をしているのがむしろ普通でしょう。

マジシャンとしての私はというと、他人の人生を左右するほどの影響力も
責任感も無いのだから、利己主義だと思われようが徒党を組むことなく、
自分ができることに専念する…その結果、人が喜んでくれたり、さらには
感動してくれたらこんなに嬉しいことはない、という一貫したスタンスで
活動してきたつもりです。
この世に生を受けたからには、自分の人生は自分を楽しませるためにある
のだという考え方を中心軸にしています。
そんな私にオファーをするか否かは「人様が決めること」だし、イベントの
趣旨や予算や客層を吟味してそれを受諾するか否かは「私が決めること」…
それだけのことです。

ただ、「いい人」や「凄い人」と思われたいのは悲しいかな「人の性」…
そこが一部のマジシャンの盛ったプロフィールや実績アピール、さらには
コンプレックスに起因する受賞歴の詐称という形になって滲み出てくる
のでしょう。
興味を持たれるためにアピールし過ぎて、自らハードルを上げるどころか
墓穴まで掘ってしまっている人って多いと思います。
総じて稼いでいるマジシャンは、努力の過程を恩着せがましくアピール
することはしません。
セコいマジシャンはやたらと技術をひけらかして、チップやお酒が欲し
そうなアピールをします。

一部のマジックバーが路上マジックで呼び込みをすることはあっても、
名のある店が呼び込みをするなど寡聞にして知りません。
レストラン選びをする際に、美味しさアピールが過ぎる店は自演の胡散
臭さを感じるからこそ、食べログで「人様が決めた」評価を参考にする人
が多いのです。(最近は食べログも信用されておらず、インスタを参考に
する場合が多いようです)
そもそも人はアピールされ過ぎると「天の邪鬼」になりがちなのです。

一流ブランド店や高級時計店、高級車ディーラーの売り上げ成績が優秀な
スタッフは、商品の優位性や性能を必要以上にアピールすることはなく、
それを所有した後の人生がいかに充実して心豊かになるかを、リアルに
想像できるような接客をします。
そして提供する商品が高額であるほど、最終的にはお客様が決めること
であるとしっかり認識しています。
そしてここが重要です…ライバルのブランドやメーカーを決して貶したり
はしません。

全ては「人様が決めること」…と飄々として、ことさらにアピールしない
人やブランドが本当に強いことは、混沌とした世の中でこそ結果が示し
ています。

余談です…
中洲のクラブで飲んだ際、隣に座った入店して間もない若いホステスさん
から質問されました…「ちょっと耳にしたんですけど、お客様はマジシャン
なんですって? いつもはどこの路上でやってるんですか?」
「路上でやったことはなーい!」と強めにアピールしたことは言うまでもあり
ません。

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