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2021年11月

マルチワーカー (番外編)

過去何度も複業(副業ではなく複数の本業)をこなすマルチワーカーについて
書いてきました。

コロナ禍において大きなダメージを受けた業界としては、マジックを含む
エンタメ業界、飲食業界、旅行・観光業界が代表的なものとされていますが、
「週刊ダイヤモンド」に興味深い記事を見つけました。
それはテレワークの普及で通勤機会が減少したことでスーツが売れなくなり、
スーツ専門店が「脱スーツ」に全力を挙げている…という事象。

日本を代表するスーツ4社(青山商事、AOKI HD、コナカ、はるやまHD)の直近
の通期決算は営業赤字に転落しているものの、各社の事業内容を検証して
いくと、同じスーツ専門店であってもその苦境の度合いには格差が存在し、
「脱スーツ」の成否(つまり複業の成否)が企業の先行きを左右しつつあるの
です。

以下、記事の内容を要約すると…

業界1位の青山商事で堅調な成果を収めているのは実はフランチャイズの
事業群で、売り上げの10%を占める100円ショップ「ダイソー」のFCで、
同6%を占めるのが「焼肉きんぐ」のFCです。
スーツ専門店は郊外に立地している店舗も多いので、異業種企業と組んで
FCとして業態転換も可能であることは納得できます。

業界2位のAOKIは、売り上げ全体に占めるスーツの割合は4分の1程度。
AOKIでスーツよりも売り上げが大きいのは、オレンジ色の看板を目印に
する複合カフェ「快活CLUB」で、現在493店舗を展開して業界首位に君臨
し、スーツ事業の落ち込みを補って余りある状況を鑑みれば、先行して
「脱スーツ」に成功していると言えるでしょう。

上位2社はスーツの一本足打法に見切りをつけて第二の人生を歩み始めて
いるわけですが、下位2社は迷走しているようです。
コナカはレディースブランド「サマンサタバサ」の筆頭株主になったことが
完全に裏目に出たし、一本足打法を続けたはるやまは売り上げ不振の上に
親族経営にありがちなお家騒動の真っ最中で、回復の兆しが全く見られ
ない状況です。
先行きが厳しいスーツ市場で、ヒットも出ず、新規事業がうまくいかなけ
れば、業態転換してFC商売で生きていくか、淘汰されるしかないでしょう。

結局スーツ業界も冷静かつ迅速にマルチワークにシフトした会社が生き残
る可能性が高いという証左です。

翻ってマジック業界はどうでしょう。
一本足打法信奉者の「本物のマジシャンならマジック以外の収入を得るな、
自分はそうしてきたのだ」という浪花節的な武勇伝はもう通用しません。
それはまるでバブル期のスーツ専門店の論理そのものです。
純粋に「本物のマジシャン」であることに拘るならば、厳密に定義すれば、
レクチャーも道具の販売もバー経営もせずに、ショーのギャラのみで生き
ていく姿を見せるべきです。

マジック業界のみに身を置いていると視野が狭くなって、出演ギャラ以外
の収入を得ることもプロとして当然だと思いがちですが、他の業界のプロ
と比較すれば、その違いは歴然です。

現役のプロ野球選手は、空いている時間に有料の草野球教室を開催して、
自らバットやグローブを販売することはありません。
ゴルフのトーナメントプロは賞金で食べているのであって、地方の練習場
でレッスンプロのような真似はしませんし、アマチュアにゴルフセットを
売りつけたりしません。
売れている歌手は、素人を集めてカラオケ教室の先生はやりません。

自称プロマジシャンはマジックと少しでも関係があれば、自分がやって
いることはプロの業務としてセーフであると都合良く解釈しているのが
現実で、ある意味ではすでにマルチワーカーなのです。
マジシャンは営業出演以外にもマジックに関連した何らかの収入源を見出
すことが可能ですが、その優位性を棚に上げて、いつか売れることを夢見
てコンビニでアルバイトをしている若手お笑い芸人に「お笑い以外の仕事
をするな!」と面と向かって言えるでしょうか?

自戒を込めて言えば、年配になるほど「こうすべきだ、かくあるべきだ」など
と自身の成功体験を若手に押し付けてしまう傾向があります。
もう時代が違うのです…若くしてバブルのあぶく銭でイリュージョンが
やれたことも、緩いコンプライアンスのおかげで、いつでもどこでも
ファイヤーマジックや動物マジックができたことも、遠い過去の思い出
になるのです。

私以上の世代は一本足打法の「逃げ切り世代」として人生を全うできるかも
しれませんが、これからの世代はなかなかそうはいきません。
「アリとキリギリス」のキリギリス的な生き方をしてきた人も、今回の
コロナ禍で懲りたはずです。
しかしコロナが収束したとして、喉元過ぎれば…を繰り返すのであれば、
その楽観的な呪縛を払拭しない限り、必ず遭遇するであろう将来の災禍
を乗り越えることはできないでしょう。

安定してマジックを続けるために、またハイブリッドな人生の安全運転
のためにも、マルチワークはもはや「任意保険」なのです。

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新作時計ゲット!

2021年、ジラールペルゴとアストンマーティンによるパートナーシップ締結
によって誕生したロレアート クロノグラフ アストンマーティンエディション
を入手しました。
世界限定188本、日本国内ではわずか15本ほどの希少品です。

先日のアストンマーティンオーナーズツーリングにおいて、初めて現物を手首
にフィッティングしてなんとか入手したいと思っていたところ、パーティーで
私のショーを観てくださったジラールペルゴブランドディレクターのご厚意
と、アストンマーティンオーナーを優先するという忖度も作用したとは思いま
すが、予想外に早く入手することができました。

文字盤は「アストンマーティングリーン」として知られる優美なグリーン一色で
彩られて、21回も丹念に塗り重ねることで7層に仕上げられています。
自動車の要素は、高性能モデルに採用されているダイヤモンドキルティングや
クロスハッチング仕上げ、そして「AM」のロゴに使用された菱形を思わせる
パターンにも窺えます。

ベゼルの正面はサテン仕上げ、側面はポリッシュ仕上げ、同様にブレスレット
の両端はサテン仕上げ、中央はポリッシュ仕上げとメリハリが効いたデザイン
で、派手過ぎず地味過ぎずでTPOを選ばないために、ヘビロテは必至です。

時計好きの友人から、あっという間に3倍以上のプレミア価格で取引きされて
いるとの情報が入って、一瞬心がぐらつきましたが、大切に使っていくつもり
です。

11月末には重要な撮影があるので、この腕時計を着けて臨みたいと思います。
また状況が判明したらお知らせします。

モータージャーナリストの小川フミオ氏による先日のオーナーズツーリングの
レポートが公開されています…コチラ


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ASTON MARTIN ON TOUR 2021 in BEPPU

11月6〜7日、アストンマーティン福岡が主催した初の本格的なオーナーズ
ツーリングに参加しました。
コースは熊本から別府までの九州横断で、ミルクロード→大観峰→やまなみ
ハイウェイ→九重夢大吊橋を経由してのゴールは、ANAインターコンチネン
タル別府リゾート&スパ。

6日の朝に福岡を出発する時点では曇りだったものの、集合場所の熊本市内の
レストランに到着した頃には本降りの雨になってしまいました。
ここでランチとブリーフィング、この際に参加者全員にブリティシュグリーン
のレーシングジャケットが付与され、さらに全員の車両の両サイドに、この
イベントロゴの特製ステッカーを貼ってのスタートとなるために、参加者の
一体感が一層盛り上がります。
スタートして大観峰に着く頃には雨も止んだので、なんとか景色は堪能でき
ました。
このルートは約30年前にシボレールミナを運転して通りましたが、DBXの車窓
から久しぶりに見る壮大なパノラマは、また格別なものでした。

景色に劣らず、12台のアストンマーティンの車列はまた圧巻で、ショールーム
で見るのとは違い、走行している多くの実車を間近で見てエンジン音も聞こえ
てくるわけですから、その臨場感はこういう機会がないと味わえないですね。
当然のことながら、目の前にもバックミラーにも複数のアストンマーティンが
走る光景は非日常過ぎて、見慣れるまでに時間がかかりましたね。
途中2回の休憩と記念撮影の後、緊張しながらのワインディングと高速道路を
走り続けて、16時30分にホテルに到着。

チェックイン後は18時からディナー…ここでは車談義や時計談義がちらほらと
聞こえてきます。
20時からは場所をメインバーに移してのアフターパーティー…実はここで私の
クロースアップマジックショーを開催しました。
私のキャラなので仕方がありませんが、ついつい毒を吐いてしまうのが申し訳
ないほど、アストンマーティンのオーナーの方々は実に上品で素直で、まさに
今回のツーリングのように、乗り心地の良い車で颯爽と高速道路をかっ飛ばし
ているようなショーを演れました。
これは高級腕時計のオーナーズパーティーでも感じることがありますね。

7日は朝食後にホテルエントランスで記念撮影、今回は集合写真の他に個別に
自分の愛車とのツーショットを撮りました。
その後は予約制で、ヴァンテージロードスターとDBXの2車種の試乗会でした
が、ここは私は遠慮して、アストンマーティンとパートナーシップを締結した
老舗腕時計ブランドのジラールペルゴの展示ブースへ…新作のグリーン文字盤
の腕時計他数本を手首にフィッティングさせて、ニヤけておりました。
10時30分にホテルを出発、絶好のドライブ日和で大分自動車道を快調にとば
して帰途につきました。

さて、愛車DBXの走りに関してのレビューですが、私は自動車の専門家では
ないので、モータージャーナリストのように専門用語を用いた詳細な評価は
書けませんが、オーナーとしての率直な感想を…

「ひとりの職人が、ひとつのエンジンを組む」というAMG伝統の「手組み」の
ポリシーに則り、エンジンルームにはマイスターのサインを記したプレートが
輝いています。
試乗時でもそうだったのですが、走り始めでまず驚くのは、その4リッター
V8ツインターボエンジンの右足の動きに即応するトルク感です。
あれだけの巨体が何のストレスもなく、スッと動き始めます。
今回初めてワインディングと高速道路を走りましたが、どのような速度域で
あろうが、ドライバーの意思に忠実な、というかその意思そのものの動きが
シンクロするように車の挙動となるので、まさに車体の隅々までもが自分の
身体の一部なのではないかと錯覚するような一体感に包まれます。
過去に所有した車の中で最も巨大なのに、ダントツに運転しやすいのです。
そしてこの剛性感は、身を委ねる上での安心感や信頼感へと繋がり、本当に
どこまででも運転できるのではないかと思わせてくれます。

上品でありながらも厳ついとも言える独特の個性は音にも表れており、胸の
すくサウンドは快感で、モードを「GT」から「スピード」さらに「スピードプラス」
に切り替えると車高が下がり、エンジンの咆哮と同時に足元が引き締まって、
これはもう乗用車ではないのだと改めて知らしめてくれます。
その機敏さは紛れもなくスポーツカー、空間の広さと快適性はまさにSUV、
要するに、ちゃんとアストンマーティンDBXなのでした。

良いことばかり書きましたが、最後に苦言を…燃費悪いわ〜。

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