諦めるという美学
一般的に「諦める」ことはネガティブなことだと捉われがちです。
おそらく幼少期から「諦めるな」と鼓舞されて育てられた人ほど、そう感じる
のかも知れません。
私自身もどちらかというとそのように教育された方ですが、親の意に反して
多くのことを諦めてきました。
そもそも子供の頃は「夢を諦めるな」と励まされ、大人になってからは「いい歳
して、そんな夢諦めろ」と貶されるのですから、人のアドバイスなんて無責任
なものなのですよ。
まあ「夢」という曖昧模糊としたものが対象であるなら仕方がありませんが…。
私は諦めることは決して悪いことではないと確信しています。
「名誉ある撤退」と言い換えてもいいでしょう。
ただ諦める瞬間にちょっとした無念を噛み締める場合があるけれど…それは
単なる判断の結果に過ぎないのですから。
「大失敗」というのは、往々にして諦めなかったことが原因です。
ここで重要なのは「目標」を諦めるのではなく、目標に近づくための「手段」や
「方法」を諦めるという意味です。
「現実的な目標」のために「非現実的な夢」を諦めなければならないこともある
でしょう。
私自身、多くのものを諦めながら(削ぎ落としながら)、最終的には大きな果実を
手にしてきた自負心はあるし、「冷静になって諦める」という経験は、抽象的かつ
客観的な思考を育むことに繋がるはずです。
マジシャンとしての生き様を例にすれば、人によっては孤高の営業プロと
して圧倒的に稼ぐために、マジシャン仲間と徒党を組んだりマニアが集う
世界でちやほやされることを諦める(距離を置く)というのもあるでしょう。
マジックの手順を考える際に、最初は実現不可能な理想像を描いてスタート
すれば、その理想の手順に到達するためには、近道だと思った「ルート」や
「方法」を諦めなければならない場面に何度も遭遇するはずです。
その体験が無い人は、おそらく既製の売りネタを羅列しただけで、諦める
というのは商品が高くて手が出なかった時にしか感じないでしょう。
マジックの「手順」というものを履き違えてる人がいますが、ボーリング球
を出して、3本リングを演じて、テーブルを浮かすことは手順ではなくて
商品紹介ですから、諦めるという場面はほとんど無いはずです。
中国製のコピー道具が壊れたって?…自業自得だからさっさと諦めなさい!
若いうちに色々な手順を作って取捨選択をするセンスを磨き、何度も繰り
返し忸怩たる思いをすることが、将来の果実を手にする近道です。
マジックの手順を作ることは「諦め」の学びであると同時に、学びによって
辿り着いた諦めは、紛れも無い「美学」なのです。
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