マルチワーカー 2
前回からの続きです…
まず初めに…「好きなマジックで稼ぎたい」のと「好きなマジックだけをして
稼ぎたい」とは大違いです。
ファジーな立場で営業活動をこなす人が多いマジック界には、他の職業では
あまり馴染みがない「フルタイムプロ」とか「パートタイムプロ」とか、一般人
からすればプロなのかアマなのかはっきりしない表現を耳にします。
この場合のパートタイムプロは、まさにマルチワーカーの範疇でしょう。
専業プロで稼ぐことが困難となった時、心の底からマジックを愛して続けて
いきたいと思うのであれば、その「好きなマジックを続けるため」に他の仕事
で稼いでみせるという気概があってもいいのではないでしょうか?
立ち位置を明確にしているアマチュアマジシャンは、まさに趣味である好き
なマジックを続けるために、日々マジックとは関係のない仕事に打ち込んで
いるではありませんか。
それすらできないのであれば、その自称プロの「マジックの好きさ度合い」は
アマチュア以下だったということです。
その程度のことは認識していないと、マジックだけしかやりたくないなんて
一般社会からは怠惰な「甘え」にしか見えないのです。
甘えたマジシャン人生を続けるのであれば、実家も出ずに一生親のスネを
かじる、ヒモになると割り切って嫁さんに働いてもらう、マジック好きの
金持ちのスポンサーに頭を下げて腰巾着になる、飲み屋の道楽オーナーに
雇ってもらってオーナーと酔客に媚びを売る、大義名分を掲げたクラウド
ファンディング(おそらくリターンは期待できない)で金を集める、同業者
の迷惑を顧みずにタネ明かしを始める、コピー商品を販売する…
選択肢は多いようですが、果たしてそこにはプロとしての矜持はあるので
しょうか?
あるいは、アフターコロナでまたマジックブームが来ないかなあ…なんて
他力本願の淡い期待を抱いているのかも知れません。
巷間ゼロコロナにはならないであろうことが共通認識となりつつある現在
においては、ずっとウィズコロナとなることを覚悟すべきです。
プロが他の仕事を始めるとプロの顔ではなくなるという意見がありますが、
大いに同意できる部分はあります…確かに、長年に渡って芸一本で食べて
きた一級のプロの顔から滲み出る迫力やオーラは、一朝一夕で完成したり
安易に模倣できるものではありません。
その凛々しい顔を人生の晩年まで維持できるのであれば、それに越したこ
とはないでしょう。
しかし残念なことに、仕事が減って生活に窮した特に中高年プロの卑屈な
顔ほど醜悪なものもありません。
色褪せた己の芸を過大評価し、危機管理もせずに、その不甲斐なさを棚に
上げて、政府や世間に八つ当たりをしても何の解決にもならないでしょう。
プロマジシャンは、頑なにマジック専業で食べていかなくてはならない
のでしょうか?
ハイブリッド車のように、ガス欠になった時には電気や他の動力で走って
はいけないのでしょうか?
専業プロであることのプライドに拘泥する中高年は、今の若手と違って、
きっと過去にそれなりにオイシイ思いを謳歌してきたがために、忘れる
ことができないのでしょう…それは、くすぶり続ける自我なのです。
残酷なようですが、思い出と戦っても勝てないんですよ。
次回3へ続く…
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