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マルチワーカー 1

職業のあり方が主と副の2つだけという形にとどまらず、多くの仕事を並行
して手掛ける「マルチワーカー」が活躍する時代になっています。

私自身もここ10年以上の実践や経験から、数年前より「複業」(複数の本業
を持つこと)について何度も書いてきました。(以前にも書きましたが、現在は
マジックを含めて5つの収入源をなんとか確保しています)
マジシャンとして充分に稼いできたという自負はありますが、予想だにし
ない人生の紆余曲折や社会情勢の変化という波に翻弄される小舟のような
職業であることも経験してきたことから(忘れもしない1998年…通帳の残高
がほぼ底をついて焦りまくったことがあります)、昔から「複業」あるいは
「多業」の重要性を強く認識していました。

初めこそ、ギャラを下げるなどしてマジシャンのステータスを落とすこと
がないように、安定した収入源を増やすのが主目的だったのですが、実は
人間関係やスキル、社会に貢献する感覚など、お金以外にも多くの「資本」が
それぞれの仕事にひも付き始めるのが醍醐味にもなっていきました。
充てる時間や仕事の種類のバランスをとるのが重要ですが、マルチワーク
をうまく機能させた時のリスク分散の効果の大きさを、今回のコロナ禍に
おいて改めて実感しています。

日本経済の基盤である自動車産業においても、ガソリン車一辺倒からの
リスク分散が顕著になってきました。
2030年代には、全ての車がガソリン車からEVを主流とした新エネルギー
車に置き換わると言われています。(個人的に感じる言い方をすれば…車の
白物家電化でつまらなくなりそう)
ですから一部の車好きは、最後の生産になるであろうV8やV12エンジンを
搭載したモンスターカーに、今のうちに乗っておこうと焦っているのです。
(私もその一人ですが、例えると近い将来にウナギやマグロが食べられなく
なると言われて、慌てて食べたくなった感じですかね)

現在はハイブリッド車や水素自動車が注目されていますが、まさに過渡期
であり、車の動力源の複業化とも言えるのではないでしょうか。
動力がエンジンからモーターに置き換えられると、大手メーカーに供給
することで生きてきたエンジン専業の下請けは、業態転換をせざるえない
でしょう。
自動車産業の裾野は広大ですから、その影響は計り知れませんが、変化
することが決定事項として事前に周知されているのであれば、その衝撃に
対する策を練る時間はあるはずです。(突然の地震ではなく、台風の規模や
進路が予想できるわけですから)

時々こんな夢を見ます…大きな橋を渡っている時、背後から橋が崩落し始
めたので慌てて駆け出し、ギリギリで向こう岸に渡りきったところで目が
覚める…実際に時代やコンプライアンスから逃げ切っている世代で、その
自覚があるからこそ目覚めた時に安堵しているのでしょう。

私自身がマジシャンとしては時代遅れで、一旦壊れると修理費もかかるし、
燃費の悪いガソリンがぶ飲みの旧車であることの自覚もあるし、これまで
培って得意としてきた分野のマジックが廃れて、コンプライアンス上も演
じ辛くなっていることを肌で感じ始めた頃には、生き延びるために盤石の
体制を整えていたつもりです。
世の中の変化を敏感に読み取り、ハイブリッドなマジシャン人生を準備し
ておけば、たとえガス欠になったとしても電気や他の動力に切り替えて、
走り続けることができます。
専業プロというプライドに拘った挙句、ガス欠で路上で立ち往生するよう
な惨めな姿を晒すようなら本末転倒です。
世間の人は颯爽と走る姿を見ているのであって、動力源など見ていません。

人生の歩み方はもちろん、マジックの演目も、古典は古典として残しつつ
時代やコンプライアンスや客層に合わせてフレキシブルに切り替えられる
柔軟性が必要です。
時代はもの凄いスピードで変化しているのですから。

次回2へ続く…


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