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すっぱいぶどう 2

前回からの続きです…

他人がある趣味や嗜好品に夢中になっているのに、それに水を差すように、
自分が経験したことがない事象、あるいは所有したことがない嗜好品を頭
から否定することは、キツネ認定との誤解を招く元になります。

昔は物欲の塊だったのに断捨離をして、最小限の持ち物だけで暮らすミニ
マリストになった人の本を読んだことがあるのですが、その著者の場合は、
体型までミニマリストになるなど、本人の経験則に基づいていることから
説得力を感じた一方で、過去に物欲にまみれて暮らした形跡もなく、最初
から上から目線で優位性を語るミニマリストからは、本当は欲しくても買
える経済力がないために、そう振舞って精神のバランスをとるしかないの
かなと思わせるキツネ臭が、ほのかに漂ってしまうのです。

もちろん金で買えるものが全てではなく、金で買えない価値があるものも
無数にあることは論を俟ちません。
それを踏まえた上で、ある本の一文が印象に残っています…「金で買えない
ものの価値は、金で買えるたいていのものを手にして初めてわかる」

私は興味がないので、釣りやゴルフは嗜みませんが(喰わず嫌いであること
は自覚しているので、やればきっとハマるのでしょうね)、自分が興味がない
からという理由で、他人の趣味や嗜好を否定したことはありません。
自分がやったこともないことを簡単に結論づけたり否定することは、おこ
がましい上に説得力もないし、そもそも他人が好きでやっていることに口
を挟んで必要以上に否定すれば、実は興味があるくせにできないか、やる
余裕がないから嫉妬していると思われて、ルサンチマンのレッテルを貼ら
れるのがオチなんですよ。

一般的に嫉妬の対象となるのは、顔が思い浮かぶ程度の比較的身近な知人
や同業者が多いようです。
それまで同業者として気軽に話せていた人が、一夜にしてスターになって
遠い存在になってしまったら…

1989年、Mr.マリック超魔術ブームが日本中を席巻したあの頃、どれだけの
同業者が嫉妬をして足を引っ張ったか…当時マリックさんのスタッフとして
特番制作のお手伝いをしていた私は、最も近くで同業者達の無節操な行動
を目撃していました。

ライバル局で類似番組が続々と制作されるのはもちろん、独自の世界観を
確立してそれぞれの道を歩む姿をリスペクトしていた諸先輩方が、スター
ダムにのし上がったマリックさんの演出を批判をしながらも、草木が靡く
ようにちゃっかりとブームには乗っかって、ある者はサングラスをかけて
袖捲りをして「なんちゃってマリック」に成り下がり、一夜漬けで覚えたで
あろう超魔術を、本人も理解していないメンタルマジックのワードを羅列
しながら拙い台詞で演じ始めました。(ほとんどの映像を保存していますが、
見直すと、まあおぞましい限りです)
また、アンチマリックの旗印の下、暴露の道に活路を見出して、超魔術を
茶化す輩も跳梁跋扈し始めました。
マジックショップは一斉にメンタルマジックグッズを中心に販売するよう
になり、それらのショップを非難していたショップまでが、とうとう最後
にはブームに乗っかって悪魔に魂を売る始末。
まさにMr.マリックの登場を発端として、嫉妬に狂ったキツネが大量発生
し、見たくもなかった本性が顔を出すというカオスの時代でした。

世界に目を向けても同様の事象は起こっているようですが、翻って例えば
デビット・カパーフィールド、ジークフリード&ロイ、ランス・バートン等に
代表されるような、ラスベガスで大成功を収めて巨万の富を築いたスター
マジシャンに嫉妬する自意識過剰な人はめったにいないでしょう…これ、
別次元まで突き抜けると「嫉妬」ではなくて「羨望」や「憧れ」に変わって
しまうという証左です。

ドラフト会議で指名されなかった選手が、意中の球団から指名された同級
生に嫉妬することはあっても、大谷翔平に嫉妬することはないでしょう。

つまり「嫉妬する」のは身近で手が届きそうだから「舐めてる」のであって、
裏返すと「嫉妬される」のは手の届きそうな対象(つまり射程圏内)として
「舐められてる」と言えるのでしょうね。
「なんであいつのギャラは高いんだ」とか「なんであいつにテレビのオファー
が来るんだ」というレベルの感情が典型でしょう。

「突き抜ける」ことは無理でも、「舐められてるけど嫉妬される」程度になれ
れば、人生は意外と楽しいのかも知れません。

ぶどうの立場で考えると、最後はキツネに食べられたとしても、「う〜ん、
悔しいけど美味い」と言わせれば、ぶどう冥利に尽きるに違いありません。




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