マジックと愛車遍歴 8 (後編)
現在の愛車キャデラックATSクーペ…納車の前に、ネットでエクステリアを
確認した時、顔がちょっと控えめで迫力不足だなあと感じていたので、アメ
リカからメッシュグリルを輸入して装着すると、クライスラーとまではいき
ませんが、適度なワル顔に変身しました。
そしてこのネイビーの特別色は、想像以上に美しいものでした。
走りの方はというと、サイズ感の取り回しも良くてキビキビ走るのですが、
前車クライスラーの5.7リッターHEMIエンジンがモンスターでしたから、それ
に比べると、物足りなさは否めませんね。
排気量が半減したことによって、自動車税も半額になったことは有り難いの
ですが、左ハンドルなので、駐車券の出し入れやドライブスルーの受け取り
の際は不便です。
昔からなのですが、ゼネラルモーターズは何故かキャデラックの右ハンドル
モデルを作らないんですよねえ。
それが理由で諦める日本人が多いことはメーカーサイドも理解してないはず
がないのに、日本市場で本気で売る気があるのか甚だ疑問です。
ベンツやBMWと互角に競える格とクオリティーを備えているし、アメリカの
大統領専用車としてお馴染みですから、右ハンドルをリリースすれば売れ
るはずなんですけどねえ。
現に、コルベットが今年初めて右ハンドルをリリースすると発表した途端、
多くの予約が入っているようですから。
また2ドアクーペの宿命ですが、ドアが長くて分厚いので、駐車場で隣の車
との距離に余裕がないと、乗り降りしにくいのは大きな欠点です。
私はまだ経験はありませんが、駐車場に戻った時に両隣の車が寄せて停め
ていると、乗ることができずに帰れなくなるのです。
ドアが跳ね上がるガルウイングのタイプだと、完全にアウトでしょうね。
知り合いのディーラーの話では、マクラーレンの持ち主がこの状況に遭遇
して、隣の車が移動するまで一時間半も待っていたことがあったとか…。
さて、5年目を迎えた愛車ですが、次の車検を通さずに、お別れすることに
なります。
この車は、マジックの仕事で使ったことは一度もありません。
せいぜい鳥の餌の買出しや、打ち合わせの現場に乗っていく程度でしたね。
私にとっての車というのは、これまではずっとマジックという仕事に直結
していたので、それを度外視して道楽のみで乗ったのは、この車が初めて
だったわけですが、車道楽に出費することの罪悪感を少しだけでも払拭し
てくれた意味では、この車には本当に感謝しています。
この車をマジックの仕事で使ったことはないと書きましたが、実は予言の
マジックに使えるように、ある仕込みをしていました…客が任意に決めた
3桁の数字を引いたり足したりして、最終的にはある4桁の数字を導き出す
という知る人ぞ知る数理トリックがあるのですが、愛車のナンバープレート
をその4桁の数字にしたのです。
この4桁の数字を導き出した後に、スマホで愛車の写真を見せて、ナンバー
プレートを拡大すると…それはそれはウケますね。
納車の日にヤナセのショールームで演じた時は、目の前に予言された現車
があることで、スタッフの皆さんが驚愕したのは言うまでもありません。
このトリックを知ったのは、2005年にイギリスのマジックコンベンション
に参加した際にディーラーブースで見つけた、ある「ペン」でした。
見た目は「Sharpie」そっくりのペンの側面に、ある予言のロゴマークと4桁の
製造番号が刻印されたもので、客にペンを渡して、そのロゴマークや4桁の
数字を、あたかも客自身が自由に選択したかのように誘導していくという、
優れたメンタルマジックです。
この数理トリックの原理は昔からあったものですが、賞賛すべきは、この
数字をペンに刻印することで、最初に具現化(これこそがオリジナル)した人
にこそあると思います。
このペンを10本程度購入して、帰国後に数人の後輩マジシャン達にお土産
として配りました。
その数年後、幾つかのバリエーション違いのペンが国内でも出回りました。
さて、次は初めての大型のSUV(Sport Utility Vehicle)に乗る予定なので、
キャデラックATSクーペよりは断然荷物は積めるでしょうが、おそらくは
マジックの仕事で使うことはないでしょう。
(ナンバープレートだけは、この4桁の数字を踏襲する予定です)
現在の世界の自動車市場で活況を呈しているSUV…その中でもベントレー、
ロールスロイス、ランボルギーニ、アストンマーティン、ランドローバー、
ポルシェ、マセラティなどのハイエンドメーカーが市場に投入した超ド級の
プレミアムSUVが売れています。
コロナ禍によって、海外旅行に行けなくなった世界中の富裕層が、絵画や
宝飾品や高級車などの爆買いに走り、これらのハイエンドメーカーの売り
上げは概ね前年比2倍以上で、販売車種の半分以上がSUVなのです。
ポルシェに至っては、販売車種の7割以上をSUVのカイエンとマカンが占め
ているのが現実ですから、フラッグシップであるポルシェ911が最も売れて
いた時代を思うと、隔世の感があります。
これらは常識的に考えると「無用の長物」ではあるものの、「それでも欲しい!」
と思わせるからこそ、とんでもない価格なのに売れ行きが絶好調なのです。
究極の実用品として、その巨大な体躯とタイヤで悪路や砂漠や沼地といった
オフロードを走破するSUVが、舗装された日本の街中を走り回る現状を鑑み
れば、それは「無駄」であって、決して「合理的判断」とは言えないでしょう。
しかし古来の日本、いわゆる「いとをかし」な時代では、無駄なことが好まれる
傾向があったと認識していますが、現代でも「無駄を楽しむ」ことは心に余裕
を持たせる意味で大切なことだと、私は思います。
「無駄」は無駄ではないはずです。
次回、9(最終回)へ続く…
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