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マジックと愛車遍歴 4

・ アウディ クワトロ ツーリング (1991〜1992)

本題に入る前に…人と車の関係には二つのパターンがあると思うのです。

一つ目は、人は自分にふさわしい車を選ぶのか…欧米に行くと人と車が一致
してるんですよねえ。
カリフォルニアでメルセデス ベンツSLにブロンド美女が乗っていたり、ロン
ドンで銀髪の紳士がジャガーを操っていたりすると、カッコいいなあと思って
しまいます。
もう一つは、車が人の行動を変えるのか…私はこれに賛同します。
違法改造された車を暴走族から没収して、パステルカラーの可愛い軽自動車を
与えたら、あそこまで傍若無人な走りをするでしょうか?
例えばですよ、ブリオーニのスーツを着てベントレーに乗り込めば、郊外の
回転寿司屋には行きづらくなって、一流ホテルの駐車場に車を停めて、ホテル
内の寿司屋か銀座の寿司屋に行くようになるはずです。
そして、そういう暮らしを維持するためにも、日々精進するモチベーションに
繋がるのだと思います。

さて本題です…
現在でこそ、おしゃれなミニバンやSUVが主流となりましたが、平成の初頭
では、荷物を運ぶことに主眼を置けば、いわゆる商用車が第一選択肢という
時代でした。
しかし前回書いたように、スキミング戦略をとり始めていたエエカッコしい
の私にとっては、商用車は絶対にNGでした。
セダンでは荷物が積めないし、商用車では乗り心地は悪い上にショーの現場
に行くにはカッコつかないし…という双方の悩みを解決したのが、この時代
に流行ったステーションワゴンというセグメントでした。
当時の国産車ではスバルのレガシーが売れ始めており、外国車ではベンツ、
BMW、アウディ、ボルボがワゴン車の市場に参入し始めていました。

1991年、レジェンドから乗り換えたアウディ クワトロ ツーリング…新居を
建てたばかりなのに、ヤナセから新車のアウディを買うなど、かなり調子に
乗っていました。
実はお恥ずかしいエピソードを吐露しますが、当時本当に調子に乗っていて、
さらにセカンドカーとして、昔から憧れていたダイムラーダブルシックスも
購入しようと、ある輸入会社に300万円の手付け金を払っていたのですが、
振込み直後にその会社が倒産して、すったもんだがありました。
この輸入販売会社の社長とは、たまたま中洲のクラブで客同士で知り合って、
その会社のパーティーにマジックの営業出演で呼ばれたこともあったために
信用していたのですが、その頃には既に会社は傾いており、どうやら計画倒産
だったようで、被害者は私一人ではありませんでした。
弁護士に依頼して、奇跡的に全額取り戻せたから良かったものの(着手金と
成功報酬として、それぞれに一割の30万円ずつを支払いますから、正確には
240万円の返金)、ちょっと浮かれ過ぎてましたね…反省。
やはりイリュージョンや腕時計と同様に、正規店で買わなきゃダメですね。

さてワゴン車選びですが、多くのショールームを見て回った感想はというと、
荷室容量の大きさや実用性ではボルボ、狭いけどスタイリッシュさではBMW
だったような記憶があります。

では、なぜアウディだったのか…それは知性を感じさせる車だったから。
(冒頭に書いた、車は人の行動を変えるという思考が影響しています)

アウディはベンツやBMWのように主張が強い車ではなく、どちらかというと
アンダーステイトメントで控えめなイメージで、「頭が良くて運動神経抜群の
秀才系の車」という印象を持っていました…ということは、勤務先を辞して、
完全にプロフェッショナルとしての活動を始めた私自身が、そういうイメージ
で見られたかったのだろうし、アウディのイメージにふさわしい立ち振る舞い
をするように、自分をいざなっていたのでしょう。
確かにこの車に乗っていた頃は、黒い燕尾服を纏ったジェントルマンな佇まい
で、友人の結婚披露宴や学会のレセプションでクラシックな鳩出しを演じたり、
トークマジックでも毒を吐かず、紳士然と振舞おうとしていた気がします。

しかし実際の自分は、アウディのようなエリート系ではなく、目立ちたがり屋
でイケイケのアメ車のような性格だったので、紳士然として振る舞うことが
窮屈になったのも事実です。
アウディは、車としてのまとまり感は見事で、高速安定性は、さすがドイツ車
と思わせるものでしたが、私のキャラクターがアウディに合わせることができ
ずに、運転していても気分が上がらなくなっていました。

また、この頃にはバードマジックをメインにし始めたために、鳩はもちろん、
複数の大型鳥のケージも積むようになった上に、道具のほとんどをATAケース
に収納すると、さすがのワゴン車でも荷室容量が足りなくなってしまったこと
も、たった一年で手放すことになった理由です。
ただ、一年しか乗っていないアウディはリセール価格も良くて、次の車を購入
する際の出費は少なくて済みました。

余談ですが、当時は本当に天狗になっていて、「良い服を着て、良い車に乗って、
ATAケースで道具を運んでます!」とマリックさんに自慢したところ、一言で
打ち返されました…「あのねえ、本当の一流マジシャンは道具と一緒には動かな
いんだよ」…鼻っ柱が折れる音がはっきりと聞こえました。

さあ、折れた鼻の治療を終えたら、気を取り直して、イケイケのアメ車へと乗り
換えです。

次回、5へ続く…

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