マジックと愛車遍歴 3 (後編)
1988年は、営業出演をする上で、色々と考えさせられた年でした。
お正月のTBS特番やANAの機内のスカイビジョンに出演すると、博多駅前
のホテル(現在は存在していない)で、人生初のディナーショーが決定したの
です。(それはそれは嬉しくて、このフライヤーも大切に保存しています)
当時始めたばかりのダンボールイリュージョン(TBSの特番で共演させて頂い
たマリックさんが演じていて、憧れたのが始めたきっかけです)や、1988年
FISMオランダ ハーグ大会で仕入れた空中浮揚(邯鄲夢枕)等をかき集めて
一時間のショーを構成して道具を搬入しました。
愛車のレジェンドでは一度で運びきれずに、二往復した記憶があります。
この時の搬入口でのことです…車から道具を降ろしている時、隣に停まって
いるトラックからは、次々にATAケースが搬入されていました。
後から知ったのですが、それらは私のショーのための音響・照明機材だった
のです。
これはダメだ、と打ちのめされました…だって、自分のショーを裏方として
支える機材が立派なケースで運ばれているのに、自分の道具はといえば…
薄汚れたキルティングの布やプチプチビニールで運ばれているのですから。
はたしてどちらがショーの主役なのか…本末転倒な気がして、かなり惨めな
気分になったことを、はっきりと覚えています。
ホテルやイベント会社の担当者が搬入口で出迎えていて、道具の搬入を手伝
ってくださったのですが、何か申し訳ないやら恥ずかしい気持ちになって
しまったのです。
搬入口での様子は観客の目に触れることはありませんが、オファーを頂いた
ホテルやイベント会社からの視線も意識するようにマインドがセットされた
日でしたね。
もうね、家を出る時からショーは始まっていたのですよ…お金はかかるけど
いつかは全ての道具をATAケースに収めようと決心しました。
現在でこそ、正規のイリュージョンや高価な道具は最初からATAケースに
収納されていることは当然とされていますが、ATAケースに数万から十数万
もかけるくらいなら、予算を道具代に回したいと思うのも人情でしょう。
ただし、コピーした道具のためにATAケースを製作する余裕があるのなら、
まずは正規の道具に買い直すべきでしょう。
大切な道具であればあるほどATAケースに収めた方が賢明です。
私は沖縄から北海道まで全国でショーをやりましたが、まずATAケースで
あれば、運送会社が安心して預かってくれます。
プチプチビニールで包んだ道具は預かってもらえたとしても、配送先では
破損している恐れもあるし、送り返す際に仕事先での梱包も面倒です。
生活の糧である道具を大切に扱わないどころか、そもそもお金をかけない
プロは論外ですが、観客の目に触れることがないケースにもちゃんとお金
をかければ、道具を大切に扱っているのだという意識の高さを、見ている
人はしっかりと見てくれているものです。
さて、積み込む道具も次々に増えていき、4ドアセダンのレジェンドには
入りきれなくなって、ワゴン車へと乗り換えることになります。
次回、番外編へ続く…
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