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複業社会は もはやスタンダード 1

以前からここでは「複業」について度々書いてきました。
(一つの本業を持った上での副業ではなく、複数の本業を持つという意味)
コロナ禍で、一部上場企業ですら社員の副業を奨励したり、ANAや帝国
ホテルでさえも社員を強制的に他業種に出向させるという、誰もが予想だ
にしなかった時代になってしまいました。

ご多分に洩れず、私もマジックショーの仕事の多くが蒸発している現状
なのですが、幸い10年ほど前から準備してきたコンサルティング、医業、
会社経営、投資、某法人の顧問等の複業をフル回転することによって生活
は維持できています。
もちろん10年前にこのコロナ禍を予想できるわけはなく、先人達を見て
反面教師とした上で、老後を考えての準備だったのです。
言いづらいのですが、まだ私が若い頃、イケイケだった諸先輩や同世代の
マジシャン方が、中年以降は急激に仕事が減って、それまで否定的だった
ネタ売りを始めたり、タクシー運転手に転業していくのを俯瞰で冷静に見
てきたので、私的にはこんな晩年は幸せではないと思っていました。

私の場合、医師として大学病院での勤務を経てからのプロ転身後の数年は
色眼鏡で見られることを避けつつ「純粋にマジシャンとしての実力を評価
されたい」という考えで、医師免許を持っていることを伏せたままプロ活動
を続けていました。
その後、有り難いことにマリックさんから現在の芸名を命名されたわけ
ですが、ドクターという冠が付いているため、30代40代の20年間は医業の
収入は無きに等しい状態だったのに、一部の同業者はギャラ以外の収入源
があれば純粋なプロではないとの定義の下「どうせあいつは医者だから」とか
「医者が道楽でプロごっこをやってる」と陰口を叩かれることもありました。
(車の二種免許や特殊車両の免許を持っているだけで、生活のために必ず
タクシー運転手をしたりクレーン車を動かしているわけではないでしょうに)

まあ今となっては、そんなこともあったなあという程度の感情なのですが、
パートタイムプロを否定しフルタイムプロこそが本物だと唱えるマジシャン
が、このコロナ禍でも今後出演ギャラのみで生きていく自信があるのかは
知る由もありません。
ただ芸人たる者「末路哀れは覚悟の前」とかっこつけていたマジシャンが
コロナ禍で真っ青になって右往左往している現状を見れば、やはりうわべ
だけの覚悟が露呈したなと思います。
フルタイムプロがマジックとは関係ない仕事を始めてパートタイムプロに
なったり、営業出演が蒸発した分をネット配信で補ったり…今や多くの
マジシャンが生き延びるための模索をしている状況です。

若手と知り合う機会も多いのですが、失礼ながら素人同然のスキルと考え
方で堂々とフルタイムプロと名乗る若手と出会うと、まるで安全ネット
(保険としての複業)もないコンクリートの床の上でサーカスの空中ブランコ
をよくやれるなあと、他人の人生ながらヒヤヒヤしてしまうのですよ。
(落ちたら即死ですよ)

昔から若いマジシャンというのは、目標とする憧れの先輩がいるものですが、
その憧れの大部分は自分に備わっていない華やテクニックという技量のみに
目を奪われていて、内心は「あの先輩、腕は良いけど生活は苦しそうだな」と
うっすら感じていながら、あえて触れずに目を背けているのが現実なのです。
まあ後輩の手前、稼いでいるふりをしているとしたら先輩マジシャンにも
責任はあるのですが…続く。

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