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お天道様は…

ここしばらく読了した本のレビューを書いていませんでしたが、今更書こうと
しても記憶が薄れてしまっています…それでも面白かった本を思い出すと、
「反日種族主義」、「言い訳」、「同窓会に行けない症候群」などなどありま
したが、最も印象深くてインパクトがあったのは、現在40万部以上売れている
「ケーキの切れない非行少年たち」 宮口幸治 著 (新潮社)

非行少年の多くは、その生い立ちや環境のせいで犯罪者になると思われがちで
すが、実は多くが発達障害者や知的障害者であるという事実。
彼らになぜそんなことをしたのか尋ねても、難し過ぎてその理由を答えられな
い子がかなりいるというのです。
「僕はやさしい人間です」と答える殺人少年もいるくらいですから、被害者も
浮かばれません。
更生のためには内省と自己洞察が必要不可欠ですが、そもそもそれをする能力
が欠落しているのですから「反省以前の問題」なのです。
できるだけ早いうち(小学2年生までだそうです)に親が気づいて、少年院での
教育や矯正ではなく、治療をしてあげるしかないのでしょうね。

この本を読み終えて、前々から感じていたことが確信に変わりました。
デリケートな問題ですから、決して「差別」ではなく、あくまでも「区別」として
誤解を恐れずに吐露すれば…「マジック界にも発達障害やパーソナリティー障害
を持つ者が一定の割合で存在している」(大きな声では言えませんが、小さな声
では響きませんので…)

変な奴だなあと思われても、他人に迷惑をかけないうちはまだいいんですよ。
注意すれば直るだろうと思っていたら、繰り返し似たような事象をやらかす、
すぐに反省や謝罪を口にするものの、何で怒られてるか実は理解していない、
凹んでも立ち直りが早くて、周囲が引くほどテンションが高い…等々。
以前、福岡での某マジシャンのレクチャーの最中に、遅刻した上入室するなり
ガサガサとファミチキを食べ始めた若者がいて、それを咎められると「これは
ファミチキではなく竜田揚げです!」…そこじゃねえよ。
(ちなみにこの若者はガソリンスタンドでバイトした際に、ガソリン車に軽油
を給油してしまう等のミスを頻繁に繰り返していたそうです)

10〜20代までは変な奴で済まされても、ある程度の年齢になるとひたすら
気持ち悪いと思われて、まともな社会人からは相手にされなくなるんですよ。
(賢者ほど笑顔で立ち去ります)
幸か不幸かマジシャンの場合は、不思議な現象を起こすというかなり厚めの
オブラートに包まれているせいか、初対面の観客には気付かれることは少ない
ものの(キャラとして演じていると勘違いしてくれる)、同業という立場で
ちょっと付き合ったり、一緒に働けばすぐに違和感を覚えるものです。

発達障害とまではいかなくても、境界線上のマジシャンは確実に存在します…
ギャンブルで借金まみれなのに「マジシャン達を輝かせるマジックバーを作り
たい」というお題目を掲げて、クラウドファンディングのコンテンツで資金
調達をしようとしたり(もちろんノーマネーでフィニッシュです)、一般客が
辟易しているのに、その空気を読めずにひたすらカードの技法を見せ続けたり
、客から一杯もらうかチップが出るまで厚かましく居座ったり、確信犯として
開き直っているのか、ヘラヘラ笑いながらコピーの道具を悦に入って演じる者
もいる始末。

ルース・ベネディクトは、著書「菊と刀」で、西欧は宗教的倫理観に基いて
自律的に善悪を判断する「罪の文化」であるのに対し、日本は内面的な倫理観
ではなく、他人の目が判断基準となる「恥の文化」だと指摘しています。
(信仰心によって自らを律するのと、他人にどう思われるかで自制心が働く
という違いですね)
確かに日本人は順法意識よりも社会批判を重んじる傾向がありますからね。

そうであれば、日常的に他人の目を意識して緊張感を保てる「お天道様は見て
いる」体制こそが最も効果的なガバナンスだと思うのですが、大切なものが
欠落している連中にはお天道様の目なんて、屁のツッパリにもなりません。
(逆に、お天道様にコピーを見せて自慢するかも)
努力をしない人間は努力をしている人の気持ちが絶対に理解できないという
まさに「不治の病」。

新刊書:「コピーと切れない非行マジシャンたち」…出ても売れんだろうなあ。

 

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