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続 ・ 消えゆくもの

前回からの続きです…マジック用ワレットといえば、ヒンバー、ル・ポール、
マリカ、ベンディックスボムシェル…数々の名作がありますが、私は無類の
ワレットコレクターで、若い頃から欧米のコンベンションに行く度に世界中の
マジックワレットを蒐集していました。
現在では処分したり後輩に譲ったりして少なくはなりましたが、それでも引き
出しいっぱいワレットだらけです。
当時はおそらく日本屈指の数を保有していたと思います。(プライベートでも
コレクターなので、TPOに合わせて様々なワレットを使い分けています)

昔のヨーロッパ(EU統合以前)のコンベンションのディーラーブースでは、各国
の紙幣のサイズが違っていたために、様々なサイズのワレットが販売されて
いました。
どこの国の製品だったかは忘れましたが、スーツの内ポケットに入らないほど
デカいル・ポールワレットも持っていました。
ユーロ紙幣が出回り始めてからは、ワレットのサイズにも統一感が出てきた
記憶があります。
今でも気に入って使っているイタリア製のワレット(torn & restore 専用)は、
古くなったし日本人から見たら不自然なサイズなので、知り合いの皮革職人
にオリジナルデザインで作り直してもらう予定です。

さて、現物の通貨のマジックが消えゆくのかどうかはともかく、すでに時代の
趨勢やコンプライアンスの問題で、シガレットマジック、ファイヤーマジック、
動物を使ったマジックは、かつてほどは演じられなくなっています。
その昔(ヘビースモーカーだった頃)、私も好んで演じていた名作「スモーク
グラス」も嫌煙社会の現在ではめっきり見かけなくなったし、数十年後には、
コインにタバコが貫通する現象は見れないかもしれませんよ…なぜならどちら
も一般客に馴染のない品物になっている可能性もあるし、ひょっとしてこの世
に存在していない可能性もゼロではありませんから。

動物に関しては(ちょっと前の記事ですが)、世界41か国でサーカスでの動物
出演が禁止となっています…記事はコチラ
また本年9月9日、新江ノ島水族館で開催されたセーリングワールドカップの
アトラクションでのイルカショーが、海外選手やメディアから厳しい批判を
浴びたニュースも記憶に新しいところです…記事はコチラ
こうなると伝統芸能である猿回しもアウトになるのでは…。

私が最も好んで演じてきた…紙幣のマジック、ワレットマジック、ファイヤー
マジック、動物マジックは近い将来に本当に消えゆくのでしょうか。

近年のコンプライアンスにがんじがらめになっている状況を鑑みれば、まだ
緩やかな時代から、大好きな分野のマジックを演じて満足できる報酬を得て
いる自分は、ホント幸せなのだろうと懐古しています。
レアであるのなら、あえての戦略的昭和回帰という手もあるのでしょうが、
いずれ今以上に演れない時が来る…その時にどうギアチェンジしていくのか。
これから世に出ようとする若手マジシャンには、これまで以上に社会の空気
を読む能力が求められていくことでしょう。

まあ私も一人のロートル&ローカルマジシャン…いずれ「消えゆく者」なの
ですから、大好きな「消えゆくもの」と一緒に、少しでも余韻を残しながら
フェードアウトできれば本望だし、マジシャン冥利に尽きますね。

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