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複業のススメ 2

アルバイトが厳格に禁止されている企業の社員や公務員は別にして、複数の
収入源を持つ人間が、「仕事は複数やっています」と真面目に説明している
のにもかかわらず、しつこいほどに「で、どれが本業なんですか?」などと、
とにかく一つだけの職業枠にはめ込もうとする傾向は、今でも(特に日本では)
強いと思います。
このような事象は、個人を職業とセットで認識・記憶したり、評価・値踏み
する際の記号として便利なのでしょう。

一般的には「本業と副業」という、あくまでも「主と従」の枠に当てはめがち
なのは、複数の仕事をしている場合、最も収入が多い仕事を本業、その他を
副業やアルバイトとして世間は理解する傾向があるからです。
しかし、本業と副業の区別は収入の比率で決めるものではなく、まして世間
の判断に委ねるものでもなく、実は本人の認識と矜恃の問題なのです。
アルバイトのみで食いつないでいる売れないお笑い芸人でも、職業を問われ
れば躊躇なく「お笑い芸人やってます」と答えるわけですからね。

私事を吐露すれば、プロ転向のために大学病院を退職した20代末から体力的
に自信があった40代半ばまでは、銀座でのテーブルホッピングはもちろん、
複数の大型鳥やイリュージョンを携えて、全国規模でハードな仕事をこなす
ことができましたが、齢50を境に、体力の衰えや仕事の漸減のリスク対策と
老後に備えるために、マジック以外にも資格を活かした医業、法人の理事や
社長業、さらには投資関連等、現在は複数の収入源を確保しています。
これはマジシャンとしてプロ活動をスタートする前から描いていたビジネス
プランで、幸いなことに人生のタイムスケジュール通りに推移しているわけ
ですが、イメージとしては、加齢とともにブルーカラーからホワイトカラー
へと緩やかに移行している感じでしょうか。

そうした生き方を実践してみた感想ですが、まずマジックの仕事に関しては
スキミング戦略を基に、現在の自分に無理のない範囲でやりがいを感じる
オファーだけを受ければ済むようになったし、日々の生活がマンネリ化せず
にメリハリが出て、各々の仕事に対する集中力は確実に増しますね。
(これが前回書いた、時間意識の高まりによる労働生産性の向上です)
それでも将来における漠然とした不安が払拭されることはありませんよ。
(根っからの心配性ですからね)
マジック以外の収入源を確保している後輩も数人知っていますが、色んな
意味で相対的な余裕を感じるのもまた事実。

以前、あるドキュメント番組で紹介されているのを観たのですが、春〜夏に
かけては農業に従事し、雪が積もって農業ができない冬の間は、特技を活か
したスキーのインストラクターとしてペンションで働く男性の、その充実感
に溢れた人生を謳歌している姿に感動した記憶があります。
この男性は、どちらの仕事にも本業としての矜恃があるし、何よりも素敵な
二毛作だと思いましたね。

数種類の名刺を使い分けることも常識となった現代社会、自らの強い意志で
取り組み、矜恃ある仕事として収入を得ているものは全て本業であると認識
して、堂々と複業宣言すればいいだけなのですよ。

マジシャンも普段の営業出演以外に、マジックバーやショップを経営したり、
講習会を主催したり、複数のマジックバーでレギュラー出演したり、他者の
裏方やコンサルタントをすることでリスク分散しているように、もっと俯瞰
で見れば、マジック関連以外の収入源を確保することも、混沌としたこの
世の中を生き抜くためには必然になるのかもしれませんが、切羽詰ってから
動くのではなく、余裕のあるうちに準備を始めるべきであることは論を俟ち
ません。

次回「複業のススメ 3」で完結です。

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