腕時計から見るブランディング
時計愛好家ならご存知のはずですが、年が明けたスイスでは「ジュネーブ
サロン(SIHH)」や「バーゼルワールド」という世界的な時計見本市が開催
されます。
フランク・ミュラーは「WPHH 」という独自の新作発表会を開催しています。
毎年春先の時計専門誌やファッション誌では、ここで発表された話題作が
紙面を飾り、秋には店頭に実物が並び始めます。
ある記事によると、今年の見本市は異変が起こっているようです。
最大の見本市であるバーゼルワールドにおいて、今年の出展企業数が半減
(それでも600〜700社)して展示スペースも縮小、開催期間も3月22〜27日
と前年に比べて2日間も短くなったのです。
なぜなのか…まずは高額な出店料(通常ブースで200〜300万、大きなブース
になると億単位)が負担になりつつあること、さらにスイスでは2017年1月
から時計ブランドの認定ルールが変更されて、スイス国内で調達した部品が
60%以上(従来は50%以上)使われていないと「スイスメード」と名乗れなく
なったのです。
この改定により、部品調達コストが上昇し、中小企業はお金がかかるイベント
に出展する余裕がなくなっているとのこと。(ということは、「SWISS MADE」と
刻印されているブランド時計でも、部品の半分近くが中国製という場合も
多いのですよ)
…と、ここまではあくまでも中小企業の話。
ルール改定にも影響されず、高額出店料など歯牙にもかけない大企業や一流
ブランドが、なぜバーゼルワールドを敬遠し始めたのか…それこそがブランド
イメージを重要視する矜持なのでしょう。
例えば「エルメス」は、時計メーカーとしてのブランディングにも成功して
ハイエンドなポジションを築きつつありますが、これまで出店してきたバー
ゼルワールドの不参加を決定、代わって初参加したのが、1月15〜19日に
開催された高級時計見本市SIHHでした。
バーゼルワールドは時計だけではなく宝飾品も展示して、一般客を含めて
SIHHの6〜7倍の10万人以上が来場します。
そのため価格帯や品質も様々で、ある老舗高級時計メーカーは「年々、ラグ
ジュアリーな雰囲気が失われており、騒がしくてゆっくりと商談できない」
とこぼしているとか。
一方のSIHHは、世界に名だたる高級ブランドのみを集結(今年は最多の35
ブランド)させて、最終日以外はバイヤーなどの関係者だけしか入場できない
システムになっています。
コモディティ化したイベントでさえ出店が厳しくなった中小の無名ブランド
がある一方、薄れる高級感に危機感を覚えて巨大化したイベントを敬遠し、
ステータス優先で独自の戦略を描くハイエンドブランド…時計業界の二極化
と、ブランディング構築がなかなか困難なマジック業界の現状を憂いながら
この春の「世界の腕時計展」をやや複雑な気持ちで堪能してきました。
ところで、4月3日は私の誕生日…バースデーパーティーは、スケジュールの
都合で3月31日に前倒しして、馴染みのクラブで祝ってもらいました。
いつもは誕生日直前になって自分へのプレゼントを物色するのですが、今年
は2月中旬に入手していました…コンキスタドール ジョーカー
コンキスタドールは1998年が初出で、高低差のある二重ベゼルでボリューム感
を増した威風堂々とした男らしいモデルであると同時に、フランク・ミュラー
のブランディング構築に大きく貢献した旗艦モデルでもあるのです。
このブランドの象徴であるビザン数字インデックスに81個のダイヤを散り
ばめて、コンキスタドール ジョーカー(最高の切り札)と命名されたこの
モデル、実は2008年に100本限定でリリースされた時に購入を逡巡していた
ところ、瞬く間に完売して逃してしまって以来、ずーっと悔いが残っていた
のです。(こういう悔しさ、マジックの道具でも何度かありましたねぇ)
あれから10年の時を経て、その中の1本が私の手元へ…状態も良好、福岡
ブティックで新品のブレスレットを付けてもらって、ギラギラ感もアップ。
この妖艶でありながらも精悍な面構えに、なんとも言えない色気を感じて
しまうのです。(コレクションの中でも最も好みのフェイスですね)
コンキスタドールとはスペイン語で「征服者」を意味するそうです。
私には征服したいものなどありませんが、ただ、この時計が放つ力強さと
洒落者の心憎いセンスにあやかって、自身のブランディングの一助になれば
幸いだなあと思っています。
そして誕生日を迎える度に、残り少なくなっていく人生の中で、今後の自分
は何を成し遂げることができるのだろうと、物思いに耽っていたのですが、
この言葉に改めて励まされました…
「人生はあらかじめ決められたものではない。自分の好きなことができる。
もともとこの世には時間などない。それは人間が勝手に創ったものだ。
私は時計師だからそのことがよくわかる」 フランク・ミュラー
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