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2018年2月

サンクコストと経験

サンクコスト(埋没費用)とは、投資の世界で「回収できない費用」のことを
意味します。
つまり、「ここまで頑張ったのに、今さらやめるのはもったいない!」という
気持ちのことですね。
選択を強いられると「このまま留まる方が安全」という「現状維持バイアス」が
起こりがちなのです。
人は「得る喜び」よりも「失う痛み」の方が大きく感じる傾向がありますから、
「損切り」するには覚悟が必要ですが、実はこのような事象は私達の日常生活
の中で溢れかえっています。
例えば、映画を観初めて30分経過した時点でつまらないと確信しても、入場料
の1,800円がもったいないと思って観続けるのは、サンクコストを無視できな
いからなのですね。
少し意味合いが違うかもしれませんが、数百万円の腕時計にオーバーホール代
として10万円をかけるのは納得できても、10万円の腕時計に3万円のオーバー
ホール代を支払うのは…ちょっと抵抗があるものです。

ここからはサンクコストで悩む私事を少々…

加齢に伴って、無情に過ぎ去る時間の貴重さを認識するようになったせいか、
映画や本は途中で興味が失せると、結構簡単に見切りをつけるようになりま
した。(人間関係の一部もね)

小洒落たレストランで、ちょっと奮発して注文した料理が不味いと感じた時、
もったいないからと完食したら、お腹の贅肉が増えるだけです。

一流を自負する高級クラブで、対応がいい加減で不愉快だった時、ボトルを
入れたばかりでも笑顔で退店して、それ以降は足が遠のきますね。

高かったという理由だけで着なくなった服を取っておくのは、クローゼットの
貴重な空間を無駄にしているだけなので、次々に後輩に譲っています。

その昔、才能がないと判断した鳩やインコを、いつまで調教するかで悩んだ
ものです。

無我夢中で演技の手順を作っている時、その構成を冷静に俯瞰で見たら全く
面白くないことに気づいたのに、8割方出来上がっていたので諦め切れずに
完成させて本番で演じたところ、やはり大スベリということもありましたね。

…とまあ、こんな感じです。

現在でも、新しいマジックの知識や技法の習得の欲求は衰えていないつもり
ですが、あくまでもプロフェッショナルとして演ってきた経験上、どうしても
コストパフォーマンスというか費用対効果をビジネスライクに考慮した結果、
中断する場合も多いのですよ。(若手ではないので、残っている時間も短いし)
…これを「経験が邪魔している」と思うのか、「経験に救われている」と思うのかは、人それぞれの価値観次第。(自己分析では後者)

一説では、経験のほとんどは、「食べたもの、出会った人、読んだ本」で形成
されていると云います…であれば、日頃から「質の高い食事、質の高い人、
質の高い本」と接することを心がけるべきですね。(ジャンクフードを食べ
ながらエロ本を読んでる輩は最悪ってことか?)

本当は株を売った方がいいのに売れないとか、転職した方がいいのに転職
しないとか、悪影響を及ぼす友人を切った方がいいのに切れないとか…
これらの事象は、過去のサンクコストと経験に縛られていることが一因。
この呪縛から逃れるには、過去ではなく現在を正確に見極めて、身の周り
の損切りすべきものを見つけるしかありません。

損切りの後は、自分を「過去の買い値」ではなく、「現在の時価」で評価
することで、嘘偽りのない姿と向き合えるのかもしれません。

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