先延ばしの罠
1月は新年会が続いたものの、筋トレとルームウォーカーの効果なのか、
なんとか体重は現状維持。
1月最後の日曜日はマジシャン仲間達と焼肉パーティー。(日曜日なら
マジックバー関係者も参加しやすいですからね)
近況報告や今後の展望等、盛り上がる話題には事欠きませんでした。
早くも2月になってしまいましたが、新年を迎えた時、多くの人が今年
一年の抱負や目標を掲げたりすることでしょう。
そしてそれを公に宣言することによって自らを追い込んで成就させる人も
いれば、心の内に秘めたまま気宇壮大に邁進する人もいることでしょう。
私も本年最初のエントリーでは、今年は人生を謳歌するために適度に欲深
く健康に留意しながら頑張るつもりだと「ざっくり」書きましたが、何を
どう頑張るのかを吐露するのは照れもあったり、隠匿すべきこともあるの
で(3つの目標を立てましたが)、なかなか公にはできないもので…。
年頭には目標に向かって一瀉千里で突き進む決心をしても、そこは人間、
つい先延ばししがち。
ただ、この歳で無理な目標を掲げて繰り返し先延ばしという陥穽にはまる
と、若い頃には感じなかった残された時間の少なさから来る焦りと、己の
意志の弱さによる自己嫌悪とも相まって、何もかも諦めてしまうのではと
過剰に心配してしまうのですよ。
結局、先延ばしの罠を避けるには、将来の自分を過信しないことに尽きる
んですね。
何事も(マジックにおける課題も)将来の自分がきちんと解決してくれる
であろうと信頼していると、あにはからんや将来の自分も今の自分と大差
ないわけです。
むしろ先になるほど問題が肥大化かつ深刻化する上に、時間がなくなって
いるだけに本来の力を発揮することもできず、解決の道が閉ざされて手遅
れとなるのは自明の理。
以前のエントリーにも書きましたが、私の場合、マジックも車も本音では
「時代に抗う」ものが好みなのですが、近年のマジックを取り巻く環境は
テレビスタジオでは火気や動物がNGだったり、結婚式場等においてショー
で使用するBGMの著作権問題等、面倒なコンプライアンスが厳しくなる
一方のご時世にあっては、各々が諸問題に即した対策を先延ばしすること
なく準備することが焦眉の急であることは論を俟ちません。
少し脱線しますが、私はマジックをクロースアップやサロンやステージと
いった所謂「規模」で区別することには、昔から違和感を覚えている一人
です。(ただ説明の都合上、使うことはありますが)
例えば、あるマジシャンにちょっと規模の大きなイベントの出演を依頼し
た時、「いやあ、僕はクロースアップ専門なのでちょっと…」と断られたと
したら、依頼した側が「はぁ?」となっても無理はないのですよ。
一般人のイメージでは、クロースアップマジシャンもイリュージョニストも
メンタリストも区別なく、み〜んな「マジシャン」なのですから。
飛行機の中でCAが「急病の方がいらっしゃいます! お客様の中でお医者
様はいませんか!」と叫ぶ緊迫した場面がありますが、この場合の「医者」
も内科だの精神科だの眼科だのと関係ないわけです。(もし私が乗り合わ
せていたとしたら、「お医者様の中でお客様はいませんか!」と呼びかけ
られた時だけ躊躇なく手を挙げますけどね…あ、不謹慎でごめんなさい)
医者でも専門外の疾患については自信がないように、マジシャンの場合も
自分が売りにしている演目ができない上に、慣れていないものを演じなけ
ればならない状況は不安にもなるし、納得できないパフォーマンスでは
堂々とギャラを受け取りづらい気持ちになるのも無理はありません。
閑話休題。
そういうことで私自身の話に戻れば、時代や環境に左右されず、何よりも
自分のキャラクターに合うサロンマジック(あえて規模で表現すれば)を
さらに充実させることが今年の3つの目標の中の1つです。
1月半ばの新年会のショーは、あるレストランの広めの個室に長テーブル
が二列に置かれて40名が着席、演技スペースの背景は壁一面鏡張りで背後
は丸見え、照明音響設備は無しという決して演技し易い環境ではなかった
ものの、この規模や環境でのショーを前提にずっと研究と準備をしてきた
ので、その場にマッチしたごくシンプルな演目を問題なく演じることがで
きて、やっとそれなりの手応えを感じ始めています。
昔の自分なら善かれと思って(あるいは絶対に必要という理由で)、自前の
音響セットやスパイダーカーテン等を持ち込み、場違いで過剰気味な演技
をしていたかもしれませんね。
そうすると感謝されるどころか、客からも店側からも迷惑がられることも
あるものです。
出番の後の道具や機材は邪魔になるし、観客全員が会場を出るまで撤収も
できませんしね。
そんなこんなで様々な制限がある現場でも、過去演じてきた大味なステー
ジマジックの不思議のエキスを抽出してコンパクトに演じたり、たった
一人を相手に演じてきたクロースアップマジックを、なんとか観客全員が
理解して不思議が伝わるように本能的にアレンジできているのは、若い頃
から多くのマジックを演じてきたことが昇華されつつあるのかなと…。
冷蔵庫の残り物でも、ある程度見栄えの良い料理が作れたという感じです
かね。
自分の年齢、取り巻く環境や時勢を考えると、今後の主戦場は高級クラブ
のテーブルホッピングでもなければホテルや劇場でのイリュージョンでも
なく、あくまでもスキミング戦略に基づいたこのサイズの現場のサロンマジ
ックに否応なく収れんしていくであろうと予想しているし、またそうある
べきだと思っています。
そうであれば尚更、この歳で様々な課題を先延ばしにするわけにはいかな
いなと意を強くしている次第。
ある調査で報告された事象です…
3つの課題があって、1週間ごとに1課題を終えなくてはならない場合と
3週間後にまとめて3課題の成果を提出するという場合を比べると、明ら
かに前者の方が成果が上がることがわかっているようです。
レンタルDVDは期日までにきちんと返却するのに、時間がある時に観よう
とハードディスクに録り溜めた映画はなかなか観ないもの。(有料か無料か
の差もありますが)…ことほど左様に、人間は締め切りがなく時間がある
時ほど先延ばしの陥穽にはまりやすい傾向があることを、時々は自戒を込
めて思い出しながら日々過ごすことが重要でしょうね。
私はいまだに、練習を先延ばししてコンテスト当日を迎えてしまうという
学生時代の悪夢を見て目が覚めることがあります。
さて、今月は久しぶりに多くのマジシャンが集うイベントに顔を出す予定
です。
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