メイド イン チャイナ ?
前回エントリーのアンバサダー(マジシャン編)の中で、中国製のコピーが
目に余るという話題に触れましたが、今回はその事象について考察したい
と思います。
マジック用品のコピーに関しては、パフォーマーである私よりは日々製作
したり輸入販売しているディーラーの方々の方が遥かに詳しいはずなので
すが健全なディーラーが頑張っている一方、コピーと知りながら輸入したり
自らもコピーを製作するという脛に傷を持つディーラーも存在しているなど、
この伏魔殿の全貌を把握するのは困難ですので、私の知る史実のみを述懐
します。
コピー、特に中国製の勢いたるやアメリカのオリジナルメーカーが廃業する
ほどのようです。
自戒を込めて告白しますが私自身の黒歴史として、情報も知識も予算も
無かった若い頃にヨーロッパのコンベンションで購入してしまったコピーイリ
ュージョンが数台ありましたが、オリジナルビルダーが判明した時点で全てを
オリジナルに切り替えていきました。
少しずつテレビ出演のオファーが舞い込むようになると、コピーを使って
メディアに露出するのも気が引けるし何より本物を知ってしまった以上、
妥協という言葉で自分を騙すのが嫌でしたね。
ショーで用いる道具全体をトータルコーディネートに置き換えたならば、
せっかくそれなりのジャケットや靴で統一しているのに、腕時計だけが紛
い物を着けているような気持ち悪さです。(全体が紛い物ならば、それは
それで完璧なセットアップなのでしょうが…)
だからこそ背伸びをしてでも本物の道具をまず一つ手に入れて、そのレベ
ルの道具を基準にショー全体をコーディネートする習慣を身に付けないと
ずっと安っぽい佇まいのままになってしまうのですよ。(ビジュアルはもち
ろん、恐ろしいことにメンタルまでも)
道具以前に稽古を重ねて芸そのものを磨きあげることが大前提であること
は論を俟ちませんが、ギャラをアップしたいのにいつまでも安っぽいコピー
の道具を使いながらパフォーマンスまでもメジャーマジシャンのコピーを
続ければ、「これだけの努力と投資をしたのだから、これだけの報酬を貰
うのが当然」という考えには永遠に至らないのです。
結局は個々人の矜持の問題に行き着くのでしょうが、アマチュアならまだ
しもギャラを頂戴する自称プロであれば本物を使うべきでしょう。
「蟹かま」を「蟹」と偽って販売するわけにはいかないでしょう。
かなり前に輸入した以下の3種類のアイテムも近年は中国製コピーが出回
っているようですが、当時のオリジナルを輸入した経緯を紹介しましょう。
ボックスの中の透明筒から予言が出て来るMaster Prediction System…
これは1990年頃のマジック専門誌において、ディック・ジマーマンが考案
してビル・スミスが製作した優れたシステムの予言の道具があるとの広告
が記憶に残っていたので、2001年にラスベガスの工房を訪れた際にビルに
製作を打診したところ、私の目の前でビルがディックに電話をして承諾を
得て製作が決定、そして翌年のTBSの特番でマリック氏がテレビ初公開し
て話題になりました。
その後ダグ・マロイとウェリングトンも正規ビルダーとしての権利を得て
製品を発表したという経緯があるのですが、どうやら中国製のはこの2社
の模倣(価格は1/10くらいでしょうか)のようです。
しかしマリック氏が使用しているのは秀逸ですよ…高級なオーク材を使用
して、何より怪しげな金属の縁取りがありませんから。(おっと、詳しく書き
過ぎました)
マリック氏の影響なのでしょう…それ以降日本を含むアジア圏でこの道具
のコピーが急速に広まると同時に、お手軽に演じるマジシャンも急増しま
した。(ただし演出面では誰一人追いついてはいませんね)
そういう事情もあって私は全く違うシステムの予言マジックを演じるよう
にしたのですが、2006年に関西テレビで内田貴光氏と、2007年にNHKで
ふじいあきら氏と共演した際に演じたところ、手の平サイズの透明小箱を
使用したせいか、かなり不思議だったという反響を頂きました。(これも
そのうちコピーが出るのですかねえ? いやすでに出ているかも…)
カパーフィールドが暫く演技権を独占していたと云われる腕が三分割され
るイリュージョンTri-Section(考案:ラリー・ホワイト 正規ビルダー:
ウェリングトン)は、先にアメリカのある業者がUNARMEDの名称で発売
したものを輸入して演じていたのですが、これが非正規品と判明した直後
にウェリングトンから正規品製作開始との連絡が入ったので、すぐにニュ
ーヨークのウェリングトンの工房まで出向いて身長や腕の長さに合わせて
製作してもらい、何度かテレビでも演じた思い出の道具です。
しかしこれも中国製コピーが出回り、それを購入して嬉々として演じてい
る後輩マジシャンがいると知った時は、自分の体験談まで話してオリジナ
ルをリスペクトしようとアドバイスしたことが彼の心にはなーんにも響い
ていなかったんだなと思うと虚しいやら情けないやら…営業欲しさに芸能
プロダクションにペコペコ&感謝感謝しながら、コピーイリュージョンを
手作り販売までして…生きていくのって大変なんだなあと、ある意味同情
するしかありません。
透明アクリルボックスに突然大量の紙幣が出現するオーウェンマジックの
Crystal Money Chest…発表された1992年に日本に最初に輸入して
以来24年、テレビにライヴにと何度も使用してきました。
これも90年代後半から日本製を含めて多くのコピーが出回っています。
ただこれに関しては「一事が万事」とはよく言ったもので、コピーを使って
いるマジシャンは出現する紙幣も必ず偽札を使っているという現実を見る
と、その判断を下した生き様をわざわざスポットライトの下で曝してまで
演りたいのかなあとも思うのですが…。
言うなれば「偽マジシャンが偽ボックスから偽札を出す」という滑稽な三重
奏はブラックジョークにもならないし、そもそも「本物は高いからコピーで
いいや」という思考回路がセコい方に向かうマジシャンが、したり顔で最も
演じてはならない代表演目が「紙幣プロダクション」なのでは?
さらに演じる環境も重要です…お世辞にも予算があるとは思えないイベント
やマジックバーのショータイム等で演じれば、たとえ本物を使っていたと
しても偽物に見えてしまうという、実は厄介な演目なのです。
ある若手から聞きましたが、彼の周囲も現象が同じで見た目も遜色ないの
であればコピーで構わないという考えのマジシャン達が多いらしく、フロ
ーティングテーブルに至ってはオリジナルのロザンダー製を使っている方
が圧倒的に少ないのでは、とのこと。
先日のNHK「クローズアップ現代+」でも中国製コピーの問題が特集されて
いました。
長くアップル社のコピーばかり作っていた会社が、このままコピーを作り
続けても未来はないと悟り、一念発起してオリジナルデバイスを開発して
いく過程の他に、中国のベンチャー企業が社運を賭けて開発・発売した
商品があっという間に他の中国企業にコピーされて市場を席巻されてしま
って、経営者が頭を抱える様子が赤裸々に放送されていました。
いよいよ中国人という身内からコピーされるという初の経験をすることで、
それまで自分達がどれだけ外国企業に損害を与えてきたのかと自国の病理
の根深さを中国人自らが思い知ったという画期的な内容でした。
そして番組の括りでは、このままでは中国人がベンチャー企業を興しても
すぐに身内からコピーされて会社が傾く危険性があるのなら、今まで通り
横並びで外国製品のコピーを作り続けた方が無難だし、こういう事象が続
けば中国においては今後の起業の機運は一気にしぼむであろうというもの
でした。
ところで、マジック界のある中国コピー業者の社長の座右の銘は…「誠」
だそうです。(爆笑!)
南シナ海や尖閣諸島における報道に象徴されるように、たとえGDPが日本
を抜いて世界2位になろうとも、傍若無人で迷惑至極な振る舞いをする
このジャイアンのような国に「衣食足りて礼節を知る」を求めるのは、もはや
無駄な気がします。
でもまあ中国のコピー道具以上に鳥肌が立つのは、超魔術やストリート
マジック等その時々のブームに乗っかって、節操もなくキャラクターや
風貌を変える二番手三番手のコピーマジシャンですけどね。
「蟹かま」は永遠に「蟹」にはなれないもの…私はDrとして、医学的には
ジェネリックマジシャンと名付けていますが…。
目に余るという話題に触れましたが、今回はその事象について考察したい
と思います。
マジック用品のコピーに関しては、パフォーマーである私よりは日々製作
したり輸入販売しているディーラーの方々の方が遥かに詳しいはずなので
すが健全なディーラーが頑張っている一方、コピーと知りながら輸入したり
自らもコピーを製作するという脛に傷を持つディーラーも存在しているなど、
この伏魔殿の全貌を把握するのは困難ですので、私の知る史実のみを述懐
します。
コピー、特に中国製の勢いたるやアメリカのオリジナルメーカーが廃業する
ほどのようです。
自戒を込めて告白しますが私自身の黒歴史として、情報も知識も予算も
無かった若い頃にヨーロッパのコンベンションで購入してしまったコピーイリ
ュージョンが数台ありましたが、オリジナルビルダーが判明した時点で全てを
オリジナルに切り替えていきました。
少しずつテレビ出演のオファーが舞い込むようになると、コピーを使って
メディアに露出するのも気が引けるし何より本物を知ってしまった以上、
妥協という言葉で自分を騙すのが嫌でしたね。
ショーで用いる道具全体をトータルコーディネートに置き換えたならば、
せっかくそれなりのジャケットや靴で統一しているのに、腕時計だけが紛
い物を着けているような気持ち悪さです。(全体が紛い物ならば、それは
それで完璧なセットアップなのでしょうが…)
だからこそ背伸びをしてでも本物の道具をまず一つ手に入れて、そのレベ
ルの道具を基準にショー全体をコーディネートする習慣を身に付けないと
ずっと安っぽい佇まいのままになってしまうのですよ。(ビジュアルはもち
ろん、恐ろしいことにメンタルまでも)
道具以前に稽古を重ねて芸そのものを磨きあげることが大前提であること
は論を俟ちませんが、ギャラをアップしたいのにいつまでも安っぽいコピー
の道具を使いながらパフォーマンスまでもメジャーマジシャンのコピーを
続ければ、「これだけの努力と投資をしたのだから、これだけの報酬を貰
うのが当然」という考えには永遠に至らないのです。
結局は個々人の矜持の問題に行き着くのでしょうが、アマチュアならまだ
しもギャラを頂戴する自称プロであれば本物を使うべきでしょう。
「蟹かま」を「蟹」と偽って販売するわけにはいかないでしょう。
かなり前に輸入した以下の3種類のアイテムも近年は中国製コピーが出回
っているようですが、当時のオリジナルを輸入した経緯を紹介しましょう。
ボックスの中の透明筒から予言が出て来るMaster Prediction System…
これは1990年頃のマジック専門誌において、ディック・ジマーマンが考案
してビル・スミスが製作した優れたシステムの予言の道具があるとの広告
が記憶に残っていたので、2001年にラスベガスの工房を訪れた際にビルに
製作を打診したところ、私の目の前でビルがディックに電話をして承諾を
得て製作が決定、そして翌年のTBSの特番でマリック氏がテレビ初公開し
て話題になりました。
その後ダグ・マロイとウェリングトンも正規ビルダーとしての権利を得て
製品を発表したという経緯があるのですが、どうやら中国製のはこの2社
の模倣(価格は1/10くらいでしょうか)のようです。
しかしマリック氏が使用しているのは秀逸ですよ…高級なオーク材を使用
して、何より怪しげな金属の縁取りがありませんから。(おっと、詳しく書き
過ぎました)
マリック氏の影響なのでしょう…それ以降日本を含むアジア圏でこの道具
のコピーが急速に広まると同時に、お手軽に演じるマジシャンも急増しま
した。(ただし演出面では誰一人追いついてはいませんね)
そういう事情もあって私は全く違うシステムの予言マジックを演じるよう
にしたのですが、2006年に関西テレビで内田貴光氏と、2007年にNHKで
ふじいあきら氏と共演した際に演じたところ、手の平サイズの透明小箱を
使用したせいか、かなり不思議だったという反響を頂きました。(これも
そのうちコピーが出るのですかねえ? いやすでに出ているかも…)
カパーフィールドが暫く演技権を独占していたと云われる腕が三分割され
るイリュージョンTri-Section(考案:ラリー・ホワイト 正規ビルダー:
ウェリングトン)は、先にアメリカのある業者がUNARMEDの名称で発売
したものを輸入して演じていたのですが、これが非正規品と判明した直後
にウェリングトンから正規品製作開始との連絡が入ったので、すぐにニュ
ーヨークのウェリングトンの工房まで出向いて身長や腕の長さに合わせて
製作してもらい、何度かテレビでも演じた思い出の道具です。
しかしこれも中国製コピーが出回り、それを購入して嬉々として演じてい
る後輩マジシャンがいると知った時は、自分の体験談まで話してオリジナ
ルをリスペクトしようとアドバイスしたことが彼の心にはなーんにも響い
ていなかったんだなと思うと虚しいやら情けないやら…営業欲しさに芸能
プロダクションにペコペコ&感謝感謝しながら、コピーイリュージョンを
手作り販売までして…生きていくのって大変なんだなあと、ある意味同情
するしかありません。
透明アクリルボックスに突然大量の紙幣が出現するオーウェンマジックの
Crystal Money Chest…発表された1992年に日本に最初に輸入して
以来24年、テレビにライヴにと何度も使用してきました。
これも90年代後半から日本製を含めて多くのコピーが出回っています。
ただこれに関しては「一事が万事」とはよく言ったもので、コピーを使って
いるマジシャンは出現する紙幣も必ず偽札を使っているという現実を見る
と、その判断を下した生き様をわざわざスポットライトの下で曝してまで
演りたいのかなあとも思うのですが…。
言うなれば「偽マジシャンが偽ボックスから偽札を出す」という滑稽な三重
奏はブラックジョークにもならないし、そもそも「本物は高いからコピーで
いいや」という思考回路がセコい方に向かうマジシャンが、したり顔で最も
演じてはならない代表演目が「紙幣プロダクション」なのでは?
さらに演じる環境も重要です…お世辞にも予算があるとは思えないイベント
やマジックバーのショータイム等で演じれば、たとえ本物を使っていたと
しても偽物に見えてしまうという、実は厄介な演目なのです。
ある若手から聞きましたが、彼の周囲も現象が同じで見た目も遜色ないの
であればコピーで構わないという考えのマジシャン達が多いらしく、フロ
ーティングテーブルに至ってはオリジナルのロザンダー製を使っている方
が圧倒的に少ないのでは、とのこと。
先日のNHK「クローズアップ現代+」でも中国製コピーの問題が特集されて
いました。
長くアップル社のコピーばかり作っていた会社が、このままコピーを作り
続けても未来はないと悟り、一念発起してオリジナルデバイスを開発して
いく過程の他に、中国のベンチャー企業が社運を賭けて開発・発売した
商品があっという間に他の中国企業にコピーされて市場を席巻されてしま
って、経営者が頭を抱える様子が赤裸々に放送されていました。
いよいよ中国人という身内からコピーされるという初の経験をすることで、
それまで自分達がどれだけ外国企業に損害を与えてきたのかと自国の病理
の根深さを中国人自らが思い知ったという画期的な内容でした。
そして番組の括りでは、このままでは中国人がベンチャー企業を興しても
すぐに身内からコピーされて会社が傾く危険性があるのなら、今まで通り
横並びで外国製品のコピーを作り続けた方が無難だし、こういう事象が続
けば中国においては今後の起業の機運は一気にしぼむであろうというもの
でした。
ところで、マジック界のある中国コピー業者の社長の座右の銘は…「誠」
だそうです。(爆笑!)
南シナ海や尖閣諸島における報道に象徴されるように、たとえGDPが日本
を抜いて世界2位になろうとも、傍若無人で迷惑至極な振る舞いをする
このジャイアンのような国に「衣食足りて礼節を知る」を求めるのは、もはや
無駄な気がします。
でもまあ中国のコピー道具以上に鳥肌が立つのは、超魔術やストリート
マジック等その時々のブームに乗っかって、節操もなくキャラクターや
風貌を変える二番手三番手のコピーマジシャンですけどね。
「蟹かま」は永遠に「蟹」にはなれないもの…私はDrとして、医学的には
ジェネリックマジシャンと名付けていますが…。
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