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アンバサダー (マジシャン編)

前回は腕時計のアンバサダーを務める世界的アスリートについて書きまし
たが、今回はマジック界について…。
なにしろマジック界最大の大会ですら世間での知名度は無きに等しいため
に「マジック界のオリンピックのようなもの」と注釈をつけてオリンピック
に乗っからせてもらうほどにスポーツ業界とマジック業界のスケールが違
い過ぎて比べることすら無理があると思うのですが、それを承知の上での
エントリーです。

仮にあるマジック用品メーカーのアンバサダーとして、そこのオリジナル
の道具を使ってコンテストに挑むマジシャンがいたとしたらその重圧たる
や…なーんにもなさそうですね。
「うちのビリヤードボールやファンカードを使ってコンテストで勝てない
なら二度と使うな!」…なーんて無茶を言うメーカーもまずないでしょう
からね。
だってスポーツ用品メーカーが契約アスリートにやっているように、マジ
ック用品メーカーが特定のマジシャンの生活全ての面倒をみるレベルの
スポンサーになるなんて有り得ませんから…。

ただ昔の映像を確認すると、アメリカのメジャーなイリュージョニスト達
は、一時期は特定のイリュージョンビルダーが製作した道具を中心に使
っていたので、ある意味アンバサダーに近かったのかもしれません。
例えば初期のダグ・ヘニングはウェリングトン、スターダストホテル時代
のシークフリード&ロイはオーウェンマジック、テレビ特番絶頂期のカパ
ーフィールドはジョン・ゴーンやメンドーザ、モンテカルロホテル時代の
ランス・バートンはビル・スミス、バーリーズ時代のダーク・アーサーは
ウィリアム・ケネディ…といった具合。

もっと詳述すると、マーク・ウィルソンや息子のグレッグ・ウィルソンが
十八番にしているほとんどのイリュージョン…例えばDIVIDED IN FOUR
EXCALIBURは、アラン・ウェイクリングが考案してジョン・ゴーンが
製作したもの。(参考文献:「THE MAGIC OF ALAN WAKELING
ジム・ステインメイヤー著)
ちなみにグレッグが演じるビリヤードボールも、この本に掲載されている
アランの手順そのものですから、ウィルソン親子はアイデアはアランに、
道具はジョンにと全面的にお世話になりながらテレビからお金を引っ張っ
てきたり、世界中のコンベンションで彼等の宣伝をしてきたとも言えるわ
けです。(所謂ウィンウィンの関係です)
反対にアンバサダー的な立場であったブレッド・ダニエルズとスポンサー
的な立場であったオーウェンマジックのように人体浮揚のイリュージョン
ASCENDING GODDES に関して裁判沙汰になるようなトラブルもあり
ます。(私はブレッド本人とオーウェンのメインビルダーであるアラン・
ザゴルスキーの双方からこのトラブルの経緯を聞いたことがありますが、
まあ言い分はどっちもどっちでしたね)

つまりイリュージョンビルダーにとっては、売れっ子マジシャンが自社の
道具をテレビやラスベガスのメジャーホテルでバンバン使ってくれれば、
それを観て憧れた世界中のマジシャン達からオーダーが入るわけですから
まさにアンバサダーのようなものです。(日本のみならず世界中に劣化版
カパーフィールドが蔓延したのはその証左ですね)

以前、ジョニー広瀬氏と一緒にジョン・ゴーンの工房を訪れた時、ダグ・
ヘニングやカパーフィールドの影響で大流行中のオリガミイリュージョン
が10台以上も製作中だったのを目にして驚くと同時にうんざりというか
嫌気がさして所有していたオリガミ(ウェリングトン製)を手放すきっか
けとなりました。
マリック氏と一緒にウィリアム・ケネディの工房を訪れた時も、ダーク・
アーサーが演じたアピアリングヘリコプターを他のマジシャンのオーダー
で製作中でした。

いつぞや、ラスベガスのコンベンションのディーラーブースでオーウェン
マジック専用ルームに入った時、オーウェン製のイリュージョンを演じて
いる私の宣材写真が額縁入りで壁に飾られているのを見て、ビルダーの
アラン・ザゴルスキーに謝意を伝えたところ、「ZUMAは当社の道具の
多くを日本のテレビで使ってくれているし、アンバサダーのような存在だ
から」と言われた時は嬉しかったですね。(私が初めてオーウェンの工房
を訪れた時は門前払いだっただけに、待遇には隔世の感がありました)
その思い出のイリュージョンGirl in the Diamondはマーヴィン・ロイ
&キャロルが権利を手放した後、私が真っ先に発注してNHK-BSの特番や
関西テレビで公開したものなのですが、既に中国製のコピーが売られてい
るとか…良い思い出にも水を差される嫌な時代になったものですなあ。

この目に余る中国製コピー問題…本来なら商品情報に詳しいディーラーや
ショップ関係者が問題提起して声を大にして発信するべきだと思うのです
が、近年は諦め気味なのかコピー販売の片棒を担ぐショップが増えている
ために自らの脛の傷を気にしているのか…あまり聞こえてきません。
(もちろん私の脛にも若手の頃の傷がありますよ)
近々これをテーマに私が昔輸入した道具の事例を示しながら考察してみた
いと思います。

閑話休題、アンバサダーの話に戻しましょう。(これ、私も勘違いしていた
のですが、閑話休題とは「ちょっと話題を変えて」とか「ところで」という
意味ではなく「話題を本題に戻す」という意味なのだそうです)

マリック氏がライヴ会場で観客全員にスプーンを配って会場一体となって
スプーン曲げを演じ始めた頃、当時ゲスト出演の立場でステージ袖にいた
私がスプーンをふと手に取って驚いたのは…スプーンの柄にMr.マリックと
刻印された特注品であったこと。(それまではカードを特注するマジシャン
はいましたが、スプーンとは…)
これはもうそのスプーンメーカーの立派なアンバサダーだなと思いました
が、よく考えるとそのスプーン…曲げられたり切断されたりする運命なの
で製作者の心情としては少し複雑ですよねとマリック氏に尋ねたところ、
「いや、一万本単位で発注しているからメーカーも大喜びなんだよ」です
って…こちらもウィンウィンなんですねぇ。

ああ、ペットショップの鳥のアンバサダーになれないかなあ…。
こんぱまるさん、お願いしますよ。

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