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2016年9月

メイド イン チャイナ ?

前回エントリーのアンバサダー(マジシャン編)の中で、中国製のコピーが
目に余るという話題に触れましたが、今回はその事象について考察したい
と思います。
マジック用品のコピーに関しては、パフォーマーである私よりは日々製作
したり輸入販売しているディーラーの方々の方が遥かに詳しいはずなので
すが健全なディーラーが頑張っている一方、コピーと知りながら輸入したり
自らもコピーを製作するという脛に傷を持つディーラーも存在しているなど、
この伏魔殿の全貌を把握するのは困難ですので、私の知る史実のみを述懐
します。

コピー、特に中国製の勢いたるやアメリカのオリジナルメーカーが廃業する
ほどのようです。
自戒を込めて告白しますが私自身の黒歴史として、情報も知識も予算も
無かった若い頃にヨーロッパのコンベンションで購入してしまったコピーイリ
ュージョンが数台ありましたが、オリジナルビルダーが判明した時点で全てを
オリジナルに切り替えていきました。
少しずつテレビ出演のオファーが舞い込むようになると、コピーを使って
メディアに露出するのも気が引けるし何より本物を知ってしまった以上、
妥協という言葉で自分を騙すのが嫌でしたね。
ショーで用いる道具全体をトータルコーディネートに置き換えたならば、
せっかくそれなりのジャケットや靴で統一しているのに、腕時計だけが紛
い物を着けているような気持ち悪さです。(全体が紛い物ならば、それは
それで完璧なセットアップなのでしょうが…)

だからこそ背伸びをしてでも本物の道具をまず一つ手に入れて、そのレベ
ルの道具を基準にショー全体をコーディネートする習慣を身に付けないと
ずっと安っぽい佇まいのままになってしまうのですよ。(ビジュアルはもち
ろん、恐ろしいことにメンタルまでも)
道具以前に稽古を重ねて芸そのものを磨きあげることが大前提であること
は論を俟ちませんが、ギャラをアップしたいのにいつまでも安っぽいコピー
の道具を使いながらパフォーマンスまでもメジャーマジシャンのコピーを
続ければ、「これだけの努力と投資をしたのだから、これだけの報酬を貰
うのが当然」という考えには永遠に至らないのです。

結局は個々人の矜持の問題に行き着くのでしょうが、アマチュアならまだ
しもギャラを頂戴する自称プロであれば本物を使うべきでしょう。
「蟹かま」を「蟹」と偽って販売するわけにはいかないでしょう。

かなり前に輸入した以下の3種類のアイテムも近年は中国製コピーが出回
っているようですが、当時のオリジナルを輸入した経緯を紹介しましょう。

ボックスの中の透明筒から予言が出て来るMaster Prediction System…
これは1990年頃のマジック専門誌において、ディック・ジマーマンが考案
してビル・スミスが製作した優れたシステムの予言の道具があるとの広告
が記憶に残っていたので、2001年にラスベガスの工房を訪れた際にビルに
製作を打診したところ、私の目の前でビルがディックに電話をして承諾を
得て製作が決定、そして翌年のTBSの特番でマリック氏がテレビ初公開し
て話題になりました。
その後ダグ・マロイとウェリングトンも正規ビルダーとしての権利を得て
製品を発表したという経緯があるのですが、どうやら中国製のはこの2社
の模倣(価格は1/10くらいでしょうか)のようです。
しかしマリック氏が使用しているのは秀逸ですよ…高級なオーク材を使用
して、何より怪しげな金属の縁取りがありませんから。(おっと、詳しく書き
過ぎました)
マリック氏の影響なのでしょう…それ以降日本を含むアジア圏でこの道具
のコピーが急速に広まると同時に、お手軽に演じるマジシャンも急増しま
した。(ただし演出面では誰一人追いついてはいませんね)
そういう事情もあって私は全く違うシステムの予言マジックを演じるよう
にしたのですが、2006年に関西テレビで内田貴光氏と、2007年にNHKで
ふじいあきら氏と共演した際に演じたところ、手の平サイズの透明小箱を
使用したせいか、かなり不思議だったという反響を頂きました。(これも
そのうちコピーが出るのですかねえ? いやすでに出ているかも…)

カパーフィールドが暫く演技権を独占していたと云われる腕が三分割され
るイリュージョンTri-Section(考案:ラリー・ホワイト 正規ビルダー:
ウェリングトン)は、先にアメリカのある業者がUNARMEDの名称で発売
したものを輸入して演じていたのですが、これが非正規品と判明した直後
にウェリングトンから正規品製作開始との連絡が入ったので、すぐにニュ
ーヨークのウェリングトンの工房まで出向いて身長や腕の長さに合わせて
製作してもらい、何度かテレビでも演じた思い出の道具です。
しかしこれも中国製コピーが出回り、それを購入して嬉々として演じてい
る後輩マジシャンがいると知った時は、自分の体験談まで話してオリジナ
ルをリスペクトしようとアドバイスしたことが彼の心にはなーんにも響い
ていなかったんだなと思うと虚しいやら情けないやら…営業欲しさに芸能
プロダクションにペコペコ&感謝感謝しながら、コピーイリュージョンを
手作り販売までして…生きていくのって大変なんだなあと、ある意味同情
するしかありません。

透明アクリルボックスに突然大量の紙幣が出現するオーウェンマジックの
Crystal Money Chest…発表された1992年に日本に最初に輸入して
以来24年、テレビにライヴにと何度も使用してきました。
これも90年代後半から日本製を含めて多くのコピーが出回っています。
ただこれに関しては「一事が万事」とはよく言ったもので、コピーを使って
いるマジシャンは出現する紙幣も必ず偽札を使っているという現実を見る
と、その判断を下した生き様をわざわざスポットライトの下で曝してまで
演りたいのかなあとも思うのですが…。
言うなれば「偽マジシャンが偽ボックスから偽札を出す」という滑稽な三重
奏はブラックジョークにもならないし、そもそも「本物は高いからコピーで
いいや」という思考回路がセコい方に向かうマジシャンが、したり顔で最も
演じてはならない代表演目が「紙幣プロダクション」なのでは?
さらに演じる環境も重要です…お世辞にも予算があるとは思えないイベント
やマジックバーのショータイム等で演じれば、たとえ本物を使っていたと
しても偽物に見えてしまうという、実は厄介な演目なのです。

ある若手から聞きましたが、彼の周囲も現象が同じで見た目も遜色ないの
であればコピーで構わないという考えのマジシャン達が多いらしく、フロ
ーティングテーブルに至ってはオリジナルのロザンダー製を使っている方
が圧倒的に少ないのでは、とのこと。

先日のNHK「クローズアップ現代+」でも中国製コピーの問題が特集されて
いました。
長くアップル社のコピーばかり作っていた会社が、このままコピーを作り
続けても未来はないと悟り、一念発起してオリジナルデバイスを開発して
いく過程の他に、中国のベンチャー企業が社運を賭けて開発・発売した
商品があっという間に他の中国企業にコピーされて市場を席巻されてしま
って、経営者が頭を抱える様子が赤裸々に放送されていました。
いよいよ中国人という身内からコピーされるという初の経験をすることで、
それまで自分達がどれだけ外国企業に損害を与えてきたのかと自国の病理
の根深さを中国人自らが思い知ったという画期的な内容でした。
そして番組の括りでは、このままでは中国人がベンチャー企業を興しても
すぐに身内からコピーされて会社が傾く危険性があるのなら、今まで通り
横並びで外国製品のコピーを作り続けた方が無難だし、こういう事象が続
けば中国においては今後の起業の機運は一気にしぼむであろうというもの
でした。

ところで、マジック界のある中国コピー業者の社長の座右の銘は…「誠」
だそうです。(爆笑!)

南シナ海や尖閣諸島における報道に象徴されるように、たとえGDPが日本
を抜いて世界2位になろうとも、傍若無人で迷惑至極な振る舞いをする
このジャイアンのような国に「衣食足りて礼節を知る」を求めるのは、もはや
無駄な気がします。

でもまあ中国のコピー道具以上に鳥肌が立つのは、超魔術やストリート
マジック等その時々のブームに乗っかって、節操もなくキャラクターや
風貌を変える二番手三番手のコピーマジシャンですけどね。
「蟹かま」は永遠に「蟹」にはなれないもの…私はDrとして、医学的には
ジェネリックマジシャンと名付けていますが…。

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アンバサダー (マジシャン編)

前回は腕時計のアンバサダーを務める世界的アスリートについて書きまし
たが、今回はマジック界について…。
なにしろマジック界最大の大会ですら世間での知名度は無きに等しいため
に「マジック界のオリンピックのようなもの」と注釈をつけてオリンピック
に乗っからせてもらうほどにスポーツ業界とマジック業界のスケールが違
い過ぎて比べることすら無理があると思うのですが、それを承知の上での
エントリーです。

仮にあるマジック用品メーカーのアンバサダーとして、そこのオリジナル
の道具を使ってコンテストに挑むマジシャンがいたとしたらその重圧たる
や…なーんにもなさそうですね。
「うちのビリヤードボールやファンカードを使ってコンテストで勝てない
なら二度と使うな!」…なーんて無茶を言うメーカーもまずないでしょう
からね。
だってスポーツ用品メーカーが契約アスリートにやっているように、マジ
ック用品メーカーが特定のマジシャンの生活全ての面倒をみるレベルの
スポンサーになるなんて有り得ませんから…。

ただ昔の映像を確認すると、アメリカのメジャーなイリュージョニスト達
は、一時期は特定のイリュージョンビルダーが製作した道具を中心に使
っていたので、ある意味アンバサダーに近かったのかもしれません。
例えば初期のダグ・ヘニングはウェリングトン、スターダストホテル時代
のシークフリード&ロイはオーウェンマジック、テレビ特番絶頂期のカパ
ーフィールドはジョン・ゴーンやメンドーザ、モンテカルロホテル時代の
ランス・バートンはビル・スミス、バーリーズ時代のダーク・アーサーは
ウィリアム・ケネディ…といった具合。

もっと詳述すると、マーク・ウィルソンや息子のグレッグ・ウィルソンが
十八番にしているほとんどのイリュージョン…例えばDIVIDED IN FOUR
EXCALIBURは、アラン・ウェイクリングが考案してジョン・ゴーンが
製作したもの。(参考文献:「THE MAGIC OF ALAN WAKELING
ジム・ステインメイヤー著)
ちなみにグレッグが演じるビリヤードボールも、この本に掲載されている
アランの手順そのものですから、ウィルソン親子はアイデアはアランに、
道具はジョンにと全面的にお世話になりながらテレビからお金を引っ張っ
てきたり、世界中のコンベンションで彼等の宣伝をしてきたとも言えるわ
けです。(所謂ウィンウィンの関係です)
反対にアンバサダー的な立場であったブレッド・ダニエルズとスポンサー
的な立場であったオーウェンマジックのように人体浮揚のイリュージョン
ASCENDING GODDES に関して裁判沙汰になるようなトラブルもあり
ます。(私はブレッド本人とオーウェンのメインビルダーであるアラン・
ザゴルスキーの双方からこのトラブルの経緯を聞いたことがありますが、
まあ言い分はどっちもどっちでしたね)

つまりイリュージョンビルダーにとっては、売れっ子マジシャンが自社の
道具をテレビやラスベガスのメジャーホテルでバンバン使ってくれれば、
それを観て憧れた世界中のマジシャン達からオーダーが入るわけですから
まさにアンバサダーのようなものです。(日本のみならず世界中に劣化版
カパーフィールドが蔓延したのはその証左ですね)

以前、ジョニー広瀬氏と一緒にジョン・ゴーンの工房を訪れた時、ダグ・
ヘニングやカパーフィールドの影響で大流行中のオリガミイリュージョン
が10台以上も製作中だったのを目にして驚くと同時にうんざりというか
嫌気がさして所有していたオリガミ(ウェリングトン製)を手放すきっか
けとなりました。
マリック氏と一緒にウィリアム・ケネディの工房を訪れた時も、ダーク・
アーサーが演じたアピアリングヘリコプターを他のマジシャンのオーダー
で製作中でした。

いつぞや、ラスベガスのコンベンションのディーラーブースでオーウェン
マジック専用ルームに入った時、オーウェン製のイリュージョンを演じて
いる私の宣材写真が額縁入りで壁に飾られているのを見て、ビルダーの
アラン・ザゴルスキーに謝意を伝えたところ、「ZUMAは当社の道具の
多くを日本のテレビで使ってくれているし、アンバサダーのような存在だ
から」と言われた時は嬉しかったですね。(私が初めてオーウェンの工房
を訪れた時は門前払いだっただけに、待遇には隔世の感がありました)
その思い出のイリュージョンGirl in the Diamondはマーヴィン・ロイ
&キャロルが権利を手放した後、私が真っ先に発注してNHK-BSの特番や
関西テレビで公開したものなのですが、既に中国製のコピーが売られてい
るとか…良い思い出にも水を差される嫌な時代になったものですなあ。

この目に余る中国製コピー問題…本来なら商品情報に詳しいディーラーや
ショップ関係者が問題提起して声を大にして発信するべきだと思うのです
が、近年は諦め気味なのかコピー販売の片棒を担ぐショップが増えている
ために自らの脛の傷を気にしているのか…あまり聞こえてきません。
(もちろん私の脛にも若手の頃の傷がありますよ)
近々これをテーマに私が昔輸入した道具の事例を示しながら考察してみた
いと思います。

閑話休題、アンバサダーの話に戻しましょう。(これ、私も勘違いしていた
のですが、閑話休題とは「ちょっと話題を変えて」とか「ところで」という
意味ではなく「話題を本題に戻す」という意味なのだそうです)

マリック氏がライヴ会場で観客全員にスプーンを配って会場一体となって
スプーン曲げを演じ始めた頃、当時ゲスト出演の立場でステージ袖にいた
私がスプーンをふと手に取って驚いたのは…スプーンの柄にMr.マリックと
刻印された特注品であったこと。(それまではカードを特注するマジシャン
はいましたが、スプーンとは…)
これはもうそのスプーンメーカーの立派なアンバサダーだなと思いました
が、よく考えるとそのスプーン…曲げられたり切断されたりする運命なの
で製作者の心情としては少し複雑ですよねとマリック氏に尋ねたところ、
「いや、一万本単位で発注しているからメーカーも大喜びなんだよ」です
って…こちらもウィンウィンなんですねぇ。

ああ、ペットショップの鳥のアンバサダーになれないかなあ…。
こんぱまるさん、お願いしますよ。

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アンバサダー (アスリート編)

もうとっくに熱気も冷めたけど、リオデジャネイロオリンピック絡みの
話題から…レスリングのルールをよく理解していないせいか、バックを
取ったり懸命にひっくり返そうという動きが、カブトムシとクワガタの
喧嘩にしか見えなかった私…。(不謹慎でごめんなさい)

さらにテニスの錦織vsナダルが、各々がアンバサダーを務めるタグ・ホ
イヤーvsリシャール・ミルという腕時計代理対決にしか見えなかった私
…。(お気を確かに!ですね)
試合中、錦織は腕時計を着けていませんでしたがナダルは自身のモデル
(9,500万円!)を着けていました。
リシャール繋がりで心情的にはナダルを応援していたのに、残念ながら
負けてしまいました。

アスリートがブランドのアンバサダーを務めている時、それを背負って
いる重圧っていかほどのものなのでしょう?
腕時計の場合スポーツとは直接の関係はありませんが、試合成績が企業
イメージに直結するスポーツ用品メーカー(ミズノとかアディダスとか
ナイキとか)のアンバサダーであればそれなりのプレッシャーはあるこ
とでしょうね。

ウサイン・ボルトの同僚で陸上男子ジャマイカ代表のヨハン・ブレーク
がレース中に着けていた鮮やかなグリーンのリシャールが気になって、
レース結果は全く覚えていません。(もう病気だね)

ただオリンピックの公式時計はオメガなので、大会期間中(特にテレビ
中継)は他ブランドの腕時計を着けるのは本来はご法度のはず。(閉会
式に登場した安倍首相の煽り映像の中では、しっかりとオメガを着けて
いるシーンがアップで映りました)
ヨハン・ブレークは前回のロンドンでも物議を醸してIOCから注意され
たはずなのに、敢えて今回も着けていたのならブレークもナダルもいい
度胸してるなあ。

ちなみにリシャール・ミルのアンバサダーの面々は…コチラ

次回は、アンバサダー(マジシャン編)です。

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