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チップ論 1

今回は、私自身が欧米を旅行した際に「チップを払う側」として、また
夜の銀座でのパフォーマンスで「チップを受け取った側」としてという
二つの側面から、チップについて4回に渡って考察してみます。
                                      
もちろんチップ文化が根付いた欧米とそうでない日本とでは、チップの
イメージには相当な乖離があることを前提としても、一般的には「良い
サービスの対価、あるいは心づけとして支払うもの」という認識と思わ
れていますが、どうやら間違っているようです。
                                      
欧米の場合、チップとは…「単に従業員の給与の一部をオーナーに代わ
って支払うもの」なのです。
例えばレストランの場合、その従業員は大きく二つに分かれています。
一つは客と直接接する「チップ制従業員」…クローク、バーテンダー、
ウエーター等表のスタッフ、もう一つは客と接する機会がない「チップ
制でない従業員」…シェフや皿洗い等バックヤードのスタッフです。
連邦政府が定める最低賃金は「チップ制でない従業員」の方がかなり高
めに規定され、「チップ制従業員」についてはチップを含めた最低賃金
が「チップ制でない従業員」に満たない場合は、その差額を雇用者が補
うとされています。
                                      
つまり「チップ制従業員」は、我々が払うチップをサービスの対価とし
てではなく「給与の一部」としか考えていないわけです。
だからこそチップが少ないと追いかけて来ることもあるわけで、実際に
私もロサンゼルスの寿司屋で現地在住のマジシャン、ダグ・マロイ氏と
会食後、チップの額に不満を持ったスタッフが駐車場まで追いかけて来
たことがありました。(あまりの必死さに圧倒されて追加して払いまし
たが、サービスに不満があった場合は断固拒否してもいいようです)
                                      
実は従業員が受け取った現金のチップはプールされ、クレジットカード
で支払われたチップはオーナーから金額が伝えられて「チップ制従業員」
に振り分けられています。
客が払ったチップは法律で「チップ制従業員」しか受け取れないことに
なっているので、オーナーが一部を「チップ制でない従業員」の給与や
店の修繕や設備投資に充てたりして訴えられるケースもあるようです。
                                      
なんか面倒くさいので、最低賃金を統一して、いっそチップ制など廃止
すればいいのに…とも思いましたが、古き良き時代のラスベガスで毎度
ショールームのスタッフにチップを握らせて良い座席にアップグレード
させたことを思い出すと…チップのパワーが垣間見えるし、功罪含めて
悩ましい問題ですねぇ。
チップ文化が根付いていない日本においては、飲食店のメニューに別途
サービス料金や深夜料金が併記されていることがありますが、強制徴収
に近いあれがチップの代わりなのでは…と私は認識しています。
                                      
そんな日本におけるチップ…大衆演劇の花付け(おひねり)や老舗旅館
の仲居さんに心づけを渡す文化はあるものの、そのほとんどは高級クラ
ブやショーパブ等の酒席において、夜の蝶やエンターテイナーに対して
支払われているものでしょう。
このような場におけるチップの意味合いの多くは「相手に対する心づけ」
ではなく、ズバリ「支払う側の見栄」そのものではないでしょうか。
(あくまでも私の独断と偏見ですが…)
                                      
私は過去17年間、銀座の多くのクラブやレストランバーでクロースア
ップマジックを演じ、大変有難いことに潤沢なギャラとチップを頂戴し
続けてきました。
そして現在、このチップが発生するような現場のオファーは一切受け付
ていません。
そんなに儲かるのになぜやめたかって?…それは「チップは魔物」であ
ることをはっきり認識したからです。
では、ギャラだけ頂戴してチップを受け取らなければいいのではと思う
人もいるでしょう…いやいや、銀座の高級クラブにおいては、一度出さ
れたチップを受け取らなければ、客に恥をかかせることになりかねない
のです。
銀座の高級クラブからの撤退…それはあんなに有難かったチップこそが
原因でした。
この辺の生々しいエピソードについてはチップ論2で…。

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