年末年始に読んだ本
今回は年末年始に読んだ本の中から、4冊を紹介します。
・ 最後はなぜかうまくいくイタリア人 宮島勲 著(日本経済新聞出版社)
年に15回もイタリアに行く著者によるイタリア人に関するレビューとでも
言えるのでしょうか。
もちろん、北部や南部など地方によって大きな県民性のような違いはある
ものの、ざっくりとした国民性を面白おかしく伝えています。
チャプタータイトルだけでも全体像が見えて、充分に興味深いのです…
「ルーズなのになぜか結果は出る秘密」、「好きなことだけ楽しみ、嫌い
なことは先延ばす」、「対人関係を支配する、義理・絆・コネ」などなど。
まあ総じて、本当に困った人だといつも思いながらも、なぜか「憎めない
愛すべきやつ」と感じてしまうのでしょう。
過激な言動や振る舞いで失脚したベルルスコーニ元首相が、いまだに根強
い人気を保っているのも「機転が利いて、うまく世渡りするやつ」と羨ま
しがられ、ある意味尊敬されているからのようです。
また、南イタリアには、何もしないでじっと待ち、チャンスが来たら掴む
「Attendismo(待機主義)」というメンタリティーがあり、これがイタリ
ア人とサッカーの好相性の理由であるとも分析しています。
私が興味を持ったのは、ファッションから車まで、独自のセンスと哲学で
一流品を生み出す秘密です。
イタリア人は直感を非常に重視する国民で、好きか嫌いか、美しいか醜い
かで物事を判断するのが常なので、「好き嫌いを言うことは、ワガママで
いけないことです」と言われて育った日本人は、この直感を磨くチャンス
を多く失ってきたらしいのです。
電車も正確に動き、何もかも清潔で、ホスピタリティーが充実している国
に住む日本人が疲れて余裕がなく見える一方、交通機関の発着もルーズで
、駅や空港もゴミだらけでサービスも最悪とされる国に住むイタリア人は、
のんびりとして楽しそうで、やたらと時間と精神的余裕がありそうです…
どこで生まれ、どんな文化に育まれながら生きるのが幸せなのかを考えさ
せられた一冊でした。
・ 普通の人が老後まで安心して暮らすためのお金の話
佐藤治彦 著 (扶養社新書)
人生の折り返し地点を迎えた者にとっては、避けては通れないテーマです。
本書は年収300〜700万という人に向けてのものですが、中心は公務員や
サラリーマンでしょう。
本来は私自身のレビューを書くべきなのですが、某週刊誌に落語家・立川
談四櫻さんが実に明快なレビューを書かれていたので、一部を紹介します。
「老後のことを今更考えるには取り返しのつかない私(64)にとっては、
無駄とも思われた読書でしたが、いやいやまだ間に合うのだと意を強くし
ました。先頃亡くなった人間国宝・桂米朝の師匠・先代桂米治は、『芸人
、末路哀れは覚悟の前やで』と言い、多くの落語家はそれを頼りに生きま
した。一方、その言に反発し、『売れて大金持ちになる。年金などアテに
するかい』と豪語する者もいて、しかしそれを実現するのはほんのわずか
で、多くは末路哀れの道を辿ったのです。近年、落語家の意識は大きく変
わりました。国民年金や国民健康保険にしっかり手当し、老後に備えてい
る者が大半なのです。私とその上の団塊の世代には無頼派の生き残りがわ
ずかにいて、私もその一人なのですが、強気を装っても日々老後への不安
は募るのです…著者は『老後のために現役時代の楽しいことはガマンする
人生はつまらないです』と言い、ところが老後も楽しむという本が少ない
…『だから、書いてみたのです』と宣言。(中略) さて、本書によって
無頼派を脱した私の老後ですが、どうやら末路哀れだけは避けられるよう
です」
破天荒を気取りながらも、実は不安を抱きながら生きているマジシャンに
とっても有益な本ですね。
・ シリコンバレー式 自分を変える最強の食事
デイヴ・アスプリー 著 (ダイヤモンド社)
理論面としては多数の研究を参照総合し、最新の知見を反映させています。
例えば、すでに日本でも流行っているケトン式食事法と同様の原理…炭水
化物の摂取を減らして中鎖脂肪酸を多く摂取することによって、糖の代わ
りに脂肪を燃焼させてエネルギーに変換するというもの。
もう一つ著者が重視しているのが断食(ファスティング)ですが、仕事の
パフォーマンスが落ちないように、朝、一杯のバターコーヒーを飲むとい
う方法で、良質の脂肪を充分に摂っている限り、脳はむやみに空腹感を起
こさず、ファスティングの状態が持続するので、腹を空かさずに断食のメ
リットが得られるというもの。
他にも様々な知見を与えてくれますが、この本の通りに厳格に食材は入手
できそうにありませんから、私はこれまで同様平常運転でいくつもりです。
・ 仁義なき宅配 ヤマトvs佐川vs日本郵便vsアマゾン
横田増生 著 (小学館)
この本は、著者自ら宅配の軽トラに横乗りしてドライバーを密着取材した
り、取材依頼を何度も断られたあげく、ヤマトの心臓部である羽田クロノ
ゲートにアルバイトとして潜入して目撃した事実を内部告発したとも言え
るものです。
クリックしただけで翌日には商品が届くネット通販の利便性を当然のよう
に享受している我々ですが、その裏側を覗くと、実は宅配業者の壮絶とも
言える競争とドライバー達の過酷な労働の上に成り立っているのです。
一日平均3時間のサービス残業を甘受しながら、大卒初任給が20万円前半、
年収は額面300万円以下という現実は、「佐川で三年間働くと家が建つ」
と業界で云われていた時代を思うと、隔世の感があります。
私自身も、定期的に購入する大量の炭酸水やドリップコーヒー、重たい猫
の砂などは、すっかり通販に頼るようになっています。
本書の統計によると、現在の宅配業務を最も難しくしているのが再配達と
時間指定サービスで、一回目の配達で不在となるのは約二割、不在が三回
以上も全体の1%近くあるそうです。
そもそも通販業者が謳う「送料無料」なんて有り得ないし、そのしわ寄せ
は全て宅配業者に押しつけられているわけで、ネット通販を利用する顧客
自身が配達時間を指定しておきながら不在の場合は、追加料金を徴収する
べきなんですよ。
佐川急便がアマゾンとの契約を打ち切り、ヤマトがその業務を引き受けた
両社のビジネス構造上の違いとは?
ヤマトはいかにして「覇者」となったのか?
日通のペリカン便を取り込んだ日本郵便の「逆転の独り勝ち」の真相は?
…とにかく日々の生活に密着している業界だけに、興味津々で読み終わり
ました。(実はこの本、すでに購入していることを失念していて、二冊目
を買ってしまいました…まあ、たまにあることですが)
それはそうと、最近知ったのですが、アマゾンのサイトを通じてお坊さん
が「出品」されているとのこと…その名も「お坊さん便」。
さっそく覗いてみると、確かにありました。
僧侶を手配して自宅やお墓に派遣してくれるサービスのようです。
戒名の授与は別料金で、全国一律3万5千円。
画面の「在庫」とか「返品について」等の言葉がなんともシュール。
そのうち、「格安マジシャン」が出品されることも有り得そうで、冗談と
して笑えない時代が来るかも…ああ、在庫過多、さらに返品の山が…。
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