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生きがい、働きがい

今年も残すところ一ヶ月…毎年この時期になると、この一年どれだけの
生きがいや働きがいを感じてきたのだろうと振り返るようになりました。
 
昔、若くして事業を成功させた後、会社ごと売却し、一生遊んで暮らす
ためにハワイへ移住した友人がいましたが、一年も経たずに戻って来て
新たな事業を起ち上げました。
理由を尋ねると、日々の生きがいや働きがいを感じないと毎日の遊びが
いもなくなり、すぐに飽きちゃったんですと。
結局、自己の存在理由や存在価値を確認してしまうという哲学的な思考
に向かうんですね。
 
生きがいには、生きていることへの充実感や自由度、自分が成したこと
への反響や影響力等、現在の幸福感や手応えが大きく作用していること
は論を俟ちません。
一方で、将来において意味や価値のある変化を自分自身で創り出せると
いう希望や意気込みも、極めて重要でしょう…働きがいも同じですね。
 
定年退職した後も働き続けることを希望する人が多いのも、年金だけで
は生活は困難だし、下流老人に陥って生活保護のお世話にはなりたくな
いという理由もありますが、世間に関わって貢献することによって社会
の役に立ち、働きがいを感じたいということなのでしょう。
 
ここまではあくまでも一般論ですが、翻ってマジシャンとしての生きが
いや働きがいとはどういうものなのでしょう?
まあ、このテーマもあまり意味のない個人的な疑問かつ抽象的過ぎて、
マジシャンの数だけ答えはあるはずだし、価値観が合わない生き方は認
ようとしない考えの人もいて、波風立つくらいなら触れない方がいいの
かもしれませんが…。
 
ただ、マジシャンの生き方の多様性を認めている自分でも、「お客様に
夢と幻想の世界をお届けするのが生きがいです…」などと、鳥肌ものの
台詞を瞳をキラキラさせながら臆面もなく吐き出すマジシャンは、それ
が本音であれ建前であれ、生理的に論外。(本音であれば頭の中はお花
畑だし、建前であれば大嘘つきの可能性大ですからね)
 
本心を糊塗して聖人のイメージを定着させると、メッキが剥がれた時の
ダメージは計り知れませんね…大相撲の白鵬にしても、世間から勝手に
「ヒール」役の朝青龍に対する「ベビーフェイス」の立場に置かれたの
は不運だったとしても、格下力士を相手に猫だましで遊び、批判に対し
ては開き直る白鵬の根底は朝青龍とさほど変わらないことが、いみじく
も露呈されましたしね。
 
以前、マリック氏に「何を生きがいに演じていますか?」と質問した際
の答え…「だって、客の驚く顔ほど面白いものないでしょ」ですって。
もうマジック小僧のように正直かつ明快過ぎて、ひっくり返りそうにな
りました。
 
他方、仕事欲しさなのか、当たり障りなく優等生的な美辞麗句を並べる
マジシャンのリアルな生きがいは、スケジュール表の仮押さえが決定に
なることだったり営業本数を誇示する程度なわけで、そのギャラや演技
やSNSでの間接自慢等、実に軽佻浮薄なのですよ。
 
パフォーマーとしての理想像は、出演ギャラのみで裕福に暮らしていく
ことでしょうが、どんなに高尚なことを言ったところでオファーがなけ
れば、残酷だけど世間が必要としていない証左。
その後、不本意ながらネタ販売にシフトしたり飲食業界に絡んでいかざ
る得ないことになったとしても、働きがいを見出す場合もあるわけで、
徹底的に稼げるようになれば、この上ない生きがいとなることもあるで
しょう。(悪魔に魂を売って、コピー商品販売で稼ぐのが生きがいにな
っている例もありますが…)
クリエイターならば、自分の作品が世界中で売れて、多くのマジシャン
がそれを演じて感謝されることは、大きな生きがいでしょうね。
 
もう一つ、稼げることは大前提として、唯一無二で代わりがいない等、
圧倒的な存在感を構築できることが理想でしょう。
いくらでも代わりがいる金太郎飴のような演技をしていれば、安売りの
便利屋としての存在価値しかなくなるのは自明の理。
その人が辞めたとしても、すぐに他の誰かがテーブルを浮かすし、誰か
がボーリングの球を出すのです。
 
新たな生きがいを求め、プロマジシャンになるために会社を辞める、
逆に訳あってプロマジシャンを辞める…辞めるという決断には、重くて
多様な理由があるはずですが、自分の胸に手を当てて突き詰めれば、
率直な二つの言葉に収れんされるのでは…。
 
一つは、「先がまったく見えないから辞めた」
もう一つは、「先が完全に見えたから辞めた」
 
いずれにしろ、生きがいの新しい出発点を見つけようとするならば、
近道をせず、徹底的に苦しみ抜いて、より人間らしくなることが必要
なのでしょうね。                        

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