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2015年11月

生きがい、働きがい

今年も残すところ一ヶ月…毎年この時期になると、この一年どれだけの
生きがいや働きがいを感じてきたのだろうと振り返るようになりました。
 
昔、若くして事業を成功させた後、会社ごと売却し、一生遊んで暮らす
ためにハワイへ移住した友人がいましたが、一年も経たずに戻って来て
新たな事業を起ち上げました。
理由を尋ねると、日々の生きがいや働きがいを感じないと毎日の遊びが
いもなくなり、すぐに飽きちゃったんですと。
結局、自己の存在理由や存在価値を確認してしまうという哲学的な思考
に向かうんですね。
 
生きがいには、生きていることへの充実感や自由度、自分が成したこと
への反響や影響力等、現在の幸福感や手応えが大きく作用していること
は論を俟ちません。
一方で、将来において意味や価値のある変化を自分自身で創り出せると
いう希望や意気込みも、極めて重要でしょう…働きがいも同じですね。
 
定年退職した後も働き続けることを希望する人が多いのも、年金だけで
は生活は困難だし、下流老人に陥って生活保護のお世話にはなりたくな
いという理由もありますが、世間に関わって貢献することによって社会
の役に立ち、働きがいを感じたいということなのでしょう。
 
ここまではあくまでも一般論ですが、翻ってマジシャンとしての生きが
いや働きがいとはどういうものなのでしょう?
まあ、このテーマもあまり意味のない個人的な疑問かつ抽象的過ぎて、
マジシャンの数だけ答えはあるはずだし、価値観が合わない生き方は認
ようとしない考えの人もいて、波風立つくらいなら触れない方がいいの
かもしれませんが…。
 
ただ、マジシャンの生き方の多様性を認めている自分でも、「お客様に
夢と幻想の世界をお届けするのが生きがいです…」などと、鳥肌ものの
台詞を瞳をキラキラさせながら臆面もなく吐き出すマジシャンは、それ
が本音であれ建前であれ、生理的に論外。(本音であれば頭の中はお花
畑だし、建前であれば大嘘つきの可能性大ですからね)
 
本心を糊塗して聖人のイメージを定着させると、メッキが剥がれた時の
ダメージは計り知れませんね…大相撲の白鵬にしても、世間から勝手に
「ヒール」役の朝青龍に対する「ベビーフェイス」の立場に置かれたの
は不運だったとしても、格下力士を相手に猫だましで遊び、批判に対し
ては開き直る白鵬の根底は朝青龍とさほど変わらないことが、いみじく
も露呈されましたしね。
 
以前、マリック氏に「何を生きがいに演じていますか?」と質問した際
の答え…「だって、客の驚く顔ほど面白いものないでしょ」ですって。
もうマジック小僧のように正直かつ明快過ぎて、ひっくり返りそうにな
りました。
 
他方、仕事欲しさなのか、当たり障りなく優等生的な美辞麗句を並べる
マジシャンのリアルな生きがいは、スケジュール表の仮押さえが決定に
なることだったり営業本数を誇示する程度なわけで、そのギャラや演技
やSNSでの間接自慢等、実に軽佻浮薄なのですよ。
 
パフォーマーとしての理想像は、出演ギャラのみで裕福に暮らしていく
ことでしょうが、どんなに高尚なことを言ったところでオファーがなけ
れば、残酷だけど世間が必要としていない証左。
その後、不本意ながらネタ販売にシフトしたり飲食業界に絡んでいかざ
る得ないことになったとしても、働きがいを見出す場合もあるわけで、
徹底的に稼げるようになれば、この上ない生きがいとなることもあるで
しょう。(悪魔に魂を売って、コピー商品販売で稼ぐのが生きがいにな
っている例もありますが…)
クリエイターならば、自分の作品が世界中で売れて、多くのマジシャン
がそれを演じて感謝されることは、大きな生きがいでしょうね。
 
もう一つ、稼げることは大前提として、唯一無二で代わりがいない等、
圧倒的な存在感を構築できることが理想でしょう。
いくらでも代わりがいる金太郎飴のような演技をしていれば、安売りの
便利屋としての存在価値しかなくなるのは自明の理。
その人が辞めたとしても、すぐに他の誰かがテーブルを浮かすし、誰か
がボーリングの球を出すのです。
 
新たな生きがいを求め、プロマジシャンになるために会社を辞める、
逆に訳あってプロマジシャンを辞める…辞めるという決断には、重くて
多様な理由があるはずですが、自分の胸に手を当てて突き詰めれば、
率直な二つの言葉に収れんされるのでは…。
 
一つは、「先がまったく見えないから辞めた」
もう一つは、「先が完全に見えたから辞めた」
 
いずれにしろ、生きがいの新しい出発点を見つけようとするならば、
近道をせず、徹底的に苦しみ抜いて、より人間らしくなることが必要
なのでしょうね。                        

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衝動買い

11月中旬の東京滞在中、所用の合間にショッピングへ…大抵は伊勢丹
メンズ館、阪急メンズ館をブラブラして路面店へというルーティン。
 
ショーで着る真っ黒なドレスシャツを購入後、ふとショーウィンドウ
を見ると、派手な腕時計柄のシャツを発見!
ポールスミス20周年シャツ(衝動買いしそうな2万円という価格設定)
 
よく考えたら(考えなくても)どこに着て行くのってくらい微妙な感じ。
商品解説によると、様々なアイテムとのコーディネイトが可能…って、
これ、かなりのオシャレ上級者でも難しいと思いますよ。
(そういえば、先月ドルガバで衝動買いした真っ赤な靴も、いまだに合
わせる服が思いつかなくてお蔵入りしたまま)
 
このシャツ、マジックマニアのおじさんが陥りがちな、トランプ柄の
シャツやネクタイに相通じるものがありますなあ。
 
まあ話のネタには最適なので、自分の分と、待ち合わせしている後輩と
フランクミュラー銀座店のMさんへのお土産として3着を衝動買い!
(ほぼ道連れ状態)
 
で、思惑通り、受け取った二人の困惑した笑顔が面白過ぎて…たぶん、
シャケをくわえた熊の彫り物を貰った時と同じ顔でしょう。
 
 
さらに今回は、10月に鳴り物入りでオープンした話題の日本橋高島屋
ウォッチメゾンに行ってみました。
83ブランドが集結した国内最大級の腕時計ショップというふれこみで、
メディアでもニュースとなっていたので、楽しみにしていたのですが、
期待が大きかっただけに、ちょっと残念な感じでしたねえ。
 
通常の百貨店の時計売り場が広くなっただけというか、その分スカスカ
感もあって、83ブランドもあるのかなあという印象。
各ブランド専用の什器を設置してはいるものの、各々の世界観が希薄
なのは何故なんだろう?…やはりラグジュアリーな店造りって難しいん
ですね。(ただ、交換用ベルトは凄い数の在庫を揃えています)
 
こだわりの強い客なら、ここで色んなブランドを物色して見比べた後、
ラグジュアリーなおもてなしをしてくれる専門ブティックで購入するで
しょうね。
で、ここでは(幸か不幸か)衝動買いすることもなく退散。
 
結局、ブランド品や腕時計に代表される嗜好品は、どんな気分の時に、
どこの店で誰から購入したのかというストーリーや思い出がとても重要
…身に着ける度に、その時の情景や高揚感、担当者の笑顔が思い出され
るし、なくてもとりたてて困らないけれど、いざ携えた時の街並みは、
彩度がはっきりと上がりますから…。
 

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切り札

まずは、先日の西日本奇術大会のゲスト出演について…ご来場の皆様、
有難うございました。
九州全域はもちろん、岡山、東京、遠くは札幌からもマジシャン仲間が
観に来てくれました。
(あ、クラブのお姉様方も、声援有難うございました)
 
オファーを受けた昨年末から、マンネリ化しつつあった自身に喝を入れ
るべく、バードアクトのリニューアルを決断し、まずBGMを一新、半年
かけて完成させました。
こんなに稽古したのは10年振り?
鳥達も普段以上のハードな調教に耐えて、成果を見せてくれました。
やはり努力は裏切らないし、この歳でも若干の伸びしろを感じることは
嬉しいですね。
 
火ボウボウ、鳥ビュンビュン、特効ドカンと、それこそ時代に抗う演技
が、やはり自分には一番合っているようです。
フルバージョンで演じられる機会や環境はめったにありませんが、自分
にとっての「切り札」として、このアクトを大切にしていきたいと思い
ます。
 
さて、10月19日、時計界の「最高の切り札」フランク・ミュラーから
素敵な時計が発表されました…ロングアイランド ジョーカー
この時計、実はマジシャンをイメージして製作されたので、ホワイト
ゴールドケースの裏面には、しっかりMAGICと刻印されているのです。
銀座店で実物を手に取りましたが、実にハンサムな時計でした。
 
なんと、同行した後輩マジシャンが、白文字盤ブラックダイヤモデルの
購入を即決!…担当のMさんが、タイミング良く来日していたフランク
本人に直談判して、シリアルナンバー1をゲットできました。
これからのパーティーシーズン、マジシャンとしてのコーディネートの
切り札として活躍することでしょう。(すぐに元は取れますね)
 
私はというと、ブルーモデルに惹かれているのですが、年末年始に自宅
リフォーム等、出費が重なりそうなので、ちょっと諦めモードです。
本当は、国内に1本のみで、今は手が出せないけど売れてほしくないと
いう時計に出会ってしまい、どうせならこっちが…と頭から離れないの
です。
腕時計こそ煩悩と物欲の切り札ですな!

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