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2013年8月

盛況でした!…パラノイア20周年

8月25日、北部九州はとんでもない豪雨に見舞われて、最悪の事態が
頭をよぎりました…「羽田ー熊本便が欠航になったりして」…前日の
夜にマリック氏から冗談めかして「もし行けなくなったら代わりに演
っといて」と言われたことが現実になるかもと焦りに焦ったのでした。
(主催の金芳氏はもっと焦っていたと思いますが)
 
結局は交通網の乱れは無く、マリック氏も私も300名の観客の皆さん
も無事に到着し、タイトル通りに盛況なディナーショーとなりました。
 
私の乾杯の挨拶でパーティーはスタートしたものの、ショーの冒頭の
重要な伏線を張る役をマリック氏から仰せつかって、再度ステージに
登場することになったので、お酒も食事もすんなりと喉を通りません
でした。
始まってみればその伏線は上手くハマッたので、その後はグラスを傾
けながらゆっくりと楽しみました。
 
ところでステージショーの場合、対象となる観客は数十人〜数百人、
あるいは千人単位のこともありますが、この「規模」というのが演目
を決定する際に最も重要視されがちです。
「今日は小規模なパーティーだからテーブル浮かす程度で充分だろう」
とか「来週は大ホールだからイリュージョンを何台か持って行くか」…
てな感じですね。
 
だって大ホールで小さな出し物演ったって、見えなきゃ意味無いじゃん
という意見もあるでしょう…ごもっとも。
 
しかし経験豊富なマジシャンであれば、こんな経験はありませんか?
小規模パーティーにわざわざイリュージョンを持ち込んで、充分に見え
る状態であるのに、演じている自分の目と鼻の先で客同士ビールを注ぎ
あったり、名刺交換するなどして無視に近い状況に置かれた苦い思い出
は必ずあるはず(もちろん私も)です。
トークマジックで誰もこちらを観ていない時、こんな惨めなことはあり
ません。(今日は客が悪かったと自分を慰めることになるのです)
 
特に観客を参加させる演目の際に、私が重要だと感じるのは「出し物の
大小」よりも「客同士の相関関係」です。
 
例えば一般的なディナーショーや劇場公演の場合は、カップルだったり
友人同士やファミリーといった数人の集合体で参加するので、自分が属
する集合体以外はほぼ他人です。
企業の忘年会では、客のほぼ全員が顔見知りという場合が多いでしょう。
結婚披露宴では、一部の円卓だけが知り合い同士だったり、会社の同僚
同士の結婚ならば親族以外はほぼ顔見知りという場合もあるでしょう。
 
私の演目を例にすると…最もお気に入りのギロチンを演じる時、不特定
多数の観客が集った場よりも、観客全員が知り合い同士の方が圧倒的に
ウケるのです。
自分と相関関係が無い赤の他人よりも、自分の会社の社長や同僚が指名
されてステージに上がってギロチンに怯えている姿は、それは滑稽で食
いつきが違います。
 
ですからテレビで演じる際も、誰もが知っている人気タレントに手伝っ
てもらうことがウケるための絶対条件となるのです。
もしもタレントではなくスタジオ見学に来ていた一般客と演じたならば、
視聴者にとっては「タレントとファン」という相関関係が存在しないた
めに、感情移入がしづらくなるわけです。
 
 
さて、今回のパラノイア20周年ディナーショーの観客にはどのような
相関関係があるのでしょう…数人単位の不特定の集合体が300名集った
わけですが、そこにはパラノイアあるいは金芳幸博氏のファンであると
いう絶対的最大公約数に基づいた相関関係があるのですね。(もちろん
生マリックが観たくて常連客に連れて来てもらった人もいるでしょうが)
 
この集合体に対して、あのMr.マリックがその膨大なレパートリーの中
から何を選抜したのか、お馴染みの演目でもどのようにアレンジしてく
るのか…そういう視線でショーを観ていました。
 
具体的な演目の紹介は割愛させていただきますが、随所にこの日のため
に用意された演出がちりばめられていました…マリック氏と金芳氏と私
が実は16年前に共演していたと紹介する映像、パラノイアという店名や
金芳氏を使った演出、常連客が連れて来た子供達への配慮…顔を会わせた
ことはなくても、パラノイアのファンであるという相関関係を持つ300名
の集合体を、一夜にして旧知の同僚のように感じさせてしまうほどの見事
なショーでした。
車に道具を積みっぱなしにして、環境やイベントの主旨などおかまい無し
にマンネリな営業ネタを繰り返す「営業ズレ」したマジシャンには絶対に
なるべきではありません。
一夜限りのオーダーメイドの贅沢さを改めて体感した夜なのでした。
 
ところで金芳氏が挨拶で「40周年くらいまでは頑張ります!」って宣言
してたけど、お互いマジックをやっていることがリハビリに見えないよう
に気を付けなきゃね。
 
 
ここで名古屋でのイベントのお知らせです。
9月28日 「極上の不思議晩餐会」 フライヤーは…コチラ
9月29日 「マジどっぷりの日」  フライヤーは…コチラ

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続・とんがってる

とんがってる男・北原禎人氏から新書「HUMINT」を献本してもらい
ました。
送付元のスクリプト・マヌーヴァ社の滝沢氏が私へのメールで、これ
までのマジック関連本では扱ってこなかった内容に踏み込み、北原氏
本人をそのまま映したような本です…と紹介されていましたが、まさ
にそんな感じです。
 
ここで注意!…単に何かいいネタが載ってるんなら買おうかなっとい
う軽い気持ちでこの本に齧りつくと、胡桃のような硬い殻に阻まれて、
前歯が数本欠けるかもしれません。
 
読解力が高い人でも何度か読み返さないと理解し難い彼独自の表現や
言い回し、哲学が満載なので初心者向きではありません。
また理解した直後に、自分に当てはめた情景が瞬時に、かつ条件反射
的(梅干しを見たら唾液が出るように)にイメージできるまで脳内筋
力を高めておく必要があります。
 
医学的に例えるならば、この本はオペの術式解説をしている外科学で
はなく、あえて言えば病理学、生理学、精神医学に近く、さらに神経
や血管の走行を始めとする解剖学を熟知した上で読み進まないと、お
そらくちんぷんかんぷんになることでしょう。
税抜きで6200円の本ですから、初心者はお手軽なグッズやDVDでも
購入することをお薦めします。
 
内容は、過去の書籍で発表した作品に補足的に加えた考察や、近年の
マジックブームについて実名を挙げての考察、失敗した際のリスクマ
ネージメント、そしてプロマジシャンとしてのあるべきスタンス等、
多岐に渡ります。
 
その文章や表現、考え方には賛否両論あることでしょう。
私が気に入った一部を抜粋してみると…
 
・ 夢を与えたいだとか、他人を幸せにしたいなどというのは演技を
  するのであれば演技に埋め込めばいいものであって、埋め込めな
  い者が口で言って補足する為のものではない。口にすれば演技者
  としては蛇足でしかないのだ。夢を与えたければ与えればいい、
  他人を幸せにしたければすればいい。何か違うだろうか。
  何故それを叫び続けなければならない状態を健常としてしまえる
  のかと言えば、演技がクルクルパアなのである。
 
・ Derren Brown を見て、彼のアプローチを表面的に捉えて憧れ、
  彼の他人の体験へのアプローチをDB本人がそうではないと断じて
  いる「コントロール」という言葉で誤解しながら真似事をしている
  連中は、ただ「能力」というものの響きにシビれているのだ…
  (中略)劣化コピーが生産される根源に常にあるのは、オリジナル
  の表面だけを対象に採用する処にある。
 
・ 変な集まりに何かのおこぼれを期待して顔を出すのではなく、自分
  がダメだと思った社会には背を向けて安易に馴染まなければ、貴方
  は健康でいられるだろう。
 
まだまだ紹介したい一文があるのですが、これから読む人のことを考慮
して、ここまでにしておきましょう。(因みに私の事は、辛口の機関銃
と表現しています…まっいいか)
 
このような内容の本を29歳の人間が出版すれば風当たりが強いであろう
ことは容易に想像できますが、アスリート(サッカーの本田とか)に置
き換えれば、この世代がとんがっていても私は何の違和感も感じません。
(実力も仕事も無い年長者の非難や愚痴は傾聴に値しないので、自分の
経験上無視するに限ります)
 
確かにその表現は時に過激で辛辣(お前が言うなって?)なので、万人
に受け入れられるのは難しいかもしれませんが、彼には絶対的な強みが
あります…それは正直であること。
自らの思考を正直に吐露すれば、何も恐れるものは無いはずです。
 
どうしようもない悪人が、感謝感謝と卑屈な笑顔で揉み手をしながら
善人ぶったり、低レベルの仲良し互助会的な組織や新興宗教的グループ
に自分の意志で出入りしておきながら、陰では愚痴をこぼす輩が多い中
で、正直であることは強固なステータスを構築する上では必要十分条件
でしょう。
 
この本を読み終えた時に、北原という男が誤解されなきゃいいなと心配
しましたが、どうやらそれは杞憂でしょう。
なぜなら彼は確信犯的にこの本を世の中に投下しているし、この本を読
んだ人間が今後初めて彼に遭遇することがあれば、すでにどんな考え方
をしている男なのかを理解した上でのことなので、そこに誤解が生じる
ことは起こり得ないでしょう。
 
そう考えると、この本は彼の「名刺」…いや、とんがってる北原という
マジシャンの「取り扱い説明書」なのかもしれません。

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暑中お見舞い申し上げます

連日の猛暑、ホントうんざりしますね。
こういう時期は夕暮れ時のウォーキング以外、涼しい屋内にずっと引き
蘢って過ごしています。
そんな日々の近況を少々。                          
・ マジックコンベンションで来日した某マジシャンが福岡に…二日
  連続の飲み会でお互いが出会った1988年、1991年当時のFISM
  の話で盛り上がりました。                        
・ マジックバーパラノイア20周年、Mr.マリックディナーショーは
  300名様完売だそうです…凄いなあ。                   
・ 私が少しだけサポートしている福岡の女性イリュージョンチーム
  バニーヒップが、今年の年末にMr.マリック氏と共演決定…大きく
  羽ばたいてほしいものです。                       
・ 先日「イリュージョン始めました」っていう告知を見かけたけど
  …冷やし中華か!                           
・ GOETHE9月号の特集「超高級腕時計の新世界 男たちが次に狙う
  1本!」…狙いたいのがあるけど、かなり先になりそう。         
・ フランク・ミュラー2013新PV…この世界観がたまりませんなあ。     
・ 年に一度の愛車のメンテナンス、今年もまたイズミクリーンさんで
  ピカピカに磨き上げていただきました。
  新しいスタッフさんの希望で、ちょっとだけマジックをやりました。
  その様子は…コチラ
  最近は懐かしいエリスのリングがマイブームです。
  (私の世代はもちろんジョンソン製!)
 

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