向き不向き

充実した人生を謳歌するには、特に職業を選択する上で、自分が何に

向いていて何に向いていないのか…所謂適性と不適正を把握することが

重要だということは論を俟ちません。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

そうは言っても、見る角度や当人と他人からの視点によっても大きな

相違があることでしょうね。

例えが不適当かもしれませんが、「人格者だけど手術が下手な医者」と

「口が悪くてスケベで呑ん兵衛だけど腕が立つ医者」はどちらが医者に

向いていると言えるのでしょうか？

医者ならば「人格者で腕が立つべき」と主張する理想論者からすれば、

どちらも不向きということになるのでしょう。

マジシャンでも、凄いテクニックがあるのにコミュニケーション能力の

不足なのか、その凄さが伝わらない人や、大したテクニックがなくても

ドッカンドッカン盛り上げる人もいますよね。

理想論者から言わせれば、マジシャンは「凄いテクニックとエンター

テイメント性を持ち合わせるべき」となるのでしょう。

そんなの一握りのマジシャンだけのような気がします。

（私自身は、マジック以外の部分で盛り上げることができたら理想なの

ですが…）

自分の事は棚に上げて、他人に対してだけ理想を要求する人って結構

いるもので、マジックを観る客でもわざわざお金を払って足を運ぶ客は

紳士的な人が多く、無料で観る客ほどよく絡むし、酒席を連れ回して

何とかノーギャラでやらせようと企む人もいるものです。

まあ、不向きな仕事に就くとストレスが溜ることだけは確かでしょう。

コミュニケーション能力が低いのにサービス業に就いたり、裏方向き

なのにプロジェクトのリーダーを任されたり…。（最大の武器はコミュ

ニケーション能力です！とアピールする人はすでにズレてるし、実は

その過信が最大の欠点となり、多くはコミュニケーションで墓穴を掘り

ますね）

マジシャンの世界でもパフォーマー向きか研究者向き、クロースアップ

向きかステージ向き（クロースアップからイリュージョンまで…という

およそ向き不向きとは無関係なプロフィールも見かけますが）、または

自称イリュージョニスト向き、マジックショップ経営者向き、バーマジ

シャン向きとか様々あるわけで、どれか一つでも当てはまれば、広義の

意味でのマジシャン向きとは言えるのでしょう。

最も重要なのは、それぞれの向いていると思われるフィールドで、生計

を立てられるプロ向きか否かですが、プロになる過程においては様々な

理由があっても、共通しているのはマジックが大好きだからということ

に間違いはないでしょう。（本当はマジックそのものよりも、マジック

を演じてウケている自分が大好きな人が多いような気がしますが…。）

ただ今回の考察の主旨とすれば、やはり生業とするには「好きなこと」

よりも「向いていること」にすべきという結論にならざる得ません。

好きというだけで安易に生業にしたばっかりに、嫌な目に遭った時に

その生業そのものが嫌いになってしまうとしたら不幸なことですよね。

私も仕事上のトラブルや人間関係に巻き込まれて嫌な想いをしてきまし

たが、マジシャンに向いていると自覚できたからこそ続けてこれたし、

自らの器の小ささや不徳に対する反省も含めて、現在は良い勉強をした

と達観できるようになったことは幸いです。（しかし、若干マジック熱

が冷めてしまうのは仕方ないですね）

これまで少なからずプロ志願の人の相談（私はショップもバーも経営

していないので、あくまでもパフォーマーとして食べていく相談です）

に乗ってきた経験上、当然ながらやってみるまで向き不向きは判断でき

ませんが、初対面でもある程度その理念や考え方を聞けば、マジックが

大好きなのは理解できても、性格的にも自己管理能力の面からも残念

ながらプロ向きではないなと感じた人がいたのも事実です。

金銭の無心をする輩は論外ですが、熟考せず趣味の延長のような甘さで

とりあえずプロになってしまってから基本的な部分を習おうとしたり、

熱心にアプローチしてきた割には、せっかくこちらから連絡しても音信

不通だったり、時間にルーズだったり…まあ色んなタイプがいましたね。

マジシャンを値踏みする際に、その人からマジックという要素を取り除

くと果たして何が残るのかを想像した時に、残る部分が何一つ想像でき

なかったり、残った部分も微妙（言動が軽かったり、粗暴だったり）と

思わせる人と出会うと、よりによってマジシャンという職業を選択しな

くても…業界のステータスを貶める可能性も高いし、もっと自分に向い

ている世界を見つけてほしいなあ…と複雑な心境になります。

昨今の就職活動においては、向き不向きよりも「安定」を求める世相で

あることは仕方がないとしても、「好き＝向いている」という短絡的な

思考に基づく職業選択には懐疑的です。

私は腕時計を偏愛していますが、だからと言って生業としてその製造や

販売の仕事に向いているとは限らないわけですからね。

幸せになりたいのならば、最も向いていることを生業として、最も好き

なことは趣味にしておいた方がいいのでしょうね。

話は変わりますが、先月は都内で後輩人気マジシャンの結婚式に出席し、

来月末は弟子の一人の結婚式に出席予定です。

各々の新婦に初めて会いましたが、それぞれの新郎に向いている女性だ

なあと感じた次第です。（末永くお幸せに！）

ところで7月22日は「土用の丑の日」ですね。

ウナギは夏バテしやすいこの時期には最も向いている食材として重宝され

ていますよね。

それで先日、マジック業界に最も向いていると思われるリアルマジシャン

RYOTAから届いた、私に向いている物を選べるお中元の中から「ウナギ

の蒲焼き」をチョイス。

「これがリアル蒲焼きです！」って感じで美味しくいただきました。